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第19話 シロツメクサ。(3)
数日してからシルビーが乗船してきたその朝、幹部部屋に入ろうとしたセシルは立ち止まった。
シルビーはレイズナーと話をしていたのだ。
セシルは入る前に聞き耳を立てていると、こんなことを話していた。
「そういえば、レイズナー。あのとき摘んで帰ったシロツメクサは、ドライフラワーに出来た?」
「ええ、出来ましたよ。今はセシルが持ってます」
その二人の会話を聞いて、セシルはレイズナーがどれだけ自分を心配しているかを、改めて理解した。
「その、シルビー。……俺があのシロツメクサ摘んでドライフラワーにしてたこと、セシルには話さないでください」
「なんでよ?」
「重い男だと思われたくないんで」
その言葉を聞いたセシルは同時にレイズナーからの愛の重さを知ってしまった。
シロツメクサの花言葉は『幸運』の他に『私を想って』というものもあることをセシルは思い出した。
「……もともと充分過ぎなほど重いだろ、お前は」
重すぎるほどの想いなのに、何故か悪い気はしないのが不思議に思えたセシルは、壁にもたれ掛かりながらシロツメクサの入ってる内ポケットに片手を当てた。
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