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第20話 海賊と言ったら海と船。(1)

キャプテン・セシルの率いる海賊達の本拠地はブラックシャーク号だ。 大海賊ともなれば、島等に本拠地(アジト)なるものを作るべきだと言う皆の意見は一切聞かないセシルだった。 何故セシルは船に拘るのか、レイズナーは気になっていたので聞いてみたのだが、セシルはこう答えた。 「海賊と言ったら、海と船だろうが」 たったそれだけだった。 何か隠しているのか、再び聞いた今も同じことを言っていた。 陸に上がると何か不味いことでもあるのか。 こんな関係になったのだから、セシルに隠し事があるのがレイズナーにとって酷く苛つかせた。 「デカい船なんて、小回りが効かないのはあんたも承知でしょう」 「攻めに行くときのための船だってあるだろう。現にそうしてるし、なんの問題もない」 「無人島だって探せばあります。そこにアジトとして使えばいいです。船を修理するときや乗り換えるときのときのことも考えてください」 「俺に文句があるなら出てけ。独立でもしてろ」 セシルは何故船に拘るのか。 確かに海賊の象徴と言ったら船だ。 しかし船員がこんなにも増えているのだから、陸にアジトを移すほうが良いに決まっているのに、セシルは頑なに拒否し続けている。 セシルに意見して喧嘩して独立なんて、レイズナーには出来ないことだった。 「俺はあんたに憧れて海賊になった。あんたのいないチームに俺の存在意義なんてないんですよ、セシル」 「お前は俺を美化しすぎなんだよ」 「それは当たり前のことですよ。惚れた相手を美化しない人間っていません」 こんなにも口論になったのは初めてのことで、エスカレートした今どう終わらせていいかレイズナーは分からなかった。 「とにかく、ブラックシャーク号意外のアジトなんていらねぇよ。それに不満があるなら、お前は出ていけ」 セシルがそう冷たくいい放つと、レイズナーは茫然とした。 今までセシルに拒まれることは、身体を重ねること以外はなかった。 それなのに、今セシルはレイズナーを拒んでいた。 「……そんなに重要な、俺にも隠したいことなんですか、セシル」 「口説いぞ、レイズナー。それ以上その内容を話すなら、俺のシャドウ(影武者)を辞めて船を降りろ」 セシルはレイズナーの右目を隠している布を外して、傷を露にさせた。 「お前は俺のシャドウになるために傷まで作った。けど俺がお前を拒めば、お前はこの船の一員じゃなくなるんだ。よく考えるんだな、レイズナー」

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