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第22話 海賊と言ったら海と船。(3)

「レイズナー、あんたセシルと何揉めてるのよ」 操舵室にいたシルビーがレイズナーに聞いてきた。 「別に。なんでもないです」 「なんでもないって顔してないのよ、レイズナー。自分の顔色見てみなさい」 そう言われて、レイズナーは自分が青ざめているのを理解した。 シルビーなら知っているかもしれない、セシルが船の本拠地に拘る理由を。 「シルビーは何故セシルがアジトを陸に移さないか、理由知ってますか?」 レイズナーがそう聞くと、シルビーは笑って言った。 「アハッ、海賊だからでしょ。海賊と言ったら海と船だって、本当に笑っちゃう」 「……は?!」 シルビーの答えにレイズナーは茫然とした。 「セシルが船に拘る理由は、たったそれだけの理由だなんてね。あんたも知ってるはずでしょ」 まさか本当に、たったそれだけの理由なのだろうか。 もしそうだったら、レイズナーはセシルが更に愛しく思えてきた。 「セシルって案外単純よね。ただの単純馬鹿な男」 シルビーのいう通り、セシルは切れ者だが基本単純だ。 「本当にそれだけなら、単純馬鹿ですね」 そんな性格で独裁者なんて、ある意味ただの駄々っ子の子供のようだ。 そして今でも『海賊』としての夢を持つセシルが可愛く思えた。 そう思い、レイズナーとシルビーは笑い合った。 が二人は次の瞬間固まった。 「単純馬鹿で悪かったな」 操舵室に入ってきていたセシルは怒りに満ちていた。

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