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第26話 思いがけない想い。(3)

セシルは変装し潜入もする、ウィリアムズが自分のこと気付いていたとは思ってもみなかった。 「今日私は丸腰ではない。だが、仲間は連れていないので安心してほしい」 ウィリアムズは海軍提督という地位を所持しているためなのか、堅物だった彼は昔よりも更に増して堅物そうに見えた。 「お前更に硬さが増したな。そんなんで今心を許せる友がいるのか心配になるぞ」 「私の友は今も昔もセシルだけでいい。お前は根本的なところはまるで変わっていないようだ」 「そうか?俺は変わっただろ、何もかもな」 セシルは見た目も考え方も自分は昔とは違うと思っている。 起きたときに鏡に映る自分を見ては右目の消えることのないだろう傷跡に触れるのが癖になっていた。 「いつになることかはか分からなかったが、いずれまたお前はここに来るだろうことも薄々感じていた。セシル、お前は昔から言われて気付くタイプの人間だったな」 ウィリアムズはまるでセシルが鈍い人間のようなことを言い始めた。 「はっ、俺のどこを見て鈍いと言ってやがる?理由がわからねェな」 セシルは半ば苛つき気味で聞いたのだが、ウィリアムズは昔と分からず、落ち浮いて冷静に話していた。 「確かにセシルは頭の回転が早い上に人の行動が読める鋭い人間だ。だが、他人等から自分がどう思われているかに気付けていなかった。故に人の想いにとても鈍い。お前は言葉にされなくては理解出来ないのだろう?」 「それは……、そうかもしれないがな」 この間話したレイズナー(弟分)の話をしているんだろうと、セシルは思った。 お前にはデリカシーが無いのか、とそう言おうとした瞬間、ウィリアムズは感情的に話し始めた。 「だから今になって、残された者のことを気になりだし知りたくなったのだろう?!エリザベスのことを思う前に、私の気持ちも考えてほしかった!!」 「……な、なんでお前の気持ちが関係してるんだよ?」 「何故私がエリザベスとお前の想いに私が反対したのか気付こうともしない。エリザベスより……私が先にお前を想っていたからだ。お前を妹に盗られるわけにはいかなかった」 「は……?」 「私は物心付く前からセシルが好きだった。それは今も変わらずに想っている」

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