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第28話 思いがけない想い。(5)
夜が明けそうな時間に行為が終わると、砂だらけの身体を払い、服を整えた。
それからセシルは無言でウィリアムズと別れ、直ぐにブラックシャーク号へ戻った。
船内は静かで、誰にも出会すことはなかった。
「随分遅かったですね、セシル」
しかし部屋には当然のようにレイズナーが椅子に座っていた。
「……俺にだって用事くらいある」
「砂だらけですよ。着替えたほうが良いと思います」
そのレイズナーの言葉を無視して、セシルはそのままベッドに入った。
そんな彼を見て何を思ったのか、レイズナーまでベッドに入って抱き締めてから、噛みつくようなキスをしてきた。
セシルの身体に快楽の火が灯ったが、今は抱き合うような気分は起きなかった。
ウィリアムズに抱かれ、そしてレイズナーにもなんて、そんな精神の図太いことは、今のセシルには考えられなくて、そのまま腕を振り払った。
「俺は、……今そんな気分じゃねェんだよ」
「そうですか。ならこれ以上はなにもしないので、一緒に眠ってもいいですか」
後ろめたい気持ちを隠すように、セシルはレイズナーを抱きしめながら目を閉じた。
「一緒に眠るだけなら、いい」
俺のまわりは滅茶苦茶だ。
そして俺の気持ちも想いも、誰にも俺自身すらも分からない。
セシルはそう思いながら、疲れた精神を眠りで癒やすことにした。
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