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第30話 大海原の片隅で。(2)

大海原に出てみて、ウィリアムズは己が浮ついた心でいることに恥じた。 海軍隊員はウィリアムズの姿を見ると、引き締まった表情で己を見ていることが分かり、想い人と交わったときの行為を思い出し、浮かれている場ではないと感じたのだ。 いつもと同じ顔付きのウィリアムズを見て、カインはおかしいと思ったことは自分の思い過ごしだったと感じていた。 そのとき、隊員の一人がウィリアムズに報告をしてきた。 「提督!!一艘の小舟が見えます。白旗をあげているので、どうやら遭難者のようであります!!」 「この船に上げてやれ」 「はい!!」 小舟はどうやら本当に遭難をしていたらしく、乗っていた男二人は意識が朦朧としていた。 しかし、その小舟には充分な食料と飲料水が積まれていた。 遭難者は何故かその理由を話さずに口を閉ざしていた。 「何故遭難していた者が食料と飲料水を積んでいる?」 ウィリアムズがそう聞くと遭難者達は言葉をゆっくりと紡いだ。 「こちらの方角に行けば海軍が救助するだろう、そう海賊船の男が言ったんです。……それで食料と水をわけてくれた」 「海賊か遭難船を助けるだと?」 「本当です!!その男は銀髪の長髪で、右目に傷があった……」 「セシルか」 ウィリアムズは小さく呟いた。 セシルは昔から困ってる輩にも手を差し伸べていたことを思い出した。 「まさか!!情報でセシルは大西洋の南の海上で暴れているとの報告があります」 「南の海上の報告は奴の偽物だろう。セシルには右目に傷跡がある。……まさか、お前に貸しができるとはな」 ウィリアムズはあまり人には見せたことのない、優しい目を海に見せた。

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