16 / 16

第16話 本能が名前を呼ぶ夜 ※R-18

冬馬の胸に顔を埋めると、鼓動の音が近くで響く。 「……律、俺はαだ。止まれなくなる」 冬馬の声が、必死に理性を保とうとしているのがわかる。 「……いい、から……」 「っ、……律」 顔を上げた瞬間、唇がすぐに塞がれた。 最初は軽く触れるだけのキスだったけど、すぐに息を奪うくらい深くなった。 「ん……っ」 舌が入ってきて逃げられない。 息をつく暇もなく、冬馬がまた唇を重ねる。 手が背中をなぞって、腰に触れた瞬間――身体が思わず反応した。 「……っ」 「律……敏感すぎる……」 冬馬が、耳元で掠れた声で囁く。 「ヒートだから……」 「わかってる。だから余計に……抑えるの、きつい」 顔を逸らそうとしたのに、そっと顎を持ち上げられてしまった。 「律。こっち向いて」 「……見なくていい……」 「見たい。お前が……今どんな顔してるのか」 真剣な顔で言われて、もう何も言えなかった。 「律のフェロモン、律の全部が……俺のαを刺激してる」 冬馬の瞳が、完全にαの色に染まっている。 「冬馬……」 「ん」 「俺……初めてで……」 恥ずかしいのに。でも、隠せない。 「……冬馬がいい」 自分でも何を言っているのかわからない。 でも、もっと冬馬を感じたい。 「そんなこと言われたら……俺だって平気じゃいられない」 冬馬の声が低くなって、触れている手に力が入ったのがわかった。 「律……」 「冬馬……」 お互いの名前を呼び合って。 冬馬が、優しく俺の身体に触れてくる。 「……もう、止まれない。ごめん」 そう言うと、冬馬は体中を触ったり、胸に口づけを落としてきた。 「んっ……ああっ……」 声が、勝手に出る。 いつもなら絶対に出さないような声。 「冬馬……っ、やだ……こんな、声……」 「いい。律の、全部を知りたい」 冬馬が俺の唇を奪う。深くて、激しいキス。 息ができない。でも、離したくない。 「はぁ……はぁ……」 「律……」 冬馬の指が、丁寧に俺の体を開いていく。 「……あっ……」 「痛いか」 「……っ、少し」 「ごめん。でも、すぐ……気持ちよくなるから」 冬馬が優しく囁く。 その言葉通り、徐々に痛みが引いていく。 代わりに、快感が強くなっていく。 「あ……っ、冬馬……」 頭が、真っ白になる。 「もっと……」 思わず、自分からそんなことを言ってしまう。 冬馬の瞳がさらに色濃くなって、体ごと覆いかぶさってきた。 「律……痛かったら、すぐ言えよ」 「……わかってる」 信頼はしてる。でも、ちょっと怖い。 冬馬の手が俺の体を優しく撫でて、腰を掴む。 「っ……あぁっ」 体が、繋がる。 深くて甘い快感に、思わず声が出てしまう。 「……律、大丈夫か?」 冬馬が、心配そうに俺の顔を覗き込む。 「……っ、だい、じょうぶ……」 「嘘つくな。顔、泣きそうだ」 「泣いて、ない……」 「……ごめん。動くぞ」 冬馬が、ゆっくりと動き始める。 呼吸も痛みも、全部彼に溶かされていく。 「んっ……あ、ああっ……」 冬馬の動きが徐々に速くなり、快感が波のように押し寄せる。 「あっ……! 冬馬……っ、待って……!」 「待てない。律が……可愛すぎて」 冬馬は、優しく俺の唇を封じるように口を重ねた。 「……んっ……」 キスをしながら、冬馬が動く。 身体が熱い。でも、それは苦しい熱さじゃない。 冬馬と繋がっている、温かさ。 「冬馬……冬馬……っ」 「……律……」 頭の中が真っ白で、何も考えられない。 全身に広がっていく快感に、息が震える。 ただ、この腕の中でなら、何も怖くなかった。

ともだちにシェアしよう!