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第17話 昼下がりのαとΩ
翌朝。
目覚めると、冬馬の腕が俺の腰に回っていた。
「……っ」
昨夜のことが、鮮明に蘇る。
身体の奥に残る熱。肌に残る痕。
俺から求めて――冬馬と、繋がった。
「……恥ずかしい」
小さく呟いて、冬馬の腕を払いのけようとする。
「……律、逃げるなよ」
低い声と共に、腕に力が入る。
「……っ、起きてたのかよ……」
「ああ。お前の寝顔、ずっと見てた」
「……変態」
冷たく言い返すと、冬馬が笑った。
「律の寝顔見るのが変態なら、俺は喜んで変態になる」
「……意味わかんない」
顔を背けると、首筋に唇が触れる。
「ん……っ、何してんの」
「おはようのキス」
「いらない」
「必要だろ」
そう言って、冬馬は俺を仰向けにし、至近距離で見つめてくる。
「……何」
「律、昨日のこと……後悔してないか?」
その真剣な目に、顔が熱くなる。
「……してない」
ぼそっと答えると、冬馬の表情が柔らかくなった。
「そうか……良かった」
額に優しくキスをされる。
「でも、身体痛いだろ」
「……別に」
心配そうに聞かれる。
嘘だ。めちゃくちゃ痛い。
「嘘つくな。顔に出てる」
冬馬が苦笑する。
「今日は無理するな。一日、ゆっくり休め」
「……わかった」
素直に頷くと、冬馬が驚いた顔をした。
「律が素直に従うなんて珍しいな」
「……うるさい。二度と従わない」
むすっとすると、冬馬が笑った。
「ごめんごめん。でも、可愛いな」
「可愛くない」
「可愛い」
「……もういい」
そう言って布団を被ると、冬馬が優しく背中を撫でた。
Ωの本能が、αの優しさに反応する。
身体が、自然と冬馬を求めてしまう。
「……冬馬」
小さく名前を呼ぶ。
「ん?」
「……そばにいて」
冬馬はすぐに抱き寄せ、俺をぎゅっと包んだ。
「ああ、どこにも行かない」
――昼過ぎ。
部屋で休んでいると、ノックの音がした。
「律、昼飯持ってきたぞ」
「……ありがとう」
ベッドから起き上がろうとした瞬間――。
「動かなくていい。ベッドで食べろ」
冬馬が先に立ち上がり、トレーを受け取る。
「誠、ありがとう」
「おう……って」
誠さんが俺を見て、目を細めた。
「お前ら……やったな」
「っ……!」
顔が一気に熱くなる。
「な、何を――」
「隠すなって。律の首、キスマーク祭りだぞ」
にやりと笑う誠さんに、思わず首を押さえる。
「冬馬、お前……加減しろよ」
「……悪かった」
冬馬が少し反省した顔をする。
「まあいいけどさ」
誠さんは笑いながら去っていった。
「でも、ちゃんと責任取れよ。律、まだ18だからな」
「当たり前だ」
冬馬がきっぱりと言う。
「律を、絶対に幸せにする」
「っ……」
胸が熱くなる。
二人きりになって――
「……恥ずかしい」
「何が?」
「……誠さんにバレてるの」
「そりゃバレるだろ。首、俺の痕だらけだし」
冬馬がにやりと笑う。
「これからハイネックしか着られないな」
「……バカ」
むすっとすると、冬馬はまた笑った。
「でも、俺の印がついてる律、可愛いな」
「……もう、いい!」
でも、心の中では――少し、嬉しかった。
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