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奉仕*
ディアリンドは、寝台の中央で身体を丸めるようにして荒い息を繰り返すケイトの姿を、無力感に苛まれつつ見つめていた。
日が傾き始めた頃、ケイト様の様子がおかしくなった。
少しずつ頬を朱に染め、呼吸を乱してゆくその様子に、熱があるのではと私は医師を呼ぼうとした。
それを止めたのはエミーだった。
心当たりがあるのでアオイ様の指示を仰いでくると言って彼女は部屋を出た。
部屋に2人きりとなった私は、エミーに代わって彼の額に滲む汗を拭き取るべく、寝台の端に膝を上げて彼にそっと近づいた。
「……っ、は……ぁ……」
真っ赤な顔をしたケイト様は、唇を軽く開いてそこから懸命に息をしているようだった。
熱い息が吐き出される様がどうにも艶めかしく見えてしまって、私は慌てて首を振った。
こんなに汗を滲ませているのだし、熱が篭るようなら布団の上掛けは剥がした方が良いだろうか。
「布団を剥がしましょうか……?」
尋ねた私に答えようとして、ケイト様がぎゅっと閉じていたその瞳をうっすらと開く。
熱を孕む潤んだ瞳に見上げられて、私の心臓が大きく跳ねる。
「ぁ……、あり、がと……」
言われてそっと布団を剥がす。
そこでようやく私は、彼がどういった熱に侵されているのか気づいた。
服越しでもはっきりと分かるほどに立ち上がったそれは、既にその先端から滲み出たものによって、彼の履いているズボンの色を変えてしまっていた。
これはつまり、セリクのせいだ。
きっと記憶を消される前のケイト様ならご自身の状況や原因にもすぐ気づいたのだろうが、今はそれをそうと判断するだけの情報が、この方の中に無いのだ。
だから、訳もわからないままに襲いくる熱に、こうして懸命に耐えていらっしゃるのか……。
「ケイト様……」
「ん……っ……、リン……?」
私が囁けば、ケイト様は荒い息の合間から私の名を呼び返した。
その声があまりに甘く響いて、私は軽いめまいを感じる。
「どうか私に、ケイト様のお身体に触れる許しをください……」
彼に許しを乞う自分の声は、かすかに掠れていた。
「……? ん、いい、よ……?」
ケイト様はよくわからないという表情で、それでも私に許してくださった。
私は緊張しながらも手袋を外してケイト様のそれへと手を伸ばす。
これに触れたら、ケイト様はどんなお顔をなさるだろうか。
嫌がられてしまうのではないだろうか。
セリクのような下心では決してないが、それでも、彼はそれを望まないのではないだろうか……。
まるで心臓が指先にまで降りてきたかのように、ドクドクと刻む拍動に合わせて指先が震える。
けれど、このままではこの方はずっと苦しいままだ。
この方を守る者として、やはり少しでもこの方が楽になれる方法があるならば、それを見過ごすわけにはいかない。
強く決意して、私はそれをそっと握った。
「ぅあっ……っ、ぁぁあっ」
それだけの刺激で、ケイト様は声をあげ仰け反った。
じわりと手のひらに伝わる熱と、服越しにも伝わるぬるりと湿った感触。
ああ。もうこの方はとっくに限界だったのだ。
それなのに、どうしてじっと耐えていたのだろうか。
もしかして、私がいたせいだろうか。
私がいたせいで、自慰すらできなかったのだとしたら、私は……。
自責の念に駆られるようにして、私はすぐさまベッドへ上がる。
「失礼致します」と断って、ケイト様の下衣を下着ごと下ろすと、それは既に力を取り戻していた。
どうやら、かなり強力な淫紋が刻まれているらしい。
私は発動中の紋の数と性質を確かめるため、鑑定魔法を使う。
しかしそれはバチっと音を立てて弾かれた。
まさか妨害魔法までかけてあるとは……!
「ぁあっ……ん……っ」
ケイト様にも衝撃が伝わってしまったのか、彼はその刺激にも身悶える。
たっぷりとした色香を纏うそのお姿に、思わずごくりと喉が鳴る。
ダメだ、しっかりしろ。
発動中なら見れば紋の位置がわかるはずだ。
私は断りを入れてケイト様のお洋服を丁寧に取り払う。
ケイト様は私の指が肌に軽く触れる度、切なげに甘い声を漏らした。
もっとたっぷりその肌を撫でて、悦んでいただきたい。
そんな衝動に、私は騎士としての理性を総動員して耐える。
けれど全身をくまなく確認しても、紋が浮かび上がっている箇所は無かった。
外から見えない場所……つまり、紋は体内に刻まれているというのか……。
愕然としながら服をもう一度着せているうちに、立ち上がったままの彼のものからは、また細く雫が零れ始める。
それがまるで涙のように見えて、私は思わずその雫を舐め取った。
「ぁああっっ」
ビクンと大きくケイト様の腰が跳ねる。
お顔を見れば、眉はギュッと寄せられて、瞳には動揺と困惑がありありと浮かんでいた。
「な、何……して……る、の……?」
私に尋ねるその様子に不安は感じ取れたが、嫌悪感は感じなかった。
その事実に胸が躍る。
エミーが戻ってくるまで。対処療法にしかならないけれど、何もしないよりはずっといいだろう。
「申し訳ありません。ケイト様がお辛そうで、じっとしていられないのです。私にはこんな事しかできませんが、心を込めて行いますので、どうかお許しください」
許しを乞うてケイト様の物へと唇を寄せれば、ケイト様は逃げるように腰を引いた。
「ま、待って……」
私は動きを止めて、ケイト様の言葉を待つ。
「汚れてる、から……」
「ケイト様のお身体に、汚れなど一つもありません」
私の言葉に、ケイト様は困ったように小さく微笑んで「じゃあ……、せめて、浄化だけでも……」とご自身の物へとお手をかざす。
「よろしいのですか……?」
「そんな風に、言われたら……断れないよ……」
赤い頬と潤んだ瞳で、それでも彼は優しく微笑んだ。
しかし、その聖力が形になる事はなかった。
力が弾かれた衝撃に、ケイト様が身を捩る。
「っ、ぅ」
いけない。
この方にその理由を考えさせてしまっては……!
私は咄嗟にケイト様の腰を引き寄せると、それを口に含んだ。
「ぁああっっっんんんっっ」
艶やかな声に、ケイト様の腰が揺れる。
彼の思考を中断させるには十分な刺激だったようだ。
奉仕した経験はなかったが、された事ならある。
成人を過ぎた頃、巡礼先で先輩騎士達に成人祝いだと宿に女性を呼ばれた事があった。
何事も経験だと先輩方は言っていたが、確かになるほど、こんな経験でも役に立つ事があるらしい。
私は一度きりのその経験を振り返りながら、ケイト様のそれへと懸命に舌を這わせる。
くびれや裏の筋を舐めまわし、たっぷりと濡れたところで頭を振れば、ケイト様は切なげな吐息と共に愛らしいお声を漏らされた。
「ぁ……、リン……、気持ちいい……よ……」
ケイト様はそうおっしゃって、私の髪を撫でてくださる。
あまりにお優しいその仕草に、私までもが達してしまいそうになる。
夢中で奉仕を続けるうちに、ケイト様のものが一際力強く震えた。
「ぅ、ん……っ、ぁ。出るっ、放して……っ」
ぐいと肩を押されて、口を離した私の顔にケイト様の吐き出した熱がかかる。
部屋の扉がバンと勢いよく開かれたのはその時だった。
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