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甘い香りの夜*
その晩エミーは「私は今晩はセリクの宿舎に泊まりますので」と言った。
「セリクのとこはベッドがひとつでしょ? 狭くない?」と尋ねる俺にエミーは「セリクはもうずっとアオイ様のところで寝泊まりしておりますので」と答える。
……それってつまり遠回しに、俺は蒼より遅れてるぞって言ってる……?
エミーはシーツの替えやら何やらも手際よく籠にまとめて「汚れたシーツはそのままで構いませんのでこちらに入れておいてください」と的確な指示まで出して下がった。
うんまあ、あれだけハッキリこれからしますって宣言してしまったらね……。
エミーが部屋を出てしまうと、なんとも言えない沈黙が部屋を包んだ。
えっと……、なんだろう。
そろそろする? って聞いてみる?
それとも俺がベッドに移動しちゃえばいいのかな……。
いやでもちょっと、まだ時間的には早い……のかな?
ダメだ良くわかんないや……。
蒼とセリクはどんな風にしてるんだろう……。
聞いておけばよかった。と思ってから、聞いても蒼は答えてくれそうにないか、とも思う。
そんなの勝手にすればいいじゃねーかっ! って、言われるだろうな。とそこまで考えて、ちょっとだけ苦笑する。
「ケイト様、失礼致します」
不意に近くでリンの声がして、俺はリンにヒョイと抱き抱えられた。
いや待って?
そんなヒョイと抱えられるほど俺は小柄じゃないからね?
リンはそのままよろけることもなく安定した足取りで寝室に入ると、俺を抱えたままベッドの真ん中に座り込む。
寝室は既に明かりが落とされていて、かわりにふわりと甘い匂いのする小さなキャンドルがひとつ、ベッド脇に灯されていた。
ああ、エミーが心を配ってくれたんだな、と俺は嬉しくなる。
俺は胡座をかいたリンの長い脚の中に、そうっと下ろされた。
うう、なんだかこの大切でたまらないみたいな扱いが、嬉し過ぎて心臓が痛いよ……。
リンは俺をうっとりと見つめながら、ゆっくり顔を近づけてくる。
ああ、幸せそうな顔してるなぁ……。
思わず俺の唇にも笑みが浮かぶ。
何度か重ねるだけの口付けをしてから、リンは俺の頭を大きな手で支えて優しく引き寄せる。
あれから何度も繰り返してきた深いキス。
リンも今ではすっかり慣れて、こんな風に上手にリードしてくれるようになった。
リンの舌がぬるりと俺の内側に入り込むと、ゾクゾクと背筋が震えた。
「……ぅ……ん……っ」
リンは繰り返し角度を変えて俺の中を全て埋め尽くしてくる。
「……ぁ……ふ……」
愛を感じるその行為に、胸が熱くなって、息が上がってきてしまう。
「ぅん……っ」
やっと顔を離したリンは俺と同じように赤い顔で、うっとり微笑んだ。
「ケイト様……、お可愛らしいです……」
ぅぅっ、恥ずかしいって!
「よろしいですか?」と尋ねて俺の服のボタンに指をかけるリンに、俺は「うん」と頷く。
あ。俺もリンの服を脱がせばいいのかな? と思ってはみたものの、今日のリンの服はまるでボタンのなさそうなつるりとした服で、どこから脱がせればいいのか良く分からない。
伸びそうな素材でもなさそうだし、かぶって着るとも思いづらいけど……。
中途半端に伸ばした俺の手に気づいたリンが、脇につけられた隠しボタン……というよりホックかな? そんなものを1つ2つ外して見せてくれる。
その後はまた俺のボタンの続きに戻ったので、これは俺が外してもいいということだろうか。
全部で6つのホックを外すと、ぱらりとリンの服の前が開いた。
俺のシャツのボタンも、リンが最後の1つを開けて全開になる。
リンの服は前で2重に重ねられているようで、向こう側も外さないと肌が出ないんだな。
俺がそちらへ腕を伸ばすと、リンは触れやすいようにと膝で立って体を傾けてくれた。
内側のホックを3つ外すと、ようやくリンの素肌が現れた。
わぁ……すごいな……。
騎士団の皆は普段ビシッと分厚い制服や甲冑を身につけているけれど、魔物と戦うための訓練を絶え間なく続け、甲冑の重さを物ともせずに剣を振り回すその姿から予想できるように、その下には中々に鍛え上げられた筋肉が隠されている。
ロイスの上半身なら着替えだとか水浴びで何度かみたことがあって、その時もすごいなと思っていたんだけど、リンの腹筋はもっとすごい。
くっきりぱっきり割れているそれは板チョコかな? ってくらいに整然と並んでいた。
俺も筋トレで腹筋は毎日鍛えてるので割れてはいるけど、全然こんなんじゃないよ……。
思わずその美しい筋肉を指でなぞると、リンは小さく肩を揺らした。
「あ、くすぐったい?」
「いえ、その……。嬉しい、です」
嬉しい……?
俺に触られるのが……?
俺もつられて嬉しくなって、リンの綺麗なお腹と、そこから側面へと流れるような腹斜筋を丁寧になぞる。
「リンのお腹、すごく綺麗だね……。リンはずーっと訓練頑張ってきたんだね」
この腹斜筋があるから、リンはあんなに大勢に囲まれた中でも、体幹を安定させたまま左右に腰をひねって剣を振れたんだなぁ……。
なんだか愛しくなってしまって、感謝の思いを込めてリンの脇腹に口付ける。
「っ」
リンは小さく息を呑んで腰を揺らした。
揺れたリンの腰を見れば、彼のズボンが大きく形を変えていた。
なんだか苦しそうな様子に、俺は思わず、すぐ前にあるリンの物へと手を伸ばす。
「っ!」
俺が触れると、リンはびくりと体を揺らした。
「あ、ごめん、急に触っちゃって」
「っ、いえ……っ」
「ズボンの中、キツくない? 外に出してもいいかな?」
「は、はい……」
ズボンと下着を下ろすと、リンのそれが堂々たる風格を持って俺の前に姿を見せた。
……立派ですごいなとは思うんだけど。
……これ、って、俺の中に……入るの……?
とてもそうは思えないんだけど……。
「ケイト様……?」
「あ、ううん」
俺はひとまずその問題を先送りすることにして、リンに促されるままに俺も服を脱ぐ。
夏の盛りが近づく夜は、素肌でちょうど良いくらいの気温だった。
俺をベッドに仰向けに寝かせたリンは「失礼します」と告げて俺の脚をおずおずと開く。
別にもっとグイッと思い切りよく動かしてくれても大丈夫だよ。
俺はそんな細くないし、体も頑丈な方だし。
そうは思うものの、彼が壊れ物に触れるかのように丁寧に俺を扱ってくれるその気持ちがすごく嬉しくて、彼が俺を大事にしたいとどれほど思ってくれているのかがそれだけで伝わってしまって、俺は何も言えなくなってしまう。
エミーが「ケイト様のお身体に何か入れられる際には、こちらをたっぷり纏わせてから行なってください」とリンにもわかるようにはっきり説明してくれた小さめのツボから、リンはとろりと糸を引く乳白色のクリームのようなものを手にとった。
俺の後ろにもリンのものにも、すでに浄化がかけてある。
これもエミーの指導によるものだった。
ぬるりとした感触が肌に触れて、続けてリンの長い指が俺の中に優しく入り込む。
それがあまりに優しすぎて、俺は小さく息を漏らした。
「痛むところはございませんか?」
「うん、……ないよ」
俺の中に指がゆるゆると埋まってゆく事への抵抗感があまりになさすぎて、俺は自分の身体がそれを既に知っているのだと思い知らされる。
2本目が収まり、3本目が入る頃には入り口に多少の圧迫感こそ感じるものの、やはり不快感を感じる部分はどこにもなかった。
ああ、そうか。
こちらでは2年程前の出来事でも、俺の身体にとってはまだそれから1日も経っていないのか……。
俺の身体はまだ、開かれたままだったんだ……。
「動かします、ね」
リンの言葉がなんだか苦しそうに聞こえて、彼を見上げる。
立ち上がりすぎて彼のお腹に当たってしまっている彼の物からは、まるで涙のように透明な雫がほろほろと糸を引いて零れていた。
「も、もう俺大丈夫だから、リン入れていいよっ」
「ぇ……?」
眉を寄せたままで、リンは俺を見る。
「ね、リン、入れて……?」
途端にリンがカアッと赤くなる。
「そ、そうおっしゃるのでしたら……」
うっ、可愛い……っっ。
俺、リンのためならちょっとくらい裂けてもいいや。
後で治癒すればいいわけだし。
痛くても、痛くないフリしとこう……。
そんな風にリンの巨大なそれへの覚悟を固めている間に、俺はリンの手で優しくベッドにうつ伏せにされて、お尻を高く持ち上げられる。
「苦しくありませんか?」
心配そうなリンの声に、俺は「平気だよ」と答える。
キスはあんなに慣れてなさそうだったのに、今日は結構リンがリードしてくれるなぁ。
そう思ってから、キスは初めてでもこういう経験はあったのかな、と思う。
巡礼の時も大きな町だと夜に女の人を呼んでる騎士の人もいたし、場所によってはそういう接待があるような話もちょっと聞いた気がする。
「……もしリンが嫌でなければ、なんだけど」
俺が口を開くと、リンは必ず動きを止めて話を聞いてくれる。
「その……リンの経験を尋ねてもいい……?」
初めてでなくてもがっかりするまいと決意しながら尋ねた俺の質問に、リンは申し訳なさそうに眉を下げて蚊の鳴くような声で答えた。
「……お、お恥ずかしながら、……初めて……です」
「えっ、そうなの?」
後ろを振り返ると、こくりと青い頭が申し訳無さそうに頷く。
「いや、嬉しいよ。すごくすごく嬉しい」
俺の言葉にリンはホッと胸を撫で下ろしたようだった。
そんなの、俺が初めての相手だなんて、本当に嬉しいよ。
「いやなんか、知ってる風にリードしてくれるからさ」
弾む胸についこぼしてしまった俺の言葉に、リンはいつも通り正直に答えた。
「こちらの姿勢の方が負担が少ないだろうとアオイ様がおっしゃっていました」
……え?
……ちょっと待って? これ蒼のアドバイスなの?
え? じゃあ何?
俺って蒼に今頃こんな姿勢とらされてんだろうなって思われてるわけ?
いや、待って……?
どういうことなの……?
そこまで考えてから、俺は夕方に蒼がセリクを連れてちょろっとだけ部屋に顔を出した理由がわかった。
セリクが蒼の指示でこの寝室と隣の部屋に遮音の魔法をかけていたんだよね。
「儀式の日までの期間指定ですので、その後は自然に解けます」なんて言われて、俺が「何で?」って聞いたら蒼は「プライバシー保護だよ、ここの壁結構音漏れるからさ、兄ちゃん声でかいだろ?」って言ってたやつ。
これ……明らかに俺の喘ぎ声対策なんじゃないか……。
なんで皆そんな……俺達に協力的なんだよ……。
嬉しさと、それをはるかに上回る恥ずかしさに、申し訳なさが混じって、なんとも言えない気持ちになる。
動揺する俺の後ろにぬるりとした感触が触れる。
俺の腰を優しく掴むリンの手に、わずかに力が入る。
おそるおそるという様子でずぶりと入り込んだそれは、あまりに大きかった。
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