74 / 81
【番外】蒼が約4か月の眠りから目覚めた直後のお話*
◆◆◆◆
本編4巻前半の『……寂しいよ、アオイ。』の真ん中に入るR18シーンです。
興味のない方は飛ばしてもらってOKです。
◆◆◆◆
「アオイ……」
オレはオレの名を呼ぶセリクの声に、目を覚ました。
部屋はシンと静まり返っていて、今が夜中なのだと知る。
なんだ……? 空耳か……?
ただオレが夢ん中で呼ばれたような気がしただけだったのか?
体を起こそうとして、ビンッと髪の一部が引っ張られる。
「ってて……。なんだ?」
見れば、オレが背を向けていた方には椅子に座ったセリクがベッドにうつ伏せるようにして眠っていた。
その両手で包むようにして大事そうに握り締められていたのは、オレの髪のひと束だ。
……なんでだよ。
オレが寝てる間も部屋に入ることを許してんだから、お前はもっとオレのどこにでも触っていいんだよ。
そもそも、寂しくなったらいつでも起こせっつったろ。
なんでそんなに我慢すんだよ……。
眉間に皺を寄せたセリクの寝顔を覗き込んでいると、セリクが僅かに瞼を震わせる。
そこから、静かに零れたのは一粒の涙だった。
「……っ、アオイ……」
掠れるような微かな声が、オレの名を呼ぶ。
空耳じゃなかった。
こいつがオレを呼んでたんだ。
……夢の中で……。
っ! なんでここまで我慢してんだよっ!!
「セリク、起きろ!」
オレはセリクのがっしりした肩を掴んで揺する。
自分の手はセリクの肩を包めないほどに小さい。
それがたまらなく悔しい。
もっとちゃんと、こいつを支えてやりたいのに……。
「ふぇ…………、え……? アオイ……!?」
とろんとした黄緑色の瞳が、オレの顔を見て大きく見開かれる。
「ここ上がれ」
オレは広いベッドの真ん中、自分の隣をポンポンと叩いて示す。
セリクはいつからここで寝てしまっていたのか、軋む身体をぎこちなく動かすようにして、オレのベッドにのぼってきた。
セリクに手を伸ばすと、セリクはオレの手の平に頬を擦り寄せる。
寂しかったんだな……と思いながらその頬を撫でて、そのまま顔を引き寄せると、セリクは黄緑の瞳をそっと閉じた。
こんなにも従順にオレの口付けを待つ様が、なんだか健気すぎて、胸が小さく痛む。
唇を重ねて、よしよしと頬やら頭を撫で回してから、オレはセリクの頭を抱え込んだ。
いや、ほんとは頭だけじゃなくて身体ごと包んでやりてーんだよ。
けどこの体じゃセリクの頭を抱えるだけで手一杯なんだよな……。
「寂しくなったら起こせっつったろ。なんで我慢してんだよ」
オレの言葉に、セリクは小さく息を詰めた。
「……だ、だって……、アオイに少しでもちゃんと休んでほしかったから……」
「ったく、ちょっと起こされたくらい、オレにとっちゃ大したことねーんだよ。お前に1日付き合ったって、オレにしちゃ2分にもならねーんだからさ」
「……ごめんなさい……」
素直に謝るセリクにイラっとする。
ちげーだろ。オレはもっと我儘を言えって言ってんだよ。
「言うこと聞かねぇ奴にはお仕置きが必要だな……?」
オレの言葉にセリクはひゅっと息を吸って、身体を強張らせた。
ん?
ギュッと力の入ってしまったセリクの身体は、まるで痛みに備えているようだった。
「セリク……?」
オレはセリクの顔を上げさせる。
「ごめっ……ごめんなさいっ!」
必死で謝るセリクの瞳には紛れもない恐怖が滲んでいた。
……あー……くそ、そーゆーことかよ。
やっちまった。
こいつ元奴隷だっつってたもんな。
今までそーゆー目に遭ってたってことかよ……。
冗談だって言うか?
いや……。
オレは身を縮めて震えるセリクの鼻先に噛み付いた。
「っ」
セリクは一瞬肩を揺らしたが、オレが口を離すとキョトンとした顔でオレの顔を見つめる。
「いいか、今度からは寂しい時にはオレに必ず言え。言えねーんだったら触るだけでもいーから、オレの髪じゃなくてせめて手に触れろよ。髪じゃ気づかねーだろーがよ!」
間近で怒鳴られてセリクはビクッと肩を揺らしたが、それでも「うん」と答えて小さく笑った。
痛い目に遭わずに済んだと安堵したようなその小さな微笑みは、まだどこかに怯えを残していて、オレの心を酷く揺らした。
「うん、うん……。ありがとう……アオイ……」
「お前……、明日休みなのか? つか今日何日だよ」
こんなとこで寝てるとこ見りゃ、まあそうなんだろーけどさ。
セリクの答えに、オレは明日が起きる予定の日なのだと知る。
それでセリクは、目覚めたオレに真っ先に会いたくて、オレのベッドの横にいたってのかよ。
……ったく、健気にも程があるだろ。
「じゃあ罰として、セリクはオレがいいって言うまでオレのベッドにいろよ」
あ。トイレは行きゃいいし、食事もちゃんととること。それ以外の時間はオレのベッドの上にいるんだぞ。とオレは条件を加える。
じゃなきゃこいつ真面目にここからずっと降りねーかも知んねーしな。
「わ、わかった」
セリクはコクリと真面目に頷いた。
あ、お前、気づいてねーな?
オレはセリクの黄緑色の瞳を覗き込む。
そこに映っていた怯えはかなり薄くなっていたが、まだどこか暗い影が残っている。
あーくそ、よっぽど嫌なことでも思い出しちまったんだろうな。
オレが余計なこと言わなきゃ、こいつはもっと素直にオレに甘えてただろうし、今頃オレの下で可愛く啼いてただろうによ。
「セリク……お前、ほんとに分かったのかよ。……どーゆー意味か」
オレは精一杯艶やかに微笑んで、セリクの頬を撫でる。
小さな膝でセリクの股間を軽く押してやれば、セリクはようやくハッとした顔をして、それからゆっくり頬を赤く染めた。
そーだよ。
それでいーんだよ。
お前はオレに可愛がられることだけ考えとけよ。
「アオイ……」
期待を乗せた声がオレの名前を呼ぶ。
「いい子だ……」
なるべく優しく囁いて、セリクの頬を両手で包む。
深く深く口付けて、セリクの不安を残さず溶かすように、たっぷりとその口内を撫で回す。
「……ん、……ふ、ぅ……」
時折り小さく漏れるその吐息が少しずつ蕩けて甘い響きになってゆく。
なぁセリク。
お前はいつもいい子だよ……。
いい子であろうと頑張り過ぎて、時々度を越してしまうくらいにな。
オレの兄貴にあんな事をしたのだけは、やっぱどうしても許せねーけどさ。
それでも、お前の事……。
オレはもう、嫌えねーんだよ……。
「ん、ん……っ、んぅ……っ」
まだキスだけなのに、セリクの腰がぴくりと小さく揺れる。
いつもよりも敏感な様子のセリクに、オレは気づく。
こいつ……オレが起きる前だからってしばらく我慢してたんじゃねーのか?
オレはセリクから顔を離す。
つう、と細い糸がオレとセリクを繋ぐ。
オレはそれをぺろりと舐めて尋ねた。
「お前……溜まってんの?」
セリクは黄緑色の瞳を揺らすと、真っ赤な顔になって俯いた。
そこからじわりとオレの方へ視線を上げれば、当然潤んだ瞳がオレを上目遣いに見上げるわけだ。
なんだその角度、狙ってんのか?
「……だ、だって……、アオイに……いっぱい、してほしかったから……」
…………はぁ!?
……可愛いにも程があんだろ……!?
そんなん思っくそ可愛がってやるに決まってんだろ!?
オレは内心の動揺を隠して、極力なんでもない声で答える。
「んじゃあ、サッサと準備しろよ」
セリクが、オレの安眠の為に軽くかけてあった遮音魔法の強度を上げる。
いや……今サラッとしたけど、こいつ……、一度消してかけ直すのの何倍難しいことしたよ、おい……。
オレが4か月寝てる間、セリクは仕事にも出てたはずなのに、一体どんだけ勉強してたんだ……!?
洗浄魔法も術式展開までが一瞬じゃねーか、どーなってんだよ……。
呆気に取られているうちに、セリクは脱いだ服をきちんと畳んでベッドサイドの机に乗せるとオレの前に戻ってきて嬉しそうな顔で微笑んだ。
準備万端だと、さあ触ってくれと言わんばかりの顔を向けられて、なんだかご褒美待ちをしている大型犬のようだなと思ったりする。
ちっとばかしムードは足んねーけど、可愛がってやるとするか。
両手に浄化をかけてから、オレはセリクの前と後ろにも浄化をかける。
「えへへ」とセリクから嬉しそうな声が漏れるので、オレは苦笑を堪えながら言った。
「……んだよ」
「嬉しいなぁって」
「抱かれんのがか?」
「それも嬉しいけど、アオイが起きてくれたのが嬉しい」
「……最初っから明日には起きる予定だったろ」
「うん、起きてくれてありがとうアオイ。僕、アオイに触ってもらえるの、大好き……」
「……っ」
セリクの言葉に、オレの心臓が勢いよく跳ねる。
ちげーって。
オレが好きって言ったわけじゃねーだろ。
落ち着けよオレ。
オレはドキドキ煩わしい心拍音を誤魔化すようにセリクの身体に優しく触れた。
「……ぁ……」
セリクは待ち望んだオレの手に身体を震わせる。
「っ……んっ……ぁん……っ」
首筋を優しく撫でて、鎖骨の窪みを辿って、セリクの感じるところ全てを丁寧になぞる。
「んっ、あ……っ、アオイ……っ、早く、入れて……っ」
もじもじと膝を擦り合わせるセリクが、切なげな表情でオレを誘う。
「ったく、欲しがりが……」
オレはどうしようもなく緩む口元を見せないように、俯いて視線をセリクの物に移す。
既に血管が浮くほどに怒張したそれをいきなりぎゅっと握り込んでやれば、セリクは「ひゃぅっ」と高い声を上げて腰を揺らした。
ああくそ可愛い反応しやがってっ。
オレは片手でセリクのものを扱きながら、もう片方の手を窄めて後ろへと沈めてやる。
「あっ、あっ、ああっ、んんんっ」
思った通り、セリクのそこは既にしっとりと潤っていて、難なくオレの手を受け入れた。
「ぁ、アオイの……アオイの手だ……っ、んんっ、あっ、いいよぅ……」
ずぶずぶと進むオレの手に、セリクは頬を染めた幸せそうな表情で甘い声を漏らす。
「アオイ……っ、ぁっ、きもちいい……よ……っ、アオイっ」
くそ、嬉しそうな顔しやがって……。
ぐちぐちとナカをかき回してやれば、とっくに限界だったらしいセリクは涙を浮かべて訴える。
「あっ、ダメ、もうっ、イ……イクぅっっ」
「イけよ」
オレの言葉に応えるように、セリクは背を反らせるようにして達した。
「ぁああああああんんんんっっっっ!!!」
その時、セリクの腕がオレを求めるようにオレへと伸ばされて、けれど諦めるように引っ込んだ。
こいつは、オレを素直に欲しがるくせに、自分からオレに触れようとしない。
オレが聖女だから、おいそれと触れちゃまずいんだとか言いやがる。
こんなコトさせときながら、よく言うよな。
身分の差だとかそんなもん、オレとお前にあるとでも思ってんのかよ。
1度だけ、媚薬っぽいものを飲ませた時には、前後不覚に陥ったセリクが抱きついてきたけどな。
そんでも、それっきりだ。
もっと遠慮なく来いってんだよ。
「おいセリク、俺の身体支えとけ」
「ん、あっ、うんっ」
セリクは喘ぎ声の合間から答えて、嬉しそうにふわりと笑う
オレはセリクの大きな手にしっかりと包まれてぐらつかなくなった体で、拳をグッと握り込むとセリクの奥を強く押し込んでやる。
「あっ、やぁんっ、奥ぅっ! あぁぅっ、んんんっ、奥、来てるよぅっ」
快感にほろりと零れたセリクの涙を拭ってやりたい、が、この姿勢からでは手が届かない。
くっそなんでこんなちっこい体してんだよオレは!!
「もうちょい顔寄せろ」
仕方なく言えば、セリクが蕩けた瞳でオレを見つめて嬉しそうに近づいてくる。
オレは浄化をかけたもう片方の手で、そのすべすべしたピンク色の頬を引き寄せる。
キスだと思ったのか、そっと目を閉じたセリクの頬の涙を、オレは小さな唇で吸い取った。
「ふぇ……?」
その間抜けな声が可愛すぎて、口元が緩む。
「ばーか」
オレは苦し紛れにそう言って、セリクの濡れたまつ毛に、目頭に、熱くなった頬に口付けを降らせる。
「ん、アオイ……」
くすぐったそうな声は、それでも幸せそうにオレの名を呼ぶ。
その声に、オレは頭の芯まで熱くなる。
「……もう今夜は寝かせねーからな?」
オレの言葉にセリクは小さく震えて「嬉しい」と答えた。
……ああ、いいよな?
こいつも乗り気だし、明日は休みだし。
またこいつを前も後ろもわからないほどに快感で狂わせてやろう。
そうしたらまた、こいつは必死にオレを求めて縋り付くだろ?
オレは喉の奥で低く笑う。
セリクはそんなオレを期待に満ちた黄緑色の瞳でうっとりと見つめる。
オレはその期待に、一晩中たっぷりと応えてやった。
ともだちにシェアしよう!

