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【番外】『既に起きた事』の後の二人*
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蒼とセリクのR18シーンです。
興味のない方は飛ばしてもらってOKです。
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可愛がってやると告げて、オレはセリクを腕に抱き寄せる。
セリクは嬉しそうに黄緑色の目を細めて「アオイ……」とオレを求めた。
「けど、1回だけだぞ? お前明日は仕事だろ?」
途端にセリクは悲しそうに眉をへにょっと下げる。
「えー……。……うん……わかった……」
躊躇いを残しつつも、それを飲み込んでなんとか納得しようとする様子が目に見えて、その健気さといじらしさが胸にくる。
んだよ!!
可愛過ぎんだろ!!!
そんな残念そうにしといて、文句はそれっぽっちなのかよ。
我慢させたくない気持ちと、身体に無理をさせたくない気持ちがオレの中で争う。
「……また旅先でも抱いてやるよ」
セリクは幸せそうに微笑んで「うん!」と答えた。
オレは次の巡礼にもこいつを連れて行くつもりでいた。
こいつの所属している魔法研究所からは2年連続の8か月にわたる貸し出しに随分文句を言われたとララは言っていたが、前回の旅でもセリクはかなり役に立ったので、護衛騎士団と司祭のじいさんは二つ返事でOKをくれたらしい。
それに、セリク自身もついて行きたいって言ってるしな。
こいつが兄貴に会えんのも、もう後一年もねーわけだし、そんくらい許してやってもいーだろ。
まあ、馬車はオレと一緒に乗ってもらうけどな?
意外な事に、セリクはまたオレと一緒の馬車だと知っても残念がる事はなく、むしろ少しホッとした様子を見せた。
確かに最近兄貴にはディアがべったりというかビッタリくっついて目を光らせてるからな。
あっちの馬車よりはオレの馬車の方がまだ息は吸いやすいだろうよ。
そんな事を考えている間に、もうセリクは準備を万端に整えて、オレが触れてくるのを今か今かと待ち焦がれている。
「ったく、昨日もあんだけしたってのに、お前はホントに淫乱な欲しがりだな」
オレの言葉に、セリクは少し恥ずかしそうに目を伏せながら、おずおずと答える。
「だって……ずっと……アオイにして欲しかったから……つい……」
くっそ、ちょっと揶揄っただけだよ!!
あんま無自覚にオレを煽んじゃねーよ!!
オレはどこにも出せねーんだぞ!?
「……お前もなんか、オレにサービスしろよ」
つい口を滑らせたオレに、セリクは満面の笑顔で答える。
「うんっ、アオイのしてほしい事、僕なんでもするよ!」
……マジかよ。
「何したらいい?」
わくわくした顔で問われて、オレは真顔になった。
何って………………、なんだ?
……なんかあるか……?
あまりに何も思いつかなくて固まるオレの前でセリクがふきだした。
「アオイ、もうちょっと何か考えてから言ってよ」
オレを笑ってるってのに、セリクのクスクス笑う様すら可愛いと思えてしまいそうでマズイ。
「るっせーな。……つーかお前はオレに何ができるってんだよ」
「うーんと、それじゃあ、お疲れ様のアオイに僕がマッサージするよ」
「ふぅん? お前そんなんできんの?」
「うん、研究所の人達って、皆肩こってるからねぇ」
そう言って笑うコイツも、普段はデスクワークばっかなんだよな?
こいつは肩とか首とか痛くねーのかな……。
「うつ伏せになってくれる?」
言われてベッドに伏せようとするオレに、セリクが枕を渡す。
ああなるほど、これを敷いときゃオレのささやかな胸もつぶれねーわけだ?
セリクはオレの腰の上に跨るように膝をつく。
細いオレと脚の長いセリクでは、その体がオレに触れることはなかった。
「痛かったら言ってね」
セリクはそう心添えして、オレの肩やら背中をほぐすように指の腹で丁寧に押してゆく。
肩も背中も、衣装合わせやら何やらでそこそこ疲労していたのか、セリクの指圧は思った以上に心地よかった。
「む……、ぐ……、んん……」
肩やら腰はいいんだが、背中の辺りはぐっと押されると、肺が潰される都度変な声が出るな……。
それが若干恥ずかしくはあったが、まあ、セリクの喘ぎに比べたらこんくらいなんでもねーか。と思うことにして、オレは大人しくセリクに身を任せた。
大きな手のひら全体で温めるようにして、オレの背中をくるくると解しながらセリクがオレの後頭部に顔を寄せて尋ねる。
「……ねぇ、アオイ、……気持ちいい……?」
セリクは施術にほんの少し息を乱していた。
オレに褒められたいのか、その声はねだるように甘い。
そんな風に囁かれてしまうと、オレの背はぞくりと震えた。
くっそ!! こんなん余計溜まるわ!!!!
ガバと起き上がるオレの上からセリクは慌てて降りる。
「っ、もーいーから、サッサとしよーぜっ」
「……気持ちよくなかった……?」
しょんぼりとオレを見る黄緑色の瞳。オレはその顎に指をかけて引き寄せる。
ちゅっ。とワザと音を立てて口づけてやれば、セリクはびくりと小さく肩を揺らした。
「いや、悪くねーよ。身体も軽くなったしな」
オレの言葉にセリクがほわりと綻ぶ。
「よかった……」
っ、くそ可愛いな……。
つられて赤くなりそうな顔を見られたくなくて、オレはもう1度セリクの唇を塞いだ。
「……あんがとな」
口内にそっと礼を告げれば、抱き寄せたセリクの身体がカアッと熱を持つ。
オレは顔の熱が落ち着くまで、と、セリクに深く口付けると、その口内を愛撫する。
水音が響く度に、次第にセリクの口端から小さな声が漏れてくる。
あーくそ可愛い声しやがって……。
オレは手探りでセリクの身体をたっぷり撫でてやる。
首筋から鎖骨の窪みを辿って肩までのぼった指をまた下ろしてやれば、セリクの好きな胸の突起は既にふんわりと立ち上がりつつある。
細い指を束ねて軽く爪を立てるように撫でてやれば、セリクは腰を揺らしてびくりと跳ねた。
「ぅあんっ!」
んでそんな可愛いんだよ。
セリクが跳ねた拍子に離れたオレの唇を、セリクが視線で辿る。
ああ、唾液がまだ繋がってんな。
気になんのか。
オレが自分の唇をペロリと舐めて糸を切ってやれば、セリクはうっとりとオレを眺めた。
こいつちょいちょいオレに見惚れるよな。
今は女の身ではあるが、それでも悪い気はしない。
どうやらこいつはオレの仕草に惚れてるみたいだからな。
そんなら男の体でも同じようにしてやれるだろう。
オレの顔を見つめたまま、どこかしょんぼりを眉を垂らしたセリクに、オレは尋ねる。
「……どうした?」
「ん、……ごめんね、いつも僕ばっかり気持ちよくしてもらって……」
なんだ、そんなことか。
それはオレが今、自分の体じゃねーからだよ。
お前のせいじゃ……。
「聖女様じゃなければ、僕もアオイにしてあげられたのにね……」
「はぁ!? お前オレを抱く気なのかよ!?」
オレの勢いに、セリクが目を丸くする。
「い、いやそういう事じゃ……」
「オレがお前を抱きてーんだよ! 抱かれてたまるか!!」
オレが叫んだ途端、セリクはきょとんと黄緑色の瞳を瞬かせた。
「アオイ……僕の事抱きたいの……?」
ハッと口元を押さえるが、既に言葉は出た後だ。
「……んだよ。悪いかよ……」
悪態をつくしかなくなったオレに、セリクは幸せそうに綻ぶ。
「えへへ……嬉しいな……」
「っ、オレも今度は兄ちゃんみてーに男の姿で来てやっから、そんときゃ覚悟しとけよ!!」
「……今度……」
セリクが最初に拾ったのはそこだった。
こいつはオレが帰るのが、オレと離れるのが寂しいんだとすぐに分かった。
「……ぁ……。……うん……。楽しみに、してるね」
そう言ってオレに見せた微笑みが痛々しいものだと、セリクは気づいたんだろうか。
オレは、お前の指が小さく震えている事に気づいちまったよ……。
「セリク……」
なるべく優しく、慰めるようにその名を呼んで、ゆっくりと押し倒す。
オレの軽い身体じゃセリクの身体は全体重をかけても倒せやしねーけど、こいつはちゃんとオレの意図を汲んで倒れてくれる。
そういうとこが好………………いや、助かるんだよな。
セリクに覆い被さって、その顔中に優しく唇で触れる。
セリクの震えがおさまるまで慰めてから、オレは口を開いた。
「いいか? 今夜は1回だけだからな、終わったら帰るんだぞ?」
「……うん……」
「んな顔すんじゃねーよ。その代わりゆっくり時間かけてしてやっから」
「アオイ……」
この嬉しくてたまらないみたいな顔、たまんねーんだよな。
思わず、これをオレ以外に絶対見せんなよ。って気になってしまう。
……けどオレは今日知ってしまった。
セリクが今までオレ以外の奴に、散々……抱かれてたって事を……。
一体いつから、セリクはそんな生活を続けてたのか……。
オレはセリクの身体を撫で回しながら尋ねる。
「なぁ、お前の両親ってどこで何してんだ? もう死んでるとかか?」
セリクは甘い声の合間から答える。
「んっ……それって、……っ、今する会話……?」
「ヤってる時のが、すぐ慰めてやれんだろ」
口端を上げて言ったオレの言葉に、セリクは少しだけ悲しそうに笑った。
オレは手を止めて、返事を待つ。
「……家族のことは何も覚えてないよ。生まれた場所も、育ったところも知らない。気づいたら僕は牢に繋がれてて、その時にはもう……」
セリクはそこまでで言葉を切ったが、それは、さっき話していたような昼夜を問わず男達の玩具にされるだけの生活だったのだろう。
「……それって……」
オレの言葉に、セリクは淡々と答えた。
「うん。多分、記憶を消されたんだと思う。帰る場所も会いたい人もなければ、逃げ出そうって気も起きないだろうし……」
オレは納得した。
セリクが過去をまるで話さないのは、セリクに話す過去が何もなかったからだ。
行為に怯える様子がないのも、おそらく十分に快感を拾える身体にしてから、痛い思いや怖い思いをした部分を全部消されたからだろう。
それまでの、全ての過去と一緒に……。
そうして、こんなに明るく素直で、寂しがりで欲しがりな子どもっぽい奴が出来上がった。
――……こいつの性格までもが、全部あいつらに都合の良いように作られたってのかよ……!
腹の底から沸き上がる感情に、噛み締めた奥歯が小さく音を立てた。
「……アオイ……?」
「……いや」
不安そうなセリクへ、オレが答えられたのはそれだけだった。
「えっと……、アオイが気にする必要ないよ? 僕は悲しくないから……」
そんなの、お前は悲しむことすらできないほどに、奪われ尽くされたって事だろ……。
そんな、幸せな記憶の1つもない中で、空腹なまま、男達に奪われ続ける日々で。
セリクは初めて出会ったんだ。
自分を助け出し、大切にしてくれる人に。
奪われたきり失ったままだった名前を、新しくつけてもらって。
兄ちゃんのことだから、とびきり優しくしてやったんだろう。
優しく撫でられて、優しい言葉とあったかい布団に包まれて、腹いっぱい食わせてもらって。
……そんなん……兄ちゃんに依存すんなって方が無理だろ……。
世界にたった1人の救いが、もう2度とこっちに来ないだなんて知ったらさ。
セリクだって、捕まえてしまうしかねーよな。
……だってこいつは、それしか知らねーんだもんな……。
あー……。ダメだ。
セリクに捕まった後もセリクを嫌わなかった兄ちゃんの気持ちが、オレにももう……十分わかっちまったよ……。
「……アオイ……? 僕また、アオイを嫌な気持ちにさせちゃった……?」
セリクの声が不安げに揺れる。
嫌な気分になってんのはオレの勝手で、お前が悪いんじゃねーよ。
腹の内を灼く激しい感情に、言葉を返せないまま黙り込んでいると、セリクがおろおろと謝り始めた。
「っ、ご、ごめん……。僕……」
オレは咄嗟にその唇を塞ぐ。
こいつにそんな事謝らせたくなかった。
けどもう、オレの中には怒りだとか悲しみだとかがごちゃごちゃで、抑えきれない感情の渦が目頭まで押し寄せていた。
「ばーか、んなわけあるかよ! お前はうつ伏せてケツ上げろ!」
「え、う、うん」
セリクはいつも通り従順に従う。
今はその素直さにすら腹が立つ。
オレの前に差し出されたそこへとゆっくり手を沈めてやれば、セリクは悦びに背を震わせた。
「……ん、ぁ……っ、ぁあ……」
苛立ちを決して乗せないように、オレは慎重にセリクの内側を撫で擦りながら進む。
「んっ、ぅ、ぁ、っ、んっ、あっ、あ、あぁっ」
セリクの甘い声が、なんだかオレを慰めているように聞こえて……。
……オレは、セリクの温かい内側に包まれて、必死で涙を堪えていた……。
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