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大丈夫です、ディアリンドがいますから
やはり駆け足での公開告白は前後の班の耳にも届いてしまったようで、後ろでアークがゲラゲラ笑いだした。
「ちょっ、4班っ、聖女様好き過ぎるだろ!」
すると、ヒアッカがアークに言い返した。
「おい馬鹿にすんなよ! 俺らの愛が聖女様の聖力になるんだからな!?」
えーと……、それ、ここで言っちゃうの……?
途端にシヴァルを除いた6班の全員が怪訝な顔になった。
ああうん、シヴァルは最初から知ってるからね。
班員達の真偽を問うような眼差しが班長であるシヴァルに注がれる。
リンの肩越しに後ろを見ていた俺に、シヴァルがチラと窺うような視線を向ける。
いいよ、肯定して。
ここまで聞かれてしまったらもう、誤魔化しても仕方ないよ。
知られて困る事でもないから。
俺がちょっと……恥ずかしいだけで……。
俺が頷いたのを見て、シヴァルはいつもと変わらない面倒そうな顔で班員達に告げた。
「ヒアッカの言うとおりだ」
6班の4人が各々驚きを浮かべる。
そんな中で、アークが俺をじっと見上げた。
「おっ、俺! ケイ……じゃなくて聖女様の事大好きです! マジで! いつも頑張ってる聖女様の事、あの頃よりももっとずっと好きです!」
うっ、いつもゲラゲラ馬鹿話ばっかりしてるアークが、凄い真剣な顔でそんな事言ってくるよ……。
俺は、まっすぐ向けられる愛にきゅうっとなってしまう胸を思わず両手で押さえる。
すると今度はラドムが口を開いた。
「私は、聖女様を心からお慕い申し上げております。持てる力の全てを捧げてお守りする所存です」
ううっ、ラドムの告白は真剣度が凄くて怖いくらいなんだけど……。
その重めの愛のおかげで、聖力がぐんと増えるのを感じる。
6班の先頭を走るシヴァルは「私もです」と告げて微笑みを添えるだけなのに、その眼差しにしっかりと愛が込められていて、俺の聖力はまたもぐんと増える。
さらにはモリーとビルドまでもが、続けて愛を捧げてくれる。
「聖女様はいつでもお美しくてお可愛らしくて、私も見る度愛しく思っていますよ」
ニコッと微笑んでさらりと伝えてくれたのは、少し長めのパステルグリーンの髪を揺らすモリーだ。
「わたっ、私も聖女様はその、す、す、素敵だなって思ってますっ」
最後になったビルドの言い慣れてなさが、またなんとも微笑ましくなってしまう。
俺のために慣れないことに挑戦してくれたんだね、ありがとう。
俺は村での公開告白に赤くなった頬のままで、心からの感謝を伝える。
「ありがとう、皆のおかげで聖力満タンになったよ」
すると6班の皆も4班の皆も、それぞれ嬉しそうに微笑んだ。
ああ、俺と皆の愛が今、一巡りして、ひとまわり大きく育った。
そんな感触に、俺まで嬉しくなる。
愛って不思議だな。
ひとりひとり、いろんな色や形があって、それぞれ伝え方も重さも大きさも全然違う。
誰もが持っていて、でも誰一人として同じじゃない。
この力は、一体どこから生まれてきたんだろう。
「聖女様、この先はどちらに行きますか?」
冷静なリンの声に、俺は横道に逸れそうだった思考を慌てて現実に戻し、指示を出す。
「2班はこの先左に!」
はいっと元気に答えた2班の皆がチラと振り返って、次に聖力が減った時にはぜひ自分達にも愛を告げさせてほしいと言ってくる。
うっ、やっぱり2班にも聞こえてたかぁ……。
恥ずかしさについまた頬が熱くなる。
でも、2班の皆の気持ちはとても嬉しい。
「ありがとう、これから浄化も加護も使うから、後でお願いさせてね」
申し出をありがたく受け入れた俺の言葉に、2班の皆が揃って答える。
「「「はいっ!!」」」
元気の良すぎる返事に、それだけで胸がぽかぽかしてしまう。
騎士の皆に愛してもらえて、俺は幸せ者だな……。
優しい皆を、なんとしても瘴気や魔物から守り抜きたい。
俺は、少しでも戦力を上げるべく満タンになった聖力で全員の剣に聖属性を付与する。
「もうすぐ教会だよ! 教会前に魔物が溜まってるから、気をつけて!」
俺の言葉に、皆が返事を返してくれる。
「戦闘に入ったら、2班を先頭に後方左側を4班、後方右側を6班で、三角形になって慎重に進むよ!」
そうして、俺達はなるべく魔物に遭遇しないルートで素早く教会にたどり着いた。
見えてきた教会の前には、まるで墨を落としたような闇色の塊がいくつも蠢いている。
やはり魔物が多いな……。
2、4、6班が俺の指示通りに陣形を組むと、俺とリンはその中央に陣取った。
「右から来るよ、6班、落ち着いてね。ヒアッカは前に出過ぎないように」
皆を落ち着かせるように、意識してゆったりと指示を出す。
あんまり早口で言われたら騎士達も焦るだろうからな。
教会は目の前だし、怪我した人達も向こう側に小さく見えてる。
一気に突っ切ってしまいたい気持ちになるけど、ここで焦って被害を増やすわけにはいかない。
ああでも、幼い子までが見えてしまうと、すぐに駆けつけて穢れを落としてあげたくなるな。
苦しそうに小さな体をさらに縮めている様子に、息が詰まりそうになる。
その隣の子は……幼い体に大きな闇を纏っていて、じっと動かない。
焦るな、焦るな……。
「左から2体! 右からも1体、大きいよ!」
ああダメだ、どうしても焦っちゃうよ。
「リンごめん、戦闘に参加して!」
リンを俺のそばから離すべきじゃないのはわかってるんだけど、今はリンの力を借りたいんだ。
俺の言葉に、リンは躊躇うことなく前に飛び出してくれた。
途端、戦況が一変する。
リンが振るう聖力を纏った剣は、白い光の尾を引いて、一刀毎に確実に魔物を仕留めてゆく。
青い髪と白い光が暗い闇に映えて、見惚れてしまいそうなほど綺麗だ……。
うわぁ……、本当にリンは強いな……。
リンの剣速が速過ぎて、剣が光の帯のような残像を生んでいる。
しかも一撃必殺なので討伐ペースが段違いだ。
リンの活躍のおかげで、みるみる魔物が減ってゆく。
「あと5体だ! 一気に前進するよ! リンは戻ってきて!」
サッと俺の後ろに戻ってきたリンだけど、流石に息を切らしてるな。
俺の後ろでリンが懸命に呼吸を整えている気配を感じる。
「ちょっ、兄さん強過ぎっスよ! 俺の倒す分無くなっちゃったじゃないっスか!」
こちらを恨みがましい顔で振り返るヒアッカに、リンがスッと剣で前を指す。
「まだ残してある」
確かに、ヒアッカ側にもまだ残ってるね。
「気を抜くのは早いよ! 教会の裏側にも魔物が溜まってるからね!?」
俺は騎士達が立ち止まって戦闘に入った隙に、サッと広範囲浄化でもう一度教会裏の魔物の数を探る。
あれ?
ずいぶん減ったな。
そこへ、逆方向から騎士団長の率いる1班が姿を見せた。
なるほど、1班は外周を回って、教会に近い裏門側から村へ入ったのか。
前情報なしで、ここを目指せた騎士団長さんは流石だ。
1班が教会裏の魔物をほとんど倒してくれたようだ。
ああでも隊長さん達の顔色が悪い。
「聖女様! ご無事でなによりです!」
駆け寄ってきてくれる1班の皆さんに、俺も大きな声で伝える。
「1班の皆さんに加護を追加します、集まってください!」
加護を重ねがけして、5人の剣にも聖力を付与する。
ああ、副団長のゼクオールさんに穢れがついてるな。
俺は5人まとめて範囲浄化もかけてから、教会周辺に残る魔物の数と位置を説明する。
「4班と6班はお返ししますね、2班はこのままお借りして、教会で浄化と治癒にあたっていいですか?」
俺の言葉に、団長のヴィクトルさんが困った顔で聞き返す。
「2班だけでいいのですか?」
まだ村では戦闘が続いてるから、ヴィクトルさんとしては3つの班で15人くらいは俺の護衛につけたいんだろう。
聖女が死んでしまえば、巡礼は失敗だ。
でもまだ村の西側には魔物がいっぱいいるし、3班と5班に加えて私兵達も戦ってるみたいだからな……。
「大丈夫です、ディアリンドがいますから」
俺が笑って答えると、ヴィクトルさんも呑み込んでくれて「わかりました、くれぐれもお気をつけて」と言ってくれた。
リンは1人で10人分くらい戦えるよ。
とは流石に言わなかったけど、ちょっと伝わってしまったかな。
護衛騎士達が弱いとは全然思ってないんだけどね。
リンはなんか、おかしいくらい強いんだよな……。
3班と5班と私兵の皆さんにも加護を追加したいので、余裕があれば教会脇に来てくれるようにとヴィクトルさんに伝言を頼むのと、シヴァルの一刀が教会の表側の魔物を倒し切ったのは同時だった。
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