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第4話

暴漢か!?と思って警戒しながら振り返ると、太陽だった。 「Ωがこんな時間に1人で帰るな」 そんな風に言われて、僕は太陽がめちゃくちゃ優しい子だったことを思い出す。 クラス全体の事をちゃんと見ていて、声がけが必要な子には真っ先に声をかける。 そういうところは変わってないなぁとしんみりしつつ、でも、嫌いな奴にまで声を掛けなくていいのに、とも思う。 「平気。僕は抑制剤が効きやすい体質だし、Ωにも見えないし。 だから1人で帰れる、ありがとう」 「いや、悪いけど十分Ωに見える。 家、どっち」 太陽は譲らないという顔で僕を見る。 彼が送ると言っているんだから、まあいいかと思い「こっち」と言って歩き出す。 「あのさ…、なんで転校の事とか、Ωだったこととか言ってくれなかったの?」 道中でそう訊かれて、僕は言葉に詰まる。 だって…、太陽が嫌だって言ったんじゃないか… 「えっと…、なんか恥ずかしくて言えなかった」 苦し紛れにそう言うと、 「せめて連絡先とか、住所とか教えてけよ。 マジでショックだったんだけど」 と言われた。 「ご、ごめん。僕も色々ショックで…、あの時の記憶あまりないから」 と僕は曖昧に笑った。 「それもそっか…」と言ったきり、太陽は無言になった。 お互い黙々と歩く。 僕の家が近くなってきたので「僕の家、あそこ。あの赤い屋根の」と指さす。 「だから、ここで大丈夫だよ」と。 「ああ、前の家とは違う方向なんだ。 親も一緒に?」 僕の家の事、覚えててくれたんだと少しうれしくなる。 父さんも母さんも太陽の事を知っているから、いつか太陽を連れてきたら2人は喜ぶだろう。 「うん。3人で戻って来た。 残念ながら前の家は他の人がいるから戻れなかったんだ」 と僕が言うと、「知ってる」と言われた。 「統和がいなくなってすぐに確認しに行ったし、間違いなんじゃないか、帰ってきてるんじゃないかって何回も見に行ったから」 街灯の明かりだけが頼りだから、太陽の顔はよく見えないけれど、どこか陰のある表情をしているように見えた。 「ご、ごめんね。心配してくれてありがとう」 「また、ああいう集まりに行くの?」 と訊かれる。 「集まり?」 「そう。今日みたいなの」 「あ、合コンの事か。 うーん…、どうだろうね」 と僕は首を傾げる。 Ωだと診断されてから、家族やΩ以外の人との関係は()っていた。 だからあんな風にお話したり、ご飯を食べたりするのは楽しい。 でも、僕がΩとして誰かの伴侶になって、養ってもらうだなんて考えられない。 再度、「行くの?」と訊かれる。 「今日、僕の隣にいたΩの子がいるでしょ? その子にね、僕らみたいな男のΩは若いうちに伴侶を見つけて(めと)ってもらうしか生きていく術がないんだって言われたんだ」 「伴侶…」 「うん。だから、参加してみたんだけどさ、今日あの場にいた誰かに自分の面倒見てもらうだなんて…、考えられなかった」 と、僕は正直な気持ちを吐露した。 こんなこと言われても、太陽には迷惑だろうけれど。 「たい…、園田くんは、恋愛対象は男性Ωなの?」 ちょっと踏み込み過ぎかとも思ったけれど、彼ばかり質問しているので訊いてみた。 「は?」と低い声が聞こえ、僕は調子に乗りすぎたと焦る。 「ご、ごめん。こういうのってタブーだよね。 僕、ここで大丈夫だから、じゃ…」 と、僕が自宅に向かって走り出そうとすると「待って」と手を掴まれる。 「せめて連絡先教えて。 電話番号でも、メッセージアプリでも…、SNSとかでもいいから」 と必死そうに言われる。 そんな顔しなくても、教えるのに… そう思いつつ「じゃあ、メッセージアプリでいい?」と言って僕のQRコードを差し出す。 「うん」と彼は急いで携帯を取り出し、それを読み込む。 僕のアカウントにつながったのか「ありがとう」と言って携帯を仕舞った。 「ぼ、僕のほうこそ送ってくれてありがとう。 じゃあ、また」 と僕が言うと彼は少し黙った後に「うん、また」と言って手を離した。 離れていく手が少し名残惜しい気がして、僕はそんな気持ちに蓋をするべく、家に駆けこんだ。 本当にあり得ない再開だった… お風呂に入って、布団に入った後も、なんだか目が冴えてしまって眠れなかった。

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