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第5話
翌日、寝不足のまま一限目の授業に行くと、先にいつもの場所に座っていた遊馬が驚いた顔をする。
「えっ、なんか顔色悪くない?」
「ちょっと寝不足なだけだよ。
そういえば、昨日の先輩とはどうだったの?」
「あ!そうだ!聞いて欲しかったんだ~」
と、遊馬が活き活きと語りだそうとしたところで、教授がやってきたので「次の空きコマの時に話すね」とトークを中断した。
この真面目さも遊馬の良いところだ。
構内のベンチで遊馬と話す。
「先輩ね、βだったんだけど、すっごく優しくてさぁ…
ヤったからには責任取るって言ってくれて、付き合うことになった」
「へ、へぇ…、おめでとう」
ヤるだの付き合うだの以前にΩ以外との交流がなかった僕には、遊馬の言っていることが全然理解できずに上手い回答ができなかった。
普通のΩってそんな速度で付き合うものなの…?
「ありがと。
なんかスパダリってαだけだと思ってたけど、βも素敵かも~」
なんてうっとりと言う遊馬を見ていると、本当に「おめでとう」以外の言葉が思い浮かばない。
βの先輩方は、遊馬も初対面だって言っていたような気がするけど…、展開早すぎない?
僕が真面目過ぎるだけ?
なんて困惑していると、携帯が震えた。
僕の携帯が通知音を鳴らすことは珍しい。
確認すると、太陽から『今大学?』というメッセージが来ていた。
『そうだよ』と送ると、『昼飯食べない?学食でも外でもいいんだけど』と即レスで返ってくる。
お昼…、でも、いつも遊馬と食べているし…
と悩んでいると、「これ、昨日いた子?」と、僕の携帯を覗き込んだ遊馬が訊く。
太陽はフルネームで名前を登録しているのですぐにわかったのだろう。
「うん、幼馴染だった人」と僕が答える。
「お昼、一緒に行けばいいじゃん。
昨日再開して、統和のこといいなって思ったんじゃない?
僕も先輩誘って来ようかな~」
と遊馬がベンチから立ち上がった。
「え?」
それはちょっと困る…
というか、太陽に会うのが少し気まずい。
「また午後の授業で会おうね。
あ、夢中になりすぎて遅刻したらダメだからね」
と、遊馬は手を振って、電話を掛けながらどこかに行ってしまった。
多分、先輩にかけているのだろう。
僕は溜息を吐いて、『午後からも授業だから学食なら』と返信する。
『学食の前の自販機のところで待ってる』と返事が来る。
もう待ってるってこと?
と、急いで学食に向かった。
遠巻きに自販機横に立つ、高身長イケメンを眺める。
「これからお昼ですか?一緒にどうですか?」なんて声を掛けられている。
すっごく可愛い女の子たちに…
モテるだろうなと思ってはいたけれど、この場合はどう声を掛けたらいいんだろう…
急用が出来たって断ろうかな…
なんて、メッセージを打ち始めたところで「統和」と声を掛けられた。
驚いて思わずメッセージを送信してしまう。
太陽に見つかってしまったらしい。
送信取り消しをしたかったが、こちらに向かってくる彼を無視するわけにもいかず「あ、えっと、こんにちは?」と返した。
「ずっと待ってたのに…、声かけてよ」と文句を言われる。
あの人だかりで掛けられるわけないだろ、と思いつつ「ごめん」と言った。
「あれ?統和、メッセージくれてた?
…え?」
携帯の通知に気付いた彼が顔を顰める。
「急用できたの?」
「いや、あの…、あ、送信先を間違えた!」
「他を断って、きてくれたってこと?」
嘘ではないので「うん」と答える。
「そっか。じゃあ行こう」と、心なしか機嫌が良くなった太陽に連れられて学食に向かった。
先に席に座らされ、「何食べる?」と訊かれた。
「え?いや、僕も行くよ」
「ううん。混んでるから統和は席取って待ってて。
どれがいい?」
ともう一度聞かれたので「オムライス」と答える。
「…、今もオムライス好きなんだ?」
そういえば、小中学生の頃、ファミレスに行けば毎回オムライスを頼んでいたことを思い出す。
っていうか、そんな事まだ覚えてるの?!
「よく覚えてるね」
「まあ、統和のことだから。
じゃあ大人しくしててね」と彼はにっこりとほほ笑んでから食券を買いに行った。
お盆を2つ、軽々と持ってきた太陽にお金を渡そうとしたが、「俺が誘ったんだから要らない」と断られる。
それでもお財布に仕舞えずにいると、「じゃあ今度コーヒーでも奢って」と言われた。
それなら…、と僕は渋々お金を仕舞う。
太陽のは唐揚げ定食だった。
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