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第9話

遊馬が「僕たちこの後、午後の授業の前に昼ごはんを食べる予定なんだけど、園田くんもどう?」と訊いた。 どうか断ってくれ…、と思う僕の願いも虚しく、 「…、2人で積もる話もあるんじゃない?いいの?良いなら同席させて」と太陽が言ったため、3人で昼食をとることになった。 「やっぱりΩ2人だけじゃああいうの断れなくて…、 園田くんがいてくれると心強いね~」 と、遊馬はニコニコしている。 3人で学食へ移動すると、相変わらず混んでいた。 「統和は何にする?」と太陽から訊かれ「うどんがいいな」と答える。 「分かった。えっと…」と太陽は遊馬に目を向けて首を傾げた。 遊馬は「え~、覚えてないなんてひどーい。僕は井上遊馬だよ」と頬を膨らませた。 「ごめん。井上くんは何にする?」と太陽が申し訳なさそうに言うと、 「何を頼むか言わなきゃいけないの?」と遊馬が不思議そうな顔をする。 「ああ。学食が混むから、いつも僕が座って待ってて、太陽くんに注文してもらってたんだ」と僕は説明する。 「ふーん?でも、さすがに3人分は持てないでしょ! 僕も一緒に行くよ!」と遊馬は立ち上がった。 正直、僕が「一緒に行く」と言えばよかったと後悔した。 「ごめん。座って待ってるね」としか言えない自分を恨む。 2人が並んで食券を買いに行く。 人を惹きつける見た目の彼らはとても目立っていた。 ぼーっとしていると、近くの席の女の子たちの話が聞こえてきた。 「あれ、園田太陽じゃない?」 「ほんとだ~!」 「最近よく学食にいるよね」 存在が知られているなんて、流石太陽だななんて感心していると気になる話が耳に入る。 「今日隣にいるのってΩだよね」 「まじじゃん」 「園田くんってたしかΩ男性が好きなんだよね」 「そうそう!女子との飲み会は断るのに、田中先輩の男Ωとの合コンだけ参加してるもんね」 聞いちゃいけないと思いつつ、意識はそちらに向く。 僕は息をつめて、会話の続きを聞いた。 「なんかいつも地味な男といたよね」 「でも、今日のはΩ男子じゃない?めちゃ顔可愛いよ?」 「ほんとだ!えー…、なんかお似合いかも」 「あのイケメンが女に盗られたらムカつくけど、男相手ならしょうがないって思うよね~」 「最近、田中先輩のところにも来ていないから、いよいよ本命見つけたんじゃない?案外、もう付き合ってたりして」 「ねぇ~、止めてよ~!失恋したんだけどー!!」 きゃいきゃいはしゃいでいる女の子たちの声に、僕の気分は途端に沈んでいた。 太陽、もうΩの子と付き合ってるのか… 太陽に目をやると、食券を提出し終え、料理待ちのためかお盆をもったまま遊馬と談笑していた。 本当にお似合い… 遊馬には彼氏がいるから、太陽の本命は彼じゃないと思う。 でも、太陽に恋人がいないわけがない。 胸がじくじくと痛む。 戻って来た太陽にお礼を言って、お盆を受け取る。 僕は財布を取り出した。 なんだかんだ、太陽は僕とお昼を食べた時はお金を受け取ってくれなかった。 珈琲でも奢って、という約束だったけれど、デートだってほとんどが割り勘でたまに太陽が奢ってくれた。 こういうの、恋人からしたら絶対面白くないよね。 僕は「ごめん、今日の分だけだけど」と千円札を差し出した。 「え?何?要らないよ」と、太陽はいつもの如く断ろうとするけれど、 「僕の気が済まないから」となんとかお金を押し付けた。 「…、いいのに」と、まだ納得していない様子の太陽が自分の財布に渋々お金を入れている。 「ふ~ん、なるほどね」 と、遊馬だけは何か知っているかのように呟いた。 それから食べた食事は、気まずすぎて味が分からなかった。 太陽は何も話さないし、僕も何も言えなくて、遊馬の話に相槌を打つだけになってしまった。 遊馬がいなかったらとんでもない空気になっていたはずだから、彼がいてくれて助かった。 やっぱり…、感じ悪かったかなと反省はしたけれど、太陽の恋人からしたら、何でもないΩに自分の恋人が毎昼食奢っているだなんて気分が悪いもん。 今後も、自分の分は自分で払おうと決心した。

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