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第11話

とはいえ、今まで一切恋愛をしてこなかった僕にとって、どうアプローチをするとかの実践的な方法は思い浮かばなかった。 むしろ、太陽といると変に意識してしまって、訳の分からない行動をとってしまう。 不意に「あ、危ないよ」と彼が後ろから来た自転車から守るために、僕に肩を回して引き寄せてくれた。 いつもなら「ごめん!ありがとう!」と照れながらも普通にできていたのに、こないだは「ひゃ!??」と奇声を上げて飛び上がった。 せっかく避けてくれたのに、危うく自転車にぶつかりそうになってしまった。 「急にごめん。あまり触れないようにするね」と太陽が悲しそうに微笑んだで、僕は「急にじゃなかったら大丈夫だから!!」とよく分からない返答をした。 それ以降、太陽が「今から触るね」と予告してから頭を撫でたり、肩を組んだりしてくるので、逆に恥ずかしくて耳まで真っ赤になってしまう。 そんな僕を見て、太陽は「可愛い」と言うので、恐らく、アプローチとしては間違っていないみたい。 僕からは何もしてないんだけど。 そうこうしているうちに遊馬がヒート休暇に入った。 僕には彼しか同じ学部の友達がいないので、少々寂しい。 1人で何度か講義を受けていると、3人組の男の子に声を掛けられた。 見たことがあるから、恐らく同じ学部の1年生だろう。 「今日は1人なの?」と、そのうちの1人に訊かれる。 「あ、はい。遊馬は休みです」 以前、カフェテリアで絡まれた記憶があるので、僕は警戒しながら答えた。 「へぇ…、ヒートってやつ?」 「えっと…、そういうのはセンシティブなので、あまり言わない方がいいと思います…」 他人からのヒートに関する質問は、男女で言うところのセクハラに該当する。 「あ、そうなんだ!俺らβだからそういうの詳しくなくて…、気を悪くしたならごめん」 と、思ったよりもすんなりと謝られて、僕は驚いてしまった。 てっきり、揶揄われると思っていた。 僕のほうこそ、偏見を持っていたことを恥じた。 「ううん、心配してくれたんだよね? ありがとう」と僕が言うと彼らは目を見合わせている。 僕、なんか変なこと言った? 烏滸がましい言い方だったかな… と、不安に思っていると「俺ら3人だから1人あぶれることが多くて、よかったら一緒に講義受けない?」と訊かれた。 「え?」 思いがけない誘いに僕は驚く。 「え、でも、皆仲良しなんだよね? 僕がいたら邪魔じゃないかな?」 「全然!むしろむさいところに統和ちゃんがいたら嬉しいよ」 と言われる。 統和”ちゃん”!? 「あ、あの、僕は男ですけど…」 もしかしたら女の子だと思って誘ってくれている?と思った僕はすかさず訂正したが 「さすがに知ってるよ」と笑われた。 「じゃあ俺が統和ちゃんの隣ね」と一番口数の多い男子が言った。 「はぁ!?」「じゃんけんだろ!!」と他の2人が抗議したが 「俺が声かけなきゃ何もできなかっただろ」と一蹴された。 口数の多い彼は秦野(はたの)くんと言う名前で、すごく博識だった。 授業中も、教授が言うことに脚注を入れてくれた。 それが分かりやすくて面白かったので、抗議終わりに「どうして秦野くんはそんなに賢いの?」と思わず訊いてしまった。 「俺の親父がこの分野で大学教授してるんだ」 「すごいね!じゃあ秦野くんも?」 と僕が訊くと、彼は「いや」と言って眉を下げて首を横に振った。 「俺にはαの兄貴がいてさ、くっそ優秀なの。 この分野で博士号取ってる。 しかもT大の院卒。敵うわけない」 と悲しそうに笑った。 「そうなんだ…。 でもさ、僕みたいなちんぷんかんぷんな人に教えるのが上手だから高校とか中学の先生とか向いてそうだよね。 あ!失礼だったらごめん…」 話してる途中で、彼が目を見開いたので、僕は自分が見当違いな事を言っているかもしれないと思い謝った。 「失礼なんかじゃないよ。 統和ちゃんはすごいね。 そうか…、高校教師かぁ~」と秦野くんは笑った。 「統和ちゃんに話して良かった」と言われ、僕は照れる。 そんな風に言われたことなかった。 「おーい、いつまで2人の世界やってんの」 「次の講義は隣替われよ」と、前の方に座っていた2人が僕たちのところまでやってきた。

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