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第12話

「あ、統和ちゃんは昼飯どうするの?」と秦野くんに訊かれる。 お昼は太陽と約束していたので「ごめん。幼馴染の子と約束してるんだ」と断る。 「統和ちゃんの幼馴染!?見たい!」と言われたけれど、僕は太陽と2人きりで会いたかった。 それに、もしかしたらΩだと思って期待されている可能性もある。 「幼馴染と言っても、彼はαだよ」 「え…、α!?か、彼氏だったり…?」と訊かれて僕は慌てて首を振った。 「ち、違うよ!!幼馴染!!」 遊馬も言った通り、噂と言うのは厄介だ。 絶対に違うと言い切っておく。 「そっか。待ち合わせは学食?」と訊かれたので頷いたところ、学食まで一緒に向かうことになった。 学食の一角だけ、やたら騒がしい部分がある。 大抵そこの中心にいるのが太陽だ。 「もう幼馴染くんは来てる?」と秦野くんに訊かれ、僕は「うん、あそこ」とその場所を指さす。 「え…?なんかすごい人だかりだけど?」 「うん。太陽くんはαだし、かっこいいし優しいからすごくモテるんだ」と僕が笑うと、 秦野くんの友達が「え!?太陽って、あの園田太陽?」と訊く。 どの?と言いたいところだけれど、「たぶんそう」と言う。 秦野くんは「え、なに?有名人?」と首を傾げている。 「まあ、学部違うから秦野は知らないだろうけど、女子の中での人気すげぇんだよ。 どこのサークルもしつこく勧誘したけど、どこにも入らないし、飲み会も全然来ない園田くんだよ」 と、友達が説明してくれた。 「なんで詳しいんだよ」と秦野くんが眉を(ひそ)める。 これには僕も全く同意見だったので、頷く。 「俺だって女の子と遊びたくて色々声かけてんだよ! 皆が口を揃えて『園田くんがいないなら行かない』とか言うから、嫌でも覚えるわ」 と友達も眉を顰めた。 「すごい幼馴染くんだねぇ。 あれ、どうやって呼ぶの?」と秦野くんに訊かれる。 「えっと、着いたら着いたってメッセージ送ってる」 そう言って僕は太陽にアプリからメッセージを送った。 すると、その一団がさらに騒がしくなり、その間から太陽がやってくる。 「統和、お疲れ」と、人好きする笑顔で言う。 「あ、太陽くん。お疲れ様」 と返した僕により一層微笑みかけた後、真顔になって秦野くんたちを見た。 「誰?」 心なしか声が低い気がする。 もしかしたら、前回みたいな厄介な絡まれ方をしていると誤解したのかもしれない! 僕は慌てて「同じ学部の秦野くんたちだよ!遊馬が休みだから、一緒に授業受けてくれたんだ」と説明した。 「へぇ…、統和と仲良くしてくれてありがとう」と、太陽は言うが、目が笑っていない。 「こちらこそ。じゃあ、俺たちはここで。 また午後の授業で会おうね、統和ちゃん」 と、秦野くんは太陽から僕へ視線を移してから手を振って外に向かっていった。 「あ、えっと、待たせてごめんね」と、なんとなく重い空気を払しょくするように言ったが、太陽はまだ去っていく秦野くんたちをじっと見ている。 「あ…、秦野くんたちと一緒が良かった?」 僕がそう言うと、ようやく僕に視線を向けてくれた。 「え?」 「実は、太陽とご飯食べるって言ったら、一緒にどう?って言われたんだけど…、2人が良かったから断っちゃった…ん…だけど…」 言いながら、自分が何を言っているかに気付いてしりすぼみになった。 アプローチするとは決意したけれど、これは結構ストレートに言ってしまっている気がする!! なんとか誤魔化せないかと「い、いや!そういう訳では…」ともにょもにょ言っていると、「そっか」と優しい声がして太陽を見上げる。 「統和は2人が良かったんだね」 と、どこか嬉しそう。 間違ってない!? よ、よかった…、とホッとした途端にお腹が鳴る。 「あ…、ごめん。お腹鳴っちゃった」 恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら言うと、太陽は 「そうだね。じゃあ統和はどこかに座って待ってて」 と、笑いかけてくれた。 いつもの太陽だ。 「今日は何にする?」と訊かれたので 「焼うどん」と答えて、比較的空いている一角に腰を下ろす。 未だに、空気が悪くなる時の起爆剤が分からなくて冷や冷やするんだよね… 昔はそんな風になることはなかったのに。 大人になるって複雑だ…、と思いながら、ちょっと囲まれながら注文をする太陽を眺めた。

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