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第13話

焼うどんが載ったお盆を持ってきた太陽にお礼を言って受け取る。 そして僕はすかさずお金を渡した。 「要らないのに」と太陽は眉を寄せるが、僕は有無を言わさずそれを彼のお盆の横に押し付けた。 あの日以来、自分の分の代金は太陽に押し付けているが、何度やっても彼は不服そうな顔をする。 「そろそろ受け取るの慣れてよ。 誰にでもそうやって奢ってたら、いくら太陽でも破産するよ」 と僕が笑うと、太陽は「誰にでもなんて奢ってない」とさらにムッとする。 僕みたいなただの友達に奢っている時点で、誰にでも、には相当すると思うけどな。 普通、友達には誕生日かお祝い事じゃない限りは奢らないよね? 「太陽の交友関係は知らないけど、僕には奢らなくていいよってこと」 と、僕は言ったが、太陽は依然として眉を寄せて不服そうに僕を見下ろしていた。 その様子が、上手くいかなくて不満げな顔をする子供に見えて、僕はふふっと息を漏らしてしまった。 「なんで笑うの?」と訊かれたので 「子供みたいで可愛かったから」と答えると漸く太陽がほほ笑んだ。 「統和の方が可愛いよ」 あまりに完璧な微笑みと声色だったので、僕はぽーっと彼を見上げたまま固まってしまった。 心なしか、周りに座っていた人も彼に見とれている気がする。 「うどん、冷めちゃうよ?」と彼に言われ、僕は慌てて食事を再開した。 食べ終わり、食器を片付けると、「午後の授業、あの人達と受けるの?」と訊かれる。 秦野くんたちか!と気づいた僕は頷いた。 「さっきはあまり話せなかったし、統和の講義室まで送るついでに挨拶しようかな」 と、太陽が言うので連れだって講義室に向かう。 僕が良くいる講義棟の方に太陽がいるのが新鮮だった。 同じ学部だったら、いつもこうやって一緒にいられるのかな…、なんて。 「秦野くん!」 歩いていると前方に秦野くんたちの背中が見えたので、声をかける。 「あ!統和ちゃ…、んと園田…くん」 先に僕に気付いて手を振りかけた秦野くんの友達が、隣の太陽に気付いて手を下ろした。 「さっきぶり。ちゃんと挨拶できなかったから着いてきた」と、太陽は爽やかに言った。 「あ、ど、どうも」 「これからも、俺の幼馴染をよろしくね」 「も、もちろん」 と、秦野くんの友達と太陽がやり取りをしていたら、 「そんなに警戒しなくても、統和ちゃんに何もしないよ。 変な虫がつかないように俺らが見とくからさ、園田くんは自分の学部で自分の勉強に集中しなよ」 と、秦野くんが言った。 それを聞いた太陽はさらににっこりとして 「それは助かる。 でもまあ、ミイラ取りがミイラになるって諺もあるから」と言った。 僕にはなんの話をしているかよく分からない。 ミイラは一体どこから出てきたんだろう?変な虫? 秦野くんも太陽も笑顔だし、結構気が合うのだろうか? 2人とも頭が良いし、僕と偏差値が20くらい離れてるのかな…、と少し自分が心配になった。 「園田くんも授業があるんじゃない?早く戻れば?」 「俺は午後休みだからお構いなく」 そんなやりとりに、僕は青くなった。 「え!?太陽くん、午後は授業なかったの? ごめん、お昼付き合わせちゃって…」 知らなかったとはいえ申し訳ないと思いつつ、謝ると 「ううん、俺が統和と飯食いたかっただけだから。 授業終わったら教えて?一緒に帰ろう」と言われた。 勿論嬉しいけれど、1時間も待ってもらうのは申し訳ない。 「え、で、でも…」と、僕が渋っていると 「帰りに寄りたい店があるから付き合ってよ」と言われ、それならばと頷いた。 「講義、始まっちゃうから早く行こう」と秦野くんたちに促され、僕は太陽に手を振って講義に向かった。

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