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第14話

「はぁ…、やっぱαってこえぇ…」と、友達の1人が机に突っ伏す。 「噂には聞いていたけど、あの圧は上位だな」ともう1人も頷く。 そんな中、秦野くんだけは「俺は、αもやっぱ人間なんだなって思ったけど」と言った。 「おいおい強がりかぁ?」と2人が揶揄う。 秦野くんは2人を冷めた目で一瞥すると「で?午後の授業は統和ちゃんの隣が良いんだっけ?」と訊く。 友人2人は首を横に振った。 「あんな怖いガーディアンがいたら、どんな絶世の美女でも俺はパス」 「俺も」 と2人が頷きあう。 つまり…、僕の隣は嫌だってことだ。 ショックを受ける。 「ごめんね、僕は全然一人でも大丈夫だから。慣れてるし! 少しの間でも仲間に入れてくれて嬉しかった。じゃあ…」 と、僕が席を立とうとすると、秦野くんが腕を掴んだ。 「俺は、園田なんて全然怖くないから。 統和ちゃんは俺の隣に座ろう?」 でも…、他の2人が迷惑がっているのに、一緒にいるわけにはいかない。 そう思うのに、秦野くんが優しくほほ笑むので、僕はすとんと椅子に腰を下ろした。 「あの…、本当に、僕がお邪魔だったら気にせず、構わなくていいよ?」 そう言ってみたが、 「いや、他の2人も、統和ちゃんとは仲良くなりたいんだよ。 園田太陽が怖いだけ」 と言われた。 太陽が怖い? 誰にでも優しくて、周りが見えて、僕のような愚鈍な友達にも手を差し伸べる彼が? 秦野くんが言う太陽と、僕が思う太陽の印象が違い過ぎてピンとこない。 「園田ってさ、めちゃくちゃ独占欲強いんだな。 αなのに全然余裕なくて、むしろホッとしたわ。 統和ちゃん、相当気に入られてんね」 と秦野くんに言われ、僕は首を横に振った。 「違うよ!太陽くんのはそういうのじゃないよ! ただ、幼馴染だから放っておけないだけで…、本当にただそれだけだよ!」 まるで、僕の事を好きみたいな言い方をされて慌てて否定する。 そんな変な噂がたったら、太陽が可哀想だ。 「あー…、なるほどね。 そりゃ園田も必死になるか…」と、秦野くんは苦笑している。 「え、えっと…?」 僕は何を言われているか分からなかったけれど、 秦野くんは「ううん。こっちの話だよ」と首を振るので、僕は口を噤む。 すぐに授業が始まり、また秦野くんの解説を聞いているうちにこの話題の事は忘れてしまった。 授業後も少しだけ秦野くんの話を聞いていると、携帯が震えた。 着信…、太陽からだ。 「授業終わったよね?」 「うん」 「まだ教室にいるの?」 「あ…、えっと」と僕が太陽の質問にもたついていると、秦野くんが「ごめんね」と僕の手から携帯を抜き取った。 「さっきはどうも。 今、授業の復習してるから。 そう、教室。…、どうぞご勝手に」 秦野くんが短くやり取りをした後に、「ごめん、切れちゃった」と携帯を僕に返した。 一体どんなやり取りをしていたのか、僕には太陽の声は聞こえなかった。 「園田くん、ここに来るって」と秦野くんが2人に声をかけると、2人は「えっ!?ごめん、統和ちゃん!また今度!」とそそくさと教室を出た。 「俺を置いていくなよな」と秦野くんは笑った後、「俺も命が惜しいし、帰ろうかな。すぐに園田くんが来ると思うから、ここで待ってて。また明日」と2人を追うように席を立った。 僕がポカンとしていると、すぐに「統和!」と呼ぶ声がした。 聞き慣れた声に振り向くと、太陽が息を切らせて教室の入り口に立っていた。 「太陽くん!」と僕は立ち上がり、荷物を持って彼のもとに向かう。 「ごめん、待っててくれたの? しかも教室まで来てもらっちゃって…、ごめんね」 「いや、それは別にいいし、今度からも良ければ教室まで迎えに行くけど」 と言われたので「それは悪いし、前みたいに中庭集合でいいよ」と返す。 「で、電話の相手は?」と彼は教室を見渡す。 僕以外の生徒はほとんど残っていなかった。 「秦野くんの事?さっき帰ったよ」 と僕が言うと、彼は舌打ちをした後に「あまりあいつと仲良くしないでほしい」と言った。 「えっ?で、でも、秦野くんはすごく良い人だよ? 遊馬以外で初めての友達で…」 秦野くんと仲良くしないとなると、僕はまた遊馬のヒート休暇が来れば孤独になる。 すぐに「分かった」とは言えず、口籠ってしまう。 太陽はそんな僕をジッと見つめる。 どうしよう…、やっぱり”秦野くんとは仲良くしない”って言うべきだろうか… 僕が沈黙に耐え切れず、口を開こうとしたところで、太陽が溜息を吐いた。 怒らせちゃったかと思って「ごめんなさい」と謝ると、彼は僕の頭を撫でた。 「俺のほうこそごめん。 統和の交友関係を邪魔するだなんて最低だね」 そう穏やかに言われて、僕は「太陽くんは最低じゃないよ!」と返したけれど、「ううん。俺が悪いよ」と譲らなかった。 「帰ろう?寄り道で駅前のカフェ行かない?」 と誘われて、僕は思いっきり頷く。 まだ太陽と一緒にいられると思うと嬉しくなってしまう。 僕は跳ねるように太陽と大学を出た。

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