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第15話
遊馬が戻り、秦野くんたちを紹介した。
遊馬は最初は訝 しんでいたけれど、秦野くんの授業解説や学科の話を聞いて、かなり感心していた。
「こんな優秀なβが同じ学科にいたなんて!」と感動までしていた。
遊馬とも秦野くんとも仲良くしたい僕にとって、2人の性格がかみ合ったことが嬉しかった。
いつもの様に大学の帰りに太陽と歩いて帰っていると、太陽から「実は、経験として来月からバイトとサークルを始めようかと思ってるんだ」と告げられた。
僕はどちらもするつもりがないので、凄いなぁと感心する。
まあ、バイトもサークルもΩには危ないから推奨はされていないんだけれども。
「だから、今までみたいに統和との時間が作れないと思う」
そう言われて、僕はようやく事の重大さに気付いた。
そりゃそうだ…、このささやかな幸せな時間が無くなるのは悲しい。
けれど、そんなことを言う権限はない。
「そっか…、寂しくなるけど、僕は大丈夫だよ!
太陽くんは忙しくなると思うけれど、無理せず頑張ってね」
そう言って彼を見上げる。
太陽は苦しそうに顔を歪めていた。
「え?えっと…」
どこか痛いのかな?それとも、僕の言葉が気に食わなかったのだろうか?
と、僕が内心困っていると、手を握られた。
僕は思わず立ち止まる。
「俺ばっかり寂しがってるみたいで悲しいんだけど」
今まで歩いてて手を握られたことなんてないから、鼓動が加速している。
切なそうな太陽の顔も相まって、胸が苦しい。
「さ、寂しいよ、僕も…、でも…」
でも、僕に太陽の行動を制限する権限はない。
「だから、サークルは一緒に入ろうって言おうと思ったのに」
太陽のその言葉に僕は目を見開く。
僕と太陽が同じサークルで活動する姿を想像して、胸が高鳴る。
でも、僕はそんな幸せな想像を慌てて打ち消した。
「それはすごく素敵だけれど、僕はΩだし、サークルに入るのってあまり推奨されてないから…」
これは入学してすぐに説明されたことだ。
サークルともなると、合宿や宿泊があるし、先生がいない活動が多い。
そこにΩがいたら、事故が起こる可能性が高い。
「もちろん、俺が守るよ。
統和に誰も、指一本も触れさせない。
だから、俺と一緒のサークルに入ってほしい」
「でも…」
「お願い」
ぎゅっとつないだ手に力を込められる。
太陽の手って、こんなに温かかったんだ、とか、すごく大きいな、とか…
色んな感情が沸き上がってきて苦しい。
手を離そうとしたら、もっと強く握りこまれてしまった。
「だめ?」
そんな捨てられた子犬みたいな目で見られたら…
「分かった…」って言うしかないじゃん!
僕の回答に太陽は「やった。ありがとう」と満面の笑みになった。
僕はそんな表情にも胸を苦しめられる。
ぎゅんぎゅん煩い胸に蓋をしながら、「合わなそうだったらすぐ辞めるね」と言う。
「勿論。そのときは俺も辞めるよ」
そう当たり前のように言われて、僕は「い、いや、太陽くんは辞めなくても良いと思うけど」と言ったが、
「統和がいないならサークルなんて入る意味ないから」
そう言って彼は、手を繋いだまま歩き出すので、僕も並んで歩き始める。
「手…、あの…」
流石に恥ずかしいから離してほしいんだけれど…
「俺と繋ぐの嫌?」
そう悲しそうに訊かれてしまい、僕は頷けなかった。
「嫌ではないけど…、恥ずかしいし…」
それに恋人でもないのに、という文言は飲み込んだ。
「恥ずかしいんだ…、可愛いね」
そう言われてほほ笑まれると、僕には顔を真っ赤にして俯くくらいしかできない。
最近の太陽はずっとこんな感じで…、僕は弄ばれている気持ちになる。
彼は誰にでもこんな風に接しているのだろうか…
まさか僕にだけこうってことはないだろうから、きっとそうなんだろう。
モテる男と言うのは恐ろしい。
僕は勘違いしないように自分に言い聞かせた。
「明日、一緒に見学に行って、統和が入りたいところに入ろう?」
「え?太陽くんが入りたいところでいいよ」
「ううん。統和が続けたいところじゃなきゃ意味がないから」
そう押し切られて、僕は「それなら、そうするけど」と頷く。
「いいところあるといいね」と微笑まれ、僕の気持ちはたちまちに浮上する。
サークル、諦めていたけれど入れるなら嬉しい。
太陽も同じところに入るみたいだし。
家に帰った僕は、すぐに自分の大学のHPからサークルを検索して、吟味しておいた。
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