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第19話

僕はジフ会こと、自然に触れる同好会を気に入り、「このサークルに入りたい」と太陽に言った。 太陽は「草間さんが…」と少々渋っていたけれど、僕からの強い押しと、古谷先輩からの「今年1年生、誰も入部してくれないの、助けてぇ」という泣きつきで、折れてくれた。 太陽はバイトを2日おきに入れたらしいので、「俺が参加できるときしか参加しちゃダメ」という約束の下、入部が決定した。 サークルって憧れてた。 オメガだからって諦めていたけれど、太陽のおかげで経験することが出来て僕は嬉しかった。 元々、取っている授業も違うから、朝は一緒に通学していても帰りは会えない日もあったけれど、バイトが始まってからは授業後はほとんどサークルでしか会えていない。 土日のバイトはかき入れ時だからと、休日に会う回数も減ってしまった。 そんな中、三連休を利用してグランピングをしようという提案がジフ会の中で起こった。 少しだけ山を登る必要があるけれど、宿泊の荷物だけ持っていけば楽にキャンプができる施設に行くらしい。 「出欠は、来週まで古谷に連絡してね」と先輩に声を掛けられた。 翌朝の通学時、太陽に「グランピング、行く?」と訊いた。 「んー…、統和は?行きたい?」 「うん。行きたい」 僕がそう答えると、太陽は「うーん…」と唸る。 太陽は行きたくないのだろうか… 太陽が行かないのなら、僕はサークルの活動に参加しないという約束だ。 「じゃあ行こうか。 絶対に俺のそばを離れないって約束できる?」 「う、うん」 そう答えたけど、なんだか子ども扱いをされている気分。 同い年なのに。 僕がΩなのが悪いんだけども。 そんな僕の表情を察してか、太陽が「ごめんね。心配なんだ」と言った。 「ううん、僕のほうこそごめん。 太陽くんを縛り付けちゃってるよね」 「それは違う。俺がやりたくてやってるから。 でも、どれだけ統和にお願いされてもこの条件(太陽のそばを離れない)は変えられない」 「ううん。僕のほうこそ助かってるから。 太陽くんがいなかったら、僕はサークルに参加することすらできなかったと思うもん」 「そっか。楽しみだね」 そう微笑まれて、僕も笑顔で頷く。 誰かとお泊りができるなんて夢みたいだもん。 縛り付けてしまって、太陽には申し訳なく思うけれど、当日は存分に楽しもう。 それから、なんでか”園田太陽がジフ会に入った”という噂が流れ、ジフ会の会員がぐんと増えた。 古谷先輩は「部員増えた~!園田くんありがとう!!」と喜んでいたけれど、僕としてはあまり面白くない。 ただでさえ減ってしまった太陽との時間が、太陽目的で入会してきた人のせいでさらに減る。 「園田くん。今日の散歩、隣で歩いても良いかな?」 なんて、照れながら訊いてくる子を見ると、胸が苦しくなる。 太陽は「えっと…」と困った顔をするので僕は「じゃあ僕は古谷先輩と歩くから」とそばを離れる。 太陽は何か言いたげな顔をしたけれど、「じゃあ行こう?」と可愛らしく小首を傾げる女の子に着いて行った。 こうやって太陽に近づいてくる子の中に、彼の番はいるのだろうか… αは、Ω以外とも付き合って結婚することができる性。 だから、番にはなれなくても、将来お嫁さんになる子がいるかもしれない。 最近は、サークルだなんだと忙しくて忘れていたけれど、確か太陽には好きな人がいたはず。 その子もここに入ってきたりするんだろうか。 僕は痛む胸を抑えながら、古谷先輩の方へ向かう。 けど、彼女は既に草間さんとお話していた。 2人の間に入り込むのは野暮だろう。 どうしようかと視線を走らせると、1人でいる人を発見した。 普段は結構人見知りだけれど、いつまでも太陽頼みはよくないと思い、「あのっ」と声を掛けた。 「なあに?」と、言葉は少ないけれど優しい声色で返ってきてホッとする。 「あの…、一緒にいてもいいですか?」 緊張して少し声が上ずった。 恥ずかしい… 彼はポカンとした顔をした後、「いいよ。こちらこそよろしくね」と微笑んだ。 優しそうな人で良かった。 先頭を歩く草間さんと古谷さんに続いて、ジフ会の面々が外を歩く。 今日は特にどこに行くとかなく、町の中を散策するらしい。 これがサークル活動というのだから相当緩い。 太陽が他の人と仲良さげにしているのを見るのが嫌だったので、僕は太陽よりも前を歩いた。 僕が声を掛けた男の人は、萩原(はぎわら)という名前で1つ上の先輩らしい。 先輩に馴れ馴れしく声をかけてしまって申し訳ない。 それでそう謝ると、「これだけ緩いサークルなんだから上下関係とか気にしなくていいよ」と笑ってくれた。 萩原さんは、滅多にジフ会には参加しないらしい。 よく参加している会員(僕も知っている人だった)に無理やり参加させられたものの、虫が苦手過ぎて山登りや草むらの散策には参加できないらしい。 「退会しないんですか?」と僕が訊くと 「うーん。参加しなくても怒られないし、抜けるための手続きの方が面倒で」と苦笑いしていた。 優しい雰囲気だと思ったけれど、優柔不断というか、ことなかれ主義なのかもしれないと思った。

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