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第23話
それから軽く自己紹介があり、レクリエーションをした。
その間、太陽はずっと僕の隣から離れなかった。
参加者が20人くらいいたため、炊事は5~6人ずつの4班で班分けすることになった。
古谷先輩が「くじ引きとか面倒だからテキトーに班組んでみて」と言い、主に太陽関連で揉め事はあったものの無事に班が決まった。
僕たちは、僕と太陽と古谷先輩に草間さん、そして古谷先輩の友人の吉野さんだ。
萩原さんは探したけれどいなくて、「あれ…、萩原さんは来てないのかな」とぼやいたら、いつの間にか隣にいた古谷先輩に「草間が去年毛虫を投げたつけたせいで山のイベントには来ないんだよ」と教えてくれた。
…、ジフ会のリーダーは草間さんで本当にいいのだろうか?
僕は家での時間を持て余しているので日々、お母さんの夕飯の支度を手伝っている。
その甲斐もあって、カレー作りにはかなり貢献できたと思う。
グランピングの献立は、飯盒炊爨とカレーにサラダだ。
そこに、お酒を飲む2~4年生はそれぞれおつまみを持ち込んでいる。
カレーの鍋をかき混ぜていると、太陽が「統和が奥さんだったら幸せだろうね」と言った。
「え?」
驚いて声が裏返った。
「こんなに美味しいご飯を作ってもらえるなんて幸せでしょ」
と太陽が微笑む。
「え、えっと…、どうだろう?
僕より上手な人は沢山いると思うし…、料理だけで結婚してくれる人なんているかなぁ」
照れくさくなってそう言うと、太陽が真剣な顔で口を開く。
が、何か言いかけたところで悲鳴が上がった。
そちらに目を向けると、草間さんが食用のコオロギを飯盒に入れようとしているところだった。
吉野さんが悲鳴を上げ、古谷先輩が止めようとしている。
が、草間さんは細身とは言えα男性。
古谷先輩が劣勢だった。
「…、ちょっと止めてくるね」と、騒動が起きている場所を遠い目で眺めた太陽が言う。
「うん…、それが良いと思う」
僕がそう言うなり、彼はそっちに走っていき、草間さんからコオロギの袋を取り上げた。
なんとかコオロギの炊き込みご飯は回避できたらしい。
「こんなに小さいのにとっても栄養があるんだ。
それなのになぜ食べないのか。全く、人類は愚かだ」
5人でカレーを囲んでいる中、草間さんだけがコオロギを箸で摘まみ、眺めては美味しそうに食している。
食事の席は自由だけれど、このテーブルに座ると草間さんが虫を食べさせようとしてくるので他の班の人は近寄らない。
吉野さんはコオロギを直視できないのか、ずっと下を向いたままカレーを食べている。
「ジフ会は食虫研究会じゃないんだから、気分が悪くなる人がいるのは当たり前でしょ。
ちゃんと仕舞いなさい」と古谷先輩が咎めるも
「おつまみの持ち込みは自由というルールだろ」と草間さんは食って掛かる。
虫をおつまみ扱いしているのは草間さんだけだろう…
「コオロギはまだ見れるからいいけど…、デュビアを持ってこられたときは流石に血の気が引いたわ」
古谷先輩は何かを思い出したのか、身震いをして「思い出した、最悪」と呟いた。
「デュビア…?」と僕が訊き返すと、草間さんが「食用の熱帯に生息するゴキ〇リだ」と答えた。
「お、おえ…」
思わずえずいてしまった。
そんなもの、食卓じゃなくても見せられたら具合が悪くなるだろう。
吉野さんも「うぇ」と言いながらスプーンを置いた。
「あ、ごめん。私のせいだ。
本当にごめんね。楽しい話をしよう!!」と古谷先輩が謝る。
僕はとんでもない同好会に入会してしまったのかもしれない…
ご馳走様をする前に、部屋割りを決めることになった。
太陽は僕と2人部屋が良かったそうだけど、グランピングの施設は2人部屋を割り当てれるほど部屋数はない。
男性は6人くらいなので同じ部屋に雑魚寝。
女性は3分割して部屋を割り当てた。
ベッドもないので、皆で布団を敷く。
僕、太陽、先輩、先輩、先輩、草間さんの順で寝ることになった。
僕は1年生だし、「端っこ譲りますよ!」と言ったけれど、太陽が「統和はΩだから」と主張した。
先輩方も優しい人達で「全然気にしなくていいから、端で寝て」と言ってくれた。
施設には風呂場もあり、洗い場が3つくらいしかないとのことで、2人ずつ入ることにした。
当然僕は太陽となんだけれど…、恥ずかしすぎる!!!
「1人じゃダメ?」と訊いたけれど「何があるか分からないから」と断られた。
僕としては、太陽と2人で全裸のほうが何かありそうな気がするんだけど…
と、考えたところで、太陽からしたら僕はただの幼馴染の男友達だから、何にも意識してないのかもと納得した。
僕だけ過剰に反応してて恥ずかしい…
でも、意識しないようにしようと思うたびに、僕の緊張は高まっていった。
どうか…、僕の下半身が反応しませんようにと祈るしかない。
ジフ会のメンバーは共有スペースで男女混合で飲んでいたけれど、僕は心の準備が必要なので「部屋で休んでるね」と太陽に声を掛けた。
でも、太陽は「それなら俺も部屋に行くよ」と着いてきた。
「僕の事は気にしないで、太陽は皆と談笑してていいよ」
と言ったけれど、決して彼は首を縦に振らなかったので諦めた。
彼と2人で部屋に行き、布団の上で今日の思い出を語る。
そんなひとときが楽しくて、少しだけ緊張は和らいだ。
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