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第25話
柔らかい感触とドアップの太陽の顔。
目を見開いて固まっていると、ゆっくりと離れて行った。
そして目が合う。
彼は気まずそうに「ごめん」と言って僕から目を反らした。
ごめんとは…?と思いつつも、僕は彼とキスをしたということに改めて気づいて、赤面していた。
「な、なんで…?」
という僕の問いには答えず、彼は
「顔真っ赤だよ?のぼせたんじゃない?
先に上がっていいよ」
と矢継ぎ早に言った。
で、でも、後片付けもあるし、このまま彼をおいて戻ったら今の事が有耶無耶になってしまうんじゃ…
そう思って、僕も片付けるよと言おうとしたけど、彼が先に口を開く。
「ごめん。本当に…、その、間違えたんだ。だから先に戻っててほしい」と両手で顔を覆って言った。辛そうに。
なんで?って思ったけれど、理由は間違いってことか…
間違えたって、何を?誰と?
僕と好きな人とを間違えたってことだろうか。
ズキリと胸が痛む。
苦しくて涙が出そうだった。
「分かった。先に戻るね。
片付け、よろしくね」
涙を隠すように、僕はあわただしく浴室を後にした。
脱衣所で体を拭いていると、涙がこぼれた。
僕なんかと好きな人を間違えるってことは、その人とうまくいってないってことなんだろうか?
キスをした瞬間、盛り上がっていた気持ちが急速にしぼんでいくのを感じる。
あの一瞬だけは幸せだった。
だから…、上手くいっていないのなら、僕を代わりにすればいいのに。
間違えるくらいなら、僕を使ってくれていいのに。
そんな気持ちになったけれど、辛そうに顔を覆っている太陽を思い出して、自分に辟易した。
僕なんかが代わりになれるわけがない。
こんな気持ちになるならキスの感触なんか知らないままが良かった。
寝間着に着替え、髪をさっと乾かして、仕上げにタオルを顔にぎゅっと押し当ててまだ少し滲んでいる涙を吸わせる。
皆に心配されちゃうから、もう泣かないぞと気合を入れて部屋に戻った。
時刻は22時を過ぎていたけれど、皆の宴はまだまだ終わらないようで、寝室には誰もいなかった。
逆に良かったのかも。
一番先に戻るとしたら太陽だ。
でも、彼と2人きりで顔を合わせるのは気まずい。
若干早すぎるような気もしたけれど、僕は布団に入って固く目を閉じた。
眠れるわけがないんだけど。
少しして、ゆっくりとドアが開く音がした。
「統和?寝てる?」
太陽の声だ。
僕は少し悩んだけれど、寝たふりをすることにした。
僕は太陽と顔を合わせたくないので、壁側を向いて太陽や先輩の方に背を向ける形で寝転んでいた。
背中越しに太陽が近づいてくる気配がする。
彼はすぐ後ろに座り込み、不意に僕の頭を撫でた。
危うく、体がビクっとしてしまうところだった。
上手く無反応を装えた自分をほめたい。
数度、その手は僕の頭を撫でた。
まるで愛おしむかのように。
「ごめん…」
再び吐かれたその言葉。
掠れた太陽の声に、胸がギュッとなる。
それは…、一体誰に謝ってるの?
僕?それとも…、好きな人に?
そんな人やめて、僕を好きになればいいのに…
なんて…、彼に僕みたいなのが釣り合うわけない。
僕はそっと唇を噛みしめる。
少しして、太陽の手が離れた。
タオルや着替えを仕舞っているのだろう。
ごそごそという音と、部屋の中を少し歩き回る気配がした。
しばらくして僕のすぐ後ろの布団に入り込む音がした。
太陽は今、どんな顔をしているのだろう。
振り向いて表情を確かめられればいいのに。
そんなことは出来ないので、諦めて目を閉じてジッとする。
そうしているうちにいつの間にか眠ってしまった。
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