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第26話
翌朝、やけに暑くて目を覚ますと僕の体に誰かが腕を回していた。
一瞬パニックになりかけるが、グランピングに来ていたことを思い出し、匂いから後ろで僕を抱きしめている人が太陽だと気づく。
え、えっと…、どういう状況?
同室の誰かのいびきや寝息も聞こえる。
大騒ぎするのは悪いかと思い、そっと太陽を起こそうと身を捩った。
が、強い力で抱きしめられ、僕は動きを封じられてしまう。
「と…、わ」
という太陽の声が聞こえ、思わず身を強張らせる。
僕の名前…、呼んだ?
次の瞬間、項 に生暖かい感触がして僕は思わず「ひっ」と声を漏らして、全身を縮こまらせた。
時折、リップ音を立てて吸いながら、彼の舌が僕の項を撫でる。
Ωにとって項は急所であり、性感帯でもある。
僕は必死に口を手で塞いで声を我慢した。
な、なんで太陽が僕の項を…?
寝ぼけてる?
そうだとしたらとてつもなく寝穢 い。
2人部屋だったら大声でも出して太陽を起こすのに…、他に先輩たちもいる。
暫 く耐えていると、舐めていたのが強く吸ったり、軽く噛んだりする動きに変わった。
それに合わせて、僕の息も上がる。
これ以上されたら、ヒートになってしまう。
そんなヤバさを感じて、力の入らない体でなんとか抵抗する。
が、やっぱり力の差は歴然で、まったく止めることが出来ない。
次第に彼の腕が、僕の服の中に侵入し、体を弄 り始めた。
本当にこれ以上はヤバイ!発情してしまう!
その時、奇跡的にその手が僕の顔までやってきたので、思いっきり噛んだ。
「いてっ」と声を発し、彼の動きが止まった。
僕は力の入らない、息も絶え絶えの体に鞭を打って、太陽の方に振り返る。
「項、噛んじゃ…、ダメ…」
途切れ途切れだけど、何とか口に出した。
彼は呆然と僕の顔を凝視している。
まだ寝ぼけているのかと思って、「太陽…、くん?」と声をかける。
と、彼は「は…」と息を漏らしたかと思ったら、鼻から大量の鮮血を噴き出した。
「えっ!?ええええ!!!?血!!!?
太陽くん、大丈夫!!?」
せっかく静かに彼を起こしたはずが、僕の大騒ぎのせいで同室の先輩たちが起き上がった。
「なんだなんだ」とこちらに来て、太陽の鼻血を見て、皆大騒ぎをする。
僕は慌ててティッシュを掴んで彼の鼻に当てる。
「太陽くん、鼻摘まんで」
彼は言われるがままに止血のポーズをとる。
その間にタオルなんかで噴き出た血を片付ける。
騒ぎを聞きつけた女性の先輩もやってきて、氷嚢だ濡れたタオルだと、色々手伝ってくれた。
今日は午前中だけグランピング施設近くの雑木林を散策予定で、その後はバスで帰るというスケジュールだった。
念のため安静にしておく、と言う太陽とともに僕も施設内でゆっくりすることにした。
「統和、楽しみにしてたのに本当にごめん」
鼻にティッシュを詰めて、まだ氷嚢を頭に当てている太陽が言う。
「ううん。実は虫があんまり得意じゃないから大丈夫。
それに、来年もあるし」
と答えると、彼はうめき声をあげる。
「昨日からずっとダサいところ見せてる」
「そう?太陽くんはずっとかっこいいよ?」
これは本心だ。
かっこ悪いと思ったことなんて一度もない。
「ずっと間違えてるし」
そう呟いた声に、僕の声が詰まる。
「昨日も言ってたけど…、間違えたって、誰と?」
意を決してそう言った。
太陽はポカンとした顔で僕を見ている。
「誰と…って?」
本当に分からないという顔で彼が訊くので
「だから、間違えたって言ってるけどさ、僕と誰を間違えたのかなって話」
と意を決して言い切った。
ちょっとムッとした様な言い方になったのは許してほしい。
2度も間違えるなんて酷いもん。
「いや、誰とって言うか…、その、順番っていうか、段階っていうか…」
思わぬ答えに僕は「順番?」と鸚鵡返しした。
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