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3.
と、その微笑みが突如、口元を手で隠し、くすくすと笑い出した。
「どうした」
「あ、すみません。私が初めて『慶様』と呼んだ時、不意に呼ばれて驚いた顔をしていたのを思い出しまして⋯⋯」
笑うのは失礼だったかと眉を下げた。
顎に手を添え少し考える。
「そんな顔をしていたか」
「ええ、私の記憶違いかもしれませんが」
「いや、私が仕事以外に興味がないだけだ。⋯⋯あ」
「どうされました?」
「愛賀」
「はい」
「可愛いな」
え、という顔をし、固まった。
それから徐々に赤くなっていく頬を両手で隠した。
そうだ。下の名前で呼ばせた時、自分で言わせたのに愛賀が「慶様」と呼んだことにまるで不意打ちを食らったかのように驚き、仕返しというものではないが、「愛賀」と呼び、続けて「可愛い」と言ってみせると今のような反応を見せたのだ。可愛い。
「愛賀」
目線を合わせる。
頬のように赤い唇に「可愛い」の意味を込めて唇を重ねた。
また不意を突かれて硬直していた愛賀だったが、押さえていた手を首に回してきては愛賀からも印をつけてきたのだ。
悪戯心というものに火が着き、またそうしようとした矢先だった。
「⋯⋯⋯」
一旦離れた唇。しかし間髪入れず、一、二度それも食むように口付ける。
愛賀から顔を離した時、にこりと笑った。
「ふふ、慶様も思い出されたのですか? 嬉しいです⋯⋯」
「愛賀⋯⋯」
どちらかでもなく、引き合うように顔を唇を近づけ──⋯⋯。
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