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昼と同じ顔ぶれの夕食は、緊張と混乱で昼食時に増して味がわからなかった。 酒も勧められたが舐める程度に口をつけ、くつろぐこともできずに切り上げさせてもらった。 ジントウイ殿が俺を客室に案内してくれる。 二部屋ある客室のうち、俺が長逗留した馴染みの部屋。そして昼間のあの部屋だ。 すでに勝手に散々使っていたけれど、今日泊まらせてもらう部屋としてきちんと案内されてはいなかった。 部屋に通され、俺はヒグッっと喉を鳴らした。 思わず表の扉を確認してしまったが、やはり同じ部屋。 なのに…乱れまくった跡を俺が簡単に直しただけのベッドが、シーツも替えられ綺麗に整えられていた。 視線だけでジントウイ殿を確認するが、何事もなかったような顔をしている。 「バスルームのしつらえが間に合いませんでしたので、タオルなどは後ほどお持ちいたします」 俺が食事を切り上げるのが思いの外早かったからだろうな。 …そんなことを考え、無理矢理平静を保とうとするが、顔は勝手に赤くなっていく。 バスルームを使った訳だって、ジントウイ殿は了解している……きっと。 「何かご用がありましたら、何なりとお申し付けください」 洗練された所作で頭を下げたジントウイ殿は、美しい笑顔を残して部屋を後にした。 なんだか妙な汗をかいてしまった。 バスルームも確認に行く。 やはり雫一つ残さず綺麗に整えられていた。 きっと整えてくれたのはミンさんだ。 ミンさんは何故シャワーを使ったのか疑問に思っただろうか。 ……まあ、あのベッドの状態で一目瞭然か。 つまり二人にはとっくにバレバレということだ。 バスタブのフチに手をかけしゃがみこむ。 とにかく『恥ずかしい』以外何も出てこない。 しばらくしゃがみこんでいたが、無限地獄のようにいつまでも恥ずかしさから逃れられない。 その時少し馬の匂いがした。 食事前に馬の世話をして、手足はしっかり洗ったが、髪などにも少し匂いがついていたようだ。 恥ずかしさからイヤな汗をかいたせいで、その匂いが立ってきたのか。 せっかくだから、もうこのままシャワーを浴びてしまおう……。 ワシャワシャと頭を洗っても冷静になりきれないが、少しスッキリしてきた。 シャワーを止めて、ふと気づく。 タオルがない。 ジントウイ殿が後で持って来ると言っていたにもかかわらず、俺は何をやっているのか。 とりあえずボタボタと垂れない程度に手で雫をぬぐう。 申し訳ないが、ベルで呼んで早めにタオルを持ってきてもらおう。 鳴らしてすぐに俺はバスルームにこもり、タオルは置いていって貰えばいい。 部屋をなるだけ濡らさぬよう気をつけて、ベッドのサイドテーブルにあるベルを鳴らした。 その途端に扉が開いて、タオルなどを持ったシュウ殿が入ってきた。 ノックと同時に、ベルが鳴ったので入ってきたのだろう。 俺の姿に目を丸くしている。 「あなたは…何をしているのです!」 急いで歩み寄り、そのままタオルで頭を拭いてくれる。 「タオルが無かったので…持ってきてもらおうかと」 「まだ準備が整っていないと伝わってませんでしたか?」 「…聞いたのですが、つい、うっかり」 そう答えながら、シュウ殿の俺に対する気安さにドキドキしていた。 俺を拭いてくれる手つきが優しい。 …というか、拭いてくれるだなんて……。なんだこの状況。 恥ずかしくて逃げ出したいけど、足がすくんで逃げられない。 じっとシュウ殿を見つめる。 その視線に気づいて、シュウ殿が手を止めた。 頭に被せたタオルと別にもう一枚、押し付けるように手渡される。 「風邪をひくといけませんから」 バスローブまで肩にかけてくれた。 至れり尽くせりな状況に、恥ずかしさも忘れて少しウットリとしてしまう。 促されるままベッドに足を片方づつ乗せタオルで拭く。 頭から雫が垂れ、思わずプルリと小さく震えた。 すると、またシュウ殿が拭いてくれる。 俺は拭いてもらいやすいようにベッドに座ってシュウ殿を見上げた。 シュウ殿は馬の世話をし慣れているから、それと同じような気分で俺の世話も焼いてくれているんだろうか。 心地よさに、ついついため息が漏れてしまう。 「きもちいいです……」 子どものような、甘えた声。 いい歳をした大人がみっともない。 きっと顔もだらしないことになってるに違いない。 ふう……と、シュウ殿もため息をついた。 「あなたは、いつもこんなふうにして誘うのですか?」 シュウ殿に意外なことを言われて驚く。 「…いつも…は、こんなじゃないです」 『いつもは』なんてそんな経験もないくせに、ちょっと見栄を張ってしまった。 でも、これは誘ってると解釈されるような状況なんだろうか。 恥ずかしさだけじゃなく、期待に身体が沸き立ってくる。 バスローブをたぐりそっと身体を隠した。 「急にどうしたんです?」 意味ありげな調子で質問をされる。 きっと、シュウ殿に俺の身体の変化を気付かれてしまった。 サッと顔に朱がさす。 そして少し息が弾んだ。 「あなたは……イヤらしい人だ」 そう言って、シュウ殿が俺に口付けた。 イヤらしいという言葉を否定をしたいけど、シュウ殿の唇と舌の感触に溺れ、言葉を発することができない。 求められるまま、舌を絡ませ応える。 これだけで小さく反応していた俺の雄はあっけなく張り詰めてしまう。 バスローブしかつけていない身体がシュウ殿の手で簡単に暴かれる。 そのままベッドに押し付けられて胸元にも口付けられた。 無意識でシュウ殿の胸を押しやれば、両手を絡め取られ、片手で一纏めにされて頭の上に押さえつけられる。 そんなに強い力じゃない。けれど、こうやって押さえつけられるということ自体に興奮する。 「本当にイヤらしい。もう、こんなだ」 そう言って、指で下半身の立ち上がった部分をなぞられた。 「んぁっ!」 思わず身をよじるが、逆に擦り付けることになってしまう。 けれどそれ以上の刺激は与えられず、こちらの様子を伺っているようだった。 「シュウ殿……」 ねだるように名前を呼んでも、 「何ですか?」 と、ただ言葉だけを返される。 でもこんな体勢にされて、期待するなというほうが無理だ。 少しでもシュウ殿にふれられないかと身体をよじる。 特にふれて欲しいところが、あられもなく揺れた。 「シュウ殿、いやです。こんなの恥ずかしい」 「嫌なら手を振りほどいて逃げれば良い。本気で抵抗すれば逃げられるでしょう」 そう言われても、期待しきったこの身体で抵抗なんてできるはずない。 本気で嫌がっていないことなどわかっているクセに、先ほどからシュウ殿が意地悪だ。 「シュウ殿、シュウ殿お願いです。昼間みたいに……」 「昼間みたいに……?」 もったいぶってそう聞き返され、俺の中の何かがパンと弾けてしまった。 力を込め、拘束された腕を振り解くと、覆いかぶさる身体をグッと引き寄せる。 滅茶苦茶に抱きしめて、キスをして、舌を這わした。 「はぁ…シュウ殿……」 足を絡めて腰をすり寄せ、撫でさする。 「あぁ……」 無理やりに服を脱がしながら、ただ本能のままに貪っていた。 そんな俺をシュウ殿がゆっくりと撫でながら見つめている。 「はぁ…ううぅん」 シュウ殿のモノを勝手にさらけ出して、自分のものを擦り付ける。 バカみたいに腰を振って、シュウ殿の感触に夢中になった。 「ああ、シュウどのっ!シュウどのぉっっ…あぁイイっ」 俺は簡単に登りつめてしまっていた。 これ以上はマズい。三分保たずにイッてしまう。 腰を引こうとするが、シュウ殿の手に掴まれてしまっていて離せない。 「あぁっ。ダメです。おれ、すぐに気持ちよくなっちゃうからぁ……」 「自分勝手な人ですね。人の身体を使って自分だけ気持ちよくなるつもりですか?」 そう言われて恥ずかしくなるが、高ぶってしまって冷静な判断は無理だ。 「シュウどのもっ気持ちよくなるように…おれのことすきにしてイイですから、腰を離して……くださひっ」 厚い胸を軽く叩くとパッと腰を解放された。 息を整え、高ぶりすぎてギリギリだった部分を落ち着かせる。 「さて、イチハ殿。どうしてくださるのですか?」 そうだ、気持ちよくすると言ってしまった。そんな知識もスキルもないのに。 けど…こうなったら……。 いや、でもまだ無理だろうか……。 もう俺は、シュウ殿のモノで刺し貫いてもらうことしか考えられなくなっていた。

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