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番外:精霊の夜と王の願い・4

「ァ…はぁっシュウ殿…俺が癒してあげる。俺に甘えて。俺でいっぱい…気持ち良くなって」 肌をなぞる手にビクビクと震え翻弄させられながらも、言葉の上ではあくまで俺が甘やかしているという事にする。 クチュリ…服を脱いだシュウ殿と自分のモノとがこすれ濡れた音が立った。その感触に一人高ぶり限界近くなってしまう。 「ん…ンあ…あっ」 シュウ殿が上に乗る俺の腰を少し浮かせて尻に指を這わせた。 優しくそこを探る。 「いい…もっと好きにしていいから。早くひとつになりたい」 俺の言葉を受けてシュウ殿がすぐに指を差し込んだけど、やはりその動きは慎重だ。 二十日ほど交わりを持てていなかったため、シュウ殿のサイズを受け入れるのにはしっかり馴らしが必要なようだった。 俺はくっと身体を浮かし、後ろ手にシュウ殿のモノを掴んで自分の穴にすり付けた。 ぬめる先端を押し付けるようにしながら自分の穴をほぐしていく。 見下ろしながら、シュウ殿をまるで道具のように使うだなんて、大胆な自分に興奮してしまう。 シュウ殿をまたいで膝をついた状態で、先端だけめり込ませさらに馴染ませる。 「ん…ぁあ…ぁああ……」 ねじ込むように腰を回すと、温かなモノに入り口を撫で押し広げられる感触に頭が沸騰した。 まだ半分も入っていないのに、だらしなく口が開きっぱなしだ。 「今日はまた随分と欲しがりだ」 シュウ殿が俺の腰を支えて、片手で胸の先端をキュッとつまんだ。 「んぁっ…あっ…胸…ぁあっ。もう、ダメだって知ってるくせにっ……」 「好きに甘えていいんだろ?」 「あん…あっ…胸…好き?俺の…貧弱だ」 「好きだよ。薄く慎ましやかなのに敏感で、イチハを淫らに変える小さな果実が赤く色づいてる」 指先で素早く擦るように弾かれるたびに、全身に痺れるような快感が走り抜ける。 ビクビクと身体が跳ねて止まらない。 「ん…ぁっ…あっ…シュウどの…いいよ?たべて……」 「さっきはダメだって言ってたのに?」 「いい…おれ…んぁっっ…壊れるから…シュウどのを甘やかして包むの」 胸を刺激され続け、身体が弾んでシュウ殿のモノが抜けそうになる。それをクッと押し込めば、一気にズルリと奥まで入り込んでしまった。 「あぅ…く…。んぁあっ……ぁあん!」 少し苦しい。けど、身体が弾めばシュウ殿のモノに敏感な部分を刺激され、ジュワンと熱い快感に満たされた。 「はぁ、あっあっ!…いい……んぁ……いいっ!」 胸の刺激に腰をうねらせ、中の気持ちのいい部分をシュウ殿の力強い起立にこすり付ける。 「んぁんん…ぁはぁ…も…。胸ダメです…」 「またダメなのか?」 指先で転がすような胸への刺激はやめずに俺の顔を覗き込む。 「あっ…ぁあっちが…ちがっ…ん…シュウどの…おれ、あたま変になる。イッちゃうから…でも…胸じゃなくてコッチで…して?シュウどののモノでおかしくなりたい………」 「今日は……本当に……。私はイチハを見ているだけでおかしくなりそうだ」 「ぁっあっあっあああああっああっ!」 大きな突き上げを想像していたのに、腰をしっかり掴まれて下から小刻みに揺らされる。 ジュワジュワと熱くなって、あっさりと中でイってしまった。けれどいつまでも快感が与えられ続ける。 「っんんんん…!あっあああ!」 「のぼせたような目をして…イヤらしい顔だ」 「あっあっあああ!あたま…こわれる…こわれる……」 「まだ、壊れてなかったのか?」 「んぁ…まだ…あたま…はんぶん…とんでるだけ……あ、ァあ、きもちいの。きもちぃい」 「そうか」 シュウ殿が嬉しそうに微笑んで優しく頭をなでてくれる。 俺はその上でみっともないくらい必死に腰を上下させていた。 「はぁっ!はぁっ…しゅうどのはきもちいい?おれ…んぁ…なか…すごいの。ぎゅってなって…んっ…あついのっ」 「……気持ちいいよ。それに、すごく嬉しい」 ギュッと抱き込まれて、くるりと上下を入れ替えられた。 攻守交代といったところだろうか。ドクンと期待が高まる。 「シュウどの、潰れるくらいしていいから。おれ、だいじょーぶ」 「イチハの頭が飛んでしまう程度なら問題ないが、抱き潰してしまえば私は誰に甘えればいい?」 首筋をたどる口づけにゾクリと震える。 のけぞる胸を熱くなぞられ、どうしようもなく声が漏れた。 「じっくりと会えなかった分すべて取り戻す。可愛い伴侶を潰したりなどしないよ」 小さく笑ったシュウ殿が俺の腰を持ち上げた。そして再びシュウ殿のモノが俺の中を熱く満たす。 「ん…ぁあっ。はぁっ、はぁっ、んぁああ!」 俺の身体を知り尽くしたシュウ殿の巧みな動きに、すぐに快感に火がつき飲み込まれる。 「甘えてなどと言いながら、私がどれだけイチハが欲しいと思っていたのか、全くわかっていないのだろう」 中の感じやすい浅い部分を力強いモノでグイグイと突かれた。 快感に暴れる身体を抑えつけられ、首筋を甘噛みされる。 「ァああ!ァあっ!シュウどの…おれにあえなくて、さびしかった?はんゥ…おれがなぐさめてあげるから。もう、さびしくないから」 白い光が弾け、脳まで濡れていく…。 「そうか。それは嬉しいよ。イチハのこの顔を見れただけで、かなりなぐさめられた。でも、もっとしっかり、深くじっくり感じてもらおう」 「このかお…?おれは…どんなかおしてる?」 「私を受け止め満たしてくれる、悦楽の表情(かお)だ。きっと今の事は半分ほどしか覚えてないんだろう。けど、それでいい」 「ンンッ!んぁっ…おぼえてる。 ちゃんと。シュウどのは…いつもうれしそうに目をほそめて……おれはだいすきだなぁって思うんだ」 「やはりわかってないな。思い出せ自分がどれだけ淫らに私を求め、高ぶらせているか」 「ちがう…シュウどのが…ぁっ…ああン…またっっイクっ!ぁぁんんんんっ!」 何か言おうとするのだけれど、すぐに思考が快感に押し流される。 「快楽に溺れきった顔をして…まだ欲しいかイチハ」 「んっ…してっ!してっ!あふぅ…シュウどの…おねがい、ナカに出してっ。おれをぐちゃぐちゃにしてっ!」 「イチハ私を甘やかすと言いながら、いやらしいおねだりだな」 意地悪な言葉だけど、シュウ殿の表情はどこまでも優しい。 「んっ…ちがうの…ぁんんっ。おれわ、シュウろののでグチャグチャにならないといけないの。らってね、ひとつになったら、シュウろのはもーさびしくない」 「……そうか。ならば私も思考を手放して、イチハを感じさせてもらう」 「んっ。ぜんぶ、ぜんぶうけとめる。シュウろのわ、おれのかわいーハンリョらから」 中にねじつけるように押し込まれ、パンと弾けるようにアッサリと俺は精を零してしまった。 前でイッてしまって、少しだけ意識がクリアになる。 「イチハ……」 「んっ……!」 力強く腰を律動させながら、むさぼるように口づけられる。 「はぁっ、はぁっ」 快楽に身を委ね始めたシュウ殿の汗に濡れた顔が視界を埋める。俺はそれだけでうっとりとなった。 「シュウ殿、もっともっと俺を欲しがって」 けれど、シュウ殿に強く求められれば、俺の頭がいつまでも正常でいられるはずもない。 「はっ…はひっっ…ンっんぁ…シュウどの…イイ…っ」 後はシュウ殿の気の済むまで揺すられ、翻弄され、頭を飛ばして快楽に身を委ねるだけだ。 ◇ 翌日ザハリドを発ち、風光明媚な景勝地などに立ち寄りながらゆっくりと王都へ帰ることになった。 シュウ殿はほとんど休めていないはずだが、俺とは基礎体力が違う。 ただただ喘がされていただけなのに、俺はけだるく景勝地で馬車を降りて歩くのさえ億劫だった。 けれど、自然の美しさは馬車の中からでも楽しめる。 シュウ殿とこうやって素晴らしい風景を楽しむということ自体が幸せなのだ。 俺はすっかり新婚旅行のような気分になってしまっていた。 馬車の中でもシュウ殿によりかかり、手をつなぐ。 シュウ殿を甘やかすと言っていたのに、いつもの何倍も甘えきっている。 ……いや、いいんだ。 今は俺が甘えることがシュウ殿を甘やかすことになる。 なぜならば、シュウ殿が俺に甘えられることを求めているからだ。 ……ということにしておく。 シュウ殿も楽しそうにしてくれているしな。 道中、様々な話をした。 会えない間、色々話したいことがあったような気がしていたけど、口にしてみれば他愛のない話ばかりだ。 「この先に兄上の親しい友人の別荘があって、一緒に連れて来てもらったことがある」 凍った谷を抜けた時に、ふと思い出したようにシュウ殿が言った。 『連れて来てもらった』ということは、間違いなくアジュラン陛下にだろう。 ライザラン様になら『連れて行かれた』と言うはずだ。 「懐かしい。子供達が騒いで館の壁を激しく汚してしまい兄上に叱られたのだ」 子供達というのはきっとアジュラン陛下の王子のことだろう。 「シュウ殿はアジュラン陛下にとても可愛がられていたそうですね」 陛下の語った幼いシュウ殿のことを思い出し顔が緩む。 「可愛がって……いてくださったとは思うが、陛下は私にはとても厳しかった」 「え…?俺は陛下に、まだ幼いシュウ殿をよく膝に抱いて可愛がっていたと聞いたけど」 「陛下がそんな事をイチハに?」 シュウ殿の眉がぴくりと跳ねた。 「私は幼い頃から非常に不出来で、ライザラン兄上にからかわれて逃げ出したり、甥にあたる王子達が何か騒ぎを起こすたびに陛下…いや、アジュラン兄上に拘束されて、膝の上で反省をさせられていた」 「……え…聞いた話と少し違うけど」 「それは私の名誉のためだろう。幼い頃の話だとはいえ、伴侶であるイチハにそんな情けない話を聞かせるわけにはいかないという、兄上なりの気遣いだ」 「……そう、なのかな」 アジュラン陛下の語り口やジントウイ殿の反応を見る限り、本当に猫っ可愛がりしていたようにしか思えなかったけど。 「アジュラン兄上に身動きも取れないほど強く拘束され、ぐったりするまで反省させられた後、当時まるで私に第二の母のように接してくれていたファリョ様がいつも優しく頭をなで菓子などをくれ慰めてくれていた」 陛下は『照れて、次第に自分から抱きついてくれる』と仰っていたのに、シュウ殿の話だと拘束が辛く力つきてしまっただけのようにしか聞こえない。 「でも、今も陛下はシュウ殿を大変可愛がっていらっしゃると聞いたけど」 「……それは…そんなことまで」 シュウ殿の眉が少し困ったように下がる。 「……私なりに頑張ってはいるが、陛下には私の働きは物足りないのだろう。あえて子供扱いをし、力不足を自覚させようとしてるのだ」 「え、いや、でも、ファリョ王妃はとても微笑ましい光景だとおっしゃってらしたけど」 「それはあの方がとてもお優しいからだ。不出来な私にいつも慰めの言葉をくれる」 「いや、慰めなんかじゃないと思う。アジュラン陛下だってシュウ殿のこと本当に可愛く思っているはずだし」 フッと微笑んで、シュウ殿が俺の頭を撫でた。 「イチハも優しいな。アジュラン兄上が常日頃私に厳しく接していても、心の底では私のことを愛し、成長を願っているということはきちんとわかっているつもりだよ」 いや、きっとアジュラン陛下はストレートにシュウ殿を可愛がってるつもりだ。 でも、全然シュウ殿には通じていない。 「……イチハは少しファリョ様に似ているな」 「え……あ、それ、アジュラン陛下もおっしゃってたいらしいよ。そうファリョ王妃からうかがった」 「そうなのか」 「うん、それからファリョ王妃に恋の話を聞いたんだ」 可愛らしいファリョ王妃の様子を思い出して、また顔が緩む。 「そんなことまでイチハに?随分と気に入ってくださったんだな」 「本当に光栄だって思うよ」 「ファリョ様の初恋はジントウイだそうだな」 「……………………は?」 未知の情報に俺はフリーズした。 「ファリョ様もご存知のようだが、アジュラン兄上の初恋もジントウイだったらしい」 「……………………え?」 「二人とも淡い恋心に過ぎなかったようだが、ジントウイは王都では非常に…まあ、なんというか恋多き男で……それ故に私とともに深淵の森へ引っ込むことを選んだんだ」 「え?え?え?どういう?ジントウイ殿がなぜ?」 「私も詳しくは知らないが、どうやらジントウイに激しく執着する者が数名、本人の与り知らぬところで諍いを始めたらしい。それから逃れるため深淵の森へ居を移す私に自ら志願してついてきたようだ。そうでもなければあのような優秀な男が隠遁暮らしなど周りが許さないだろう」 「え……それはもう、大丈夫なの?」 「もう十年以上前の話だからな。それに恋多き者が私とともに暮らすのだから、隠遁している間も皆好き勝手な噂を立てる。そのことも計算ずくなのだろう」 俺のジントウイ殿の印象がガラリと変わってしまった。 けれど振り返れば、俺に夜這いをするようやんわりとすすめるような言動をしたり、客間に香油を忍ばせたり、ソチラ方面に長けている様子はあった。 「けれど私が伴侶を定めてしまったために、ジントウイのまわりがまた少し賑やかになってきているようだ。本人はもうそんな年ではないと言っているけれど、おかしな事になる前に決まった相手を見つけた方がいいと思うんだが」 ファリョ王妃の心温まる恋の話をするはずだったのに、思いもよらぬ話が次々と出てくる。 「ジントウイ殿は、どのような方が好みなんだろう」 「…さあ、言寄ってくる相手は二十代から七十代まで幅広いようだが……」 聞いた俺が馬鹿だった。 シュウ殿に関係のある事ならともかく、どんなタイプが好みかなんてそんな浮ついた話をシュウ殿とジントウイ殿がするはずない。 けれど、普段そこまで口数が多くないシュウ殿でも、親しい人の事となると思いの外会話が弾む。 これは、王都に着くまでもっと色々な話を聞いてみたい。 でも、その前に………。 「よしよし」 「どうしたイチハ」 シュウ殿の顔をギュッと胸に抱き込んで、頭を撫でる俺を不思議そうに見上げる。 「…もしかして、陛下に子供のようにあしらわれている事を慰めてくれているのか?けれど、そこまで気にしていないから大丈夫だ」 「それだけじゃないよ。いつもありがとうという感謝と、とても頑張っているシュウ殿を癒してあげたいから」 よかった。俺の行動は愛情あってのものだってちゃんとシュウ殿に伝わってる。 「そうか。ならばしばらくイチハに癒してもらおう」 シュウ殿が俺の肩に頭をもたれかけた。 ああ、シュウ殿が自分から俺に甘えてくれるなんて! 王都までの馬車の小旅行は、たまらなく甘く思い出深いものになりそうだ。 アジュラン陛下の助言に感謝をしつつ、俺はシュウ殿の額に愛情たっぷりのキスをした。 《終》

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