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29. 駆け引きはつづく
なんだ、不満か!?と、問い掛ければ、う……ん。と渋りながら、熟考したシファが思わず漏らす。
「以前から思っていたんですけど、リヴェラ様はちゃんと閨教育は受けられました?」
「う、受けている。当然だろ。俺はアズカヴァルの国王だぞ」
なぜ急にこんなことを訊いてくるのだと、リヴェラはうろたえる。
閨教育は王族や貴族にとっては子孫繁栄のために必須のことだ。
夜伽の作法は恥をかかない為のマナーとして教えられている。
ただしリヴェラの場合こういうことは疎いし、学力がおぼつかないので初級者レベルの知識で止まっている。
雄しべと雌しべがどうとかメンデルの法則やなんかその程度のもので、とても性の奥義やテクニックがどうとかのレベルではない。
勉強と名の付くものはすべて苦手で、そもそも説明や講義でじっとしているのがダメで、右から左へと聞き流して、それこそグロウの授業と同様にあまり内容を憶えていない。
自然と眼が泳ぐ。
「考えただけですごく嫉妬してしまいそうですが、もしも女性の姫君が相手なら夜伽はどうされていました?ちゃんとできましたか?」
「……で、できていたよ、多分」
「本当ですかぁ?」
シファは疑わしい視線を送りつつ、自然と手元はリヴェラの胸元に添えられている。
「全然積極的ではないし、自分からって感じもしないし、やる気はあるんでしょうか?」
「そ、それなりに……。やってるつもりだけど。もういいだろ、この話は」
「いや、よくないですね。話し合わないといけませんよ、あなたと」
「……ええっ、話すつもりなんてないっ」
「だいたい、あなたはいつも人任せですよ。進んで何かをするでもなく、私が積極的に動いているからいいようなものの、ご自分はいつも受け身のくせにすぐ人のせいにしたり、いいわけが多い。このままじゃいけませんね」
避けていた問題をこれから嫌という程、詰められる。
「ほら、何か云ってくださいよ」
「……う、わわ。それを云われてもなぁ……」
痛いところをつかれた。何か云い返そうという気持ちは自然と萎んでいってしまう。
まともなことすら何も云えない自分をリヴェラは恥じた。
褥の縁に腰を下ろし、いつの間にかシファは背後から抱き込みながらリヴェラを自分の膝の上に載せていた。背中から伝わる逞しい胸の感触とシファから薫るいい匂いに戸惑う。
「……ちょっと、えっ、ええっっ。やめろ、よ」
「いいじゃないですか。積極的に話をしようじゃありませんか。聞きやすい体勢ではありませんか」
「全然聞きやすくなんかない。離せよ……」
寝台に腰を下ろしたふたり。シファの膝の上にいるリヴェラはもぞもぞと腰を浮かし、距離を置こうとする。それを引き留めようとシファは手を伸ばし元の位置へと戻す。
どうにも落ち着かない。
臀部に何か固いモノが当たっているような気がするのは、気のせいではないはずだ。
「どうするんですか。こんなに初心な反応だと、夜伽は積極的になれませんよね」
こっそりと囁いて、リヴェラの首筋に吐息が掛かる。
ちら、とリヴェラの赤らむ顔を見つめてから、シファは微笑む。
「まぁ抱かれる才能はあるかもしれないけどー」
シファの指先が布越しに胸の先端に触れて、膝に載ったままリヴェラがびくん、と身を震わせる。どうしても躰が反応してしまう。悲しいくらいに。
何だか怪しい流れになってきた。
「もしかして、コウノトリさんが運んできてくれるなんて思ってないですよね?」
「いくら何でもそこまで俺は無知じゃない……」
「あーよかった。それは安心しました」
そのまま衣服に手を滑り込ませて直にキュッと胸を摘まみ上げると、リヴェラは大きく痙攣する。
「……や、あっ、……ンッ」
ゆ、指が……。ぞわぞわする。
シファの手はしなやかだが大きな手だ。ひんやりとして冷たい。
執拗にくりくりと突起を弄ばれて。撥ね退ければならないのだけれど、敏感になりすぎた自分の身体はこうされると忽ち疼いてきてしまう。
「や、やめろ……冗談が、過ぎるぞ」
「私はいつも本気ですけど」
云いながらシファは手を止めない。人差し指で突起を強く弾くとリヴェラが大きく仰け反る。
「……っ、……いい、加減に、しろ……」
口ではいつも虚勢を張りながら、カラダは素直な反応を見せる。
顔が赤らみ、リヴェラは黄金色の眼に涙を溜めながら強がっている。
最高にいい表情だと思う。シファは、すっと眼を細める。
「なんとかなるって楽天的に考えていませんかー。そんなんじゃ、いつまでたっても子供はできませんよ」
「……わかっているよ」
潤んだ眼のまま図星を突かれまくってリヴェラは困り果てる。
シファの手が移動して、今度は腿の内側へと延びる。ソフトタッチで股間に触れそうで触れないギリギリのところを行き来し、焦らされているような感覚にゾクゾクとしてしまう。
結局触ってくれたときには、なぜかホッとしてしまう。
すっかりシファの術中に嵌っている。よくないぞ、よくない流れだ。
焦りを感じつつも、リヴェラはつとめて平静を装おうとしていた。
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