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38. 勝利の女神は微笑む

割れんばかりの歓声が合図だった。試合がはじまった。 女同志、容赦はしない。 棒さばきは勿論のこと手以上に足を使って相手を蹴落とし、時々奇声や雄叫びを発しながら場は盛り上がる。 ギャラリーが湧き、フェイントや反則ギリギリの行為もかわしまくり死闘を繰り広げる。 _____________こいつ、やるな。 お互いにそう思いながら両者一歩も退かない攻防戦だ。 棒同士がバンバンぶち当たるときもあれば、スカされまくることもある。 手綱を握り、上手く馬をコントロールしながら息を弾ませつつ出方を窺って、鋭い視線で隙を狙って攻撃する。 緊張感と切迫感を生む。たった一瞬の油断が命取りになる。一瞬たりとも気を抜けない。 最後まで気力と体力がある方が勝利するのだ。日頃の鍛錬がモノを云う。 睨み合いながら機会を窺う。 駆け引きの応戦が続いて、一瞬の隙をついて布の棒を相手の身体にブチ込む。 見事にアーシャが振るった棒が対戦相手の胴部分に命中する。 勝負あった。 この大会を制したのは四姉妹のひとり、アーシヤだった。 「うわぁぁぁぁ、やったぁぁぁぁぁ_______________________________」 観戦していた四姉妹のうちの三人が歓喜のあまり声を張り上げる。コロッセオ内の ガラガラで寮生以外埋まっていない客席から地雷のような歓声が沸いた。 優勝賞品のケーキはワンホールを姉妹で四等分に分けることにする。 シンプルな生クリームのケーキだと思ったら中に苺がゴロゴロ入っていた。 コロシアムの座席で、半年以上ぶりに口にするケーキの味はそれはそれは絶品だった。 フォークでひとくちひとくち、口に運びながら姉妹たちは喜びを噛み締める。 「う~ん、おいしい」「しあわせ」「楽しかった」「また食べたいね~」 などと云いながら、無事大会は幕を下ろした。 手に汗を握る激闘。興奮したし、久々に面白いものが見れた。 すっかり味をしめたシスター長が教会の支援者による差し入れに貰った菓子をエサに、たびたび騎馬大会や武道大会が開催された。 神学校の学生寮は男女ごとに一寮から四寮まであり、まれに四つの寮の合同レクリエーションが行われることもあったし、遠足やハイキングなどの行事はよくあった。 その延長線上にこのシスター長のご褒美付きの大会が絡んでくることもあった。 神学校の学期末試験も出来栄え次第でオヤツのご褒美を出したこともあった。 すると、現金なもので学生たちの学力がめきめき向上した。 とにかくシスター長は学生が極限状態の下、ご褒美を欲しさに頑張っている姿を見るのが好きだった。 あの興奮がどうしても忘れられない。 もっと見たい。もっと見たい。と早いスパンで大会を行い、やめられなくなっていた。 中毒といっていいくらいだった。 寮には娯楽がないので、どうしても刺激を求めがちだ。 シスター長が禁断症状を起こしてときには葛藤しつつも自分の給料を下ろして自腹を切ってスイーツを用意することもあった。 そのたびにアーシャ、サーシャー、コーシャ、ターシャの四人は戦って勝って手に入れてきた。 ご褒美欲しさに武闘系は勿論のこと、学科試験も一二を争うくらい優秀な成績を収めた。 ただ、料理や裁縫などの家庭科の分野が不得手で、どうにもならなかった。 三年間、なんやかんやで色々あった学園生活は終わる頃。 シスター長も四姉妹を特別な存在として意識していたのだろう。 卒業式には門出を祝い、送り出してくれた。 「ありがとう。退屈な寮生活だったが、あなた方のおかげで楽しいひとときが過ごせた」 最後にどうしてもお礼を云いたかったのだ。 「私が勝手に大会を催してあなた方が先頭に立って盛り上げてくれた。感謝してもしきれない。あなた方はめっぽう強いし、度胸もあって戦い方も凄まじくて見ごたえがあった」 自分の気持ちを伝えて感慨に打ち震えるシスター長に対して四姉妹は 「でも女子は淑やかであることの方がいいのでしょう?女子に強さは無駄なだけだと云われ、司祭様にはよく怒られてしまいましたー」 四姉妹が云ったことに、とんでもない!と、シスター長は握りこぶしを作る。 「強くなることに無駄なことなどない。女子は強ければ強い方がいい。_____________逞しく、生命力に満ち溢れた、あなた方は輝く光のように眩かった。きっと強きをくじき、弱きを助ける存在になる。あなた方が強くなれば、なるほどその分、たくさんの魂が救われることでしょう」 決め台詞をカッコよく決めることができて、内心「決まった!!」とシスター長はガッツポーズをした。 好きで決めた今の聖職の仕事だけれど前職に携わったことは誇りに思っているし、どうしても昔の血が騒いで仕様がないのだ。 そのことでしょっちゅう上の人間から大目玉を食らい苦情がくるのだが、優秀な戦士を育てたという自負があった。できれば本格的に戦士として育てたかった。 この子達ならもしかして……という予感が確信に変わる。 きっと大物になるだろう。(もう大物だろうけど) _____________ああ、できることならこれからも彼女たちの成長ぶりが見たかった。 もっと強くなって戦うところが見たかったし、マニアックなモーニングスター(星球武器)鎖鎌、トンファーとかの武骨でエグイ武器を扱っているところも見たかったと、ひっそりと思ったのだった。

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