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42. サプライズ
それから暫くして、数日後。午后の暖かな日差しの下。
リゼルハイドより大量の贈答品が送られてきた。
使者が数十名もわざわざリゼルハイドから遣わされ、苦心してアズカヴァルに運び込まれた逸品揃いだ。
急なことだが、王宮の中庭には舶来品のそれらの品物が所狭しと並べられていた。
その光景は圧巻であった。敷地内にいっぱいに埋まるくらいの夥しい数の占拠しつつあった。
国王と(いずれ妃になる身である)王妃のリヴェラとシファが立会いのもと、これより品物の検分と説明がなされる。
家具や調度類から、骨董品、美術品、剥製、に至るまで随分と大きな物が並ぶ中。
ただでさえ物で溢れ返っているというのに追加で、従者が三人がかりで丸まった大きな筒状の物を運び込んできた。
彼らが一様に緊張した面持ちで、おそるおそるといったように慎重な手つきで持ち込まれた物はどうやら大きな毛織物の絨毯のようだ。
眼の前でゆっくりと下ろされ、絨毯が拡げられたとき。
リヴェラとシファは、あっと声を上げる。
絨毯の中から出てきたのはシファの妹のアーシャだった。
長い銀色の髪が広がり、下ろされたはずみで薄い紗の衣服の裾がふわっと舞う。
鮮やかな登場シーンだ。まるで天女が地上に舞い降りたかのような場面だった。
いるはずのない人物がここにいることにシファが驚き、眼が限界まで見開かれる。
「ええっつ、なぜここにるんだ……!?」
リゼルハイドの姫が予告なくアズカヴァルの城に現れた。
シファとリヴェラ同様に辺りは騒然となる。
(いや、手紙ではお邪魔すると予告していたけど、こんなに早く……?ええっっ??)
「兄様、久しぶり。どぅ、びっくりした?」
「……!」
絶句して言葉にもならない。
シファと同じ銀色の長い髪。サイドの髪にそれぞれ天珠のような樽型の天珠のようなビーズを付けている。睫毛に縁取られた大きな睛。
わくわくと好奇心に満ちた天真爛漫な表情を浮かべている。
彼女は眼を爛々と輝かせ、こう云う。
「街で流行っているロマンス小説を参考にしてみたの。ヒロインがこっそり王様に逢いに行くためにお城に忍び込んで、絨毯に包まりサプライズで登場するシーンがあるの。あまりにもインパクトがあって、王様はたちまちヒロインにハートを奪われてしまうというものなのよ。上手くいったでしょう?」
「う、うん……びっくりしたよ」
茫然としながらシファが呟いた。
何が何だか今での事態を把握しきれていないというような様子だ。
「で、でも、やっぱり皆には事前に報せた方がいいと思うよ」
あまりにも突然のことだったので心臓に悪い。
今でも信じられない気持ちでいっぱいだ。
不意打ちを狙って驚かせるサプライズ________________アーシャ達の作戦は大成功だ。
「アズカヴァルに行くことは完全にサプライズにするつもりだったけど、楽しみすぎてつい手紙に書いてしまったのよねー。_____________ねぇ。他の三人も隠れているから、探してみてよ」
四姉妹のひとりであるアーシャがいるのだから、サーシャー、コーシャ、ターシャと
妹があと三人もいるのか。当然のことだけど。
云われた通り、シファとリヴェラはたくさんの贈り物の山の中から、この辺りかなと目星をつけて探してみる。まずは調度類の山の中から。
「_________________あっ、ここだろう」
黒檀でできた大きな衝立の後ろに隠れていたサーシャの腕を引き寄せた。
木目が美しいそれには白蝶貝が嵌め込まれていて、螺鈿細工の装飾が施されている。
「ああ、見つかってしまったわ」
「髪と下衣が見えていて、隠れ切れていなかったよ」とシファがにっこりとする。
本当にさっきの娘と同じ顔の娘がいてリヴェラは驚いた。これで二人目だ。
判を押したように、眩いくらいの銀色の髪の美少女が揃う。
つぎは棺のような大きな木箱があった。パカッと開けると、金銀財宝がたくさん詰まっている。手を差し入れると、ひとの身体に触れた。
「あ、見つけた」
手首を引き寄せ起こしてみると、「ぷはっ」と大きく息をつき、身体についた宝石をぱらぱらと落としながら中で仰向けに寝ていたコーシャが現れた。
銀色の長い髪がふわりと広がり、睫毛に縁取られた大きな眼をした少女呟く。
「窒息しそうだったわ」
やっぱりさつきと同じ顔をした娘が出てきた。
これで三人目。
あともうひとりいるはずだ。きょろきょろ辺りを見回し、探してみると数メートル先に陶器でできた大きな花瓶が眼に入った。白磁で、所々に鮮やかな花の模様があしらわれている。
高さは二メートルくらいある。見上げると首が痛くなってくるほどだ。
「すごい、こんなに大きな陶器、見たのは初めてだ」
これを焼いて、割れずにここまで運ぶのは想像以上に大変なことだ。
技術面もさることながら、運搬にも相当気を遣ったことだろう。
さすが商業の国だな、とリヴェラは感心する。
シファは、花瓶の表面をコツンと、指先で叩いてみて確信する。
「ここかな。……出ておいで」
従者が三人がかりで花瓶を横に倒して、中にいるターシャを外に出した。
注意深くゆっくりと外気を吸うように銀色の髪の女の子が這い出してきた。
中はとても窮屈だったようで、酸欠気味で髪も衣服もぐちゃぐちゃに乱れていた。
「えー、なんでわかったのー」
「花瓶にしては口が大きく開いていたから」
「なーんだ、あっさり見つかっちゃったなー」
と、残念そうな顔をしたターシャの銀色の髪をシファが撫でる。
やっぱりさっきの娘と同じ、四人は全員同じ顔をしていた。
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