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43. 想定外の騒ぎ
「それにしても、私たちの隠れている場所がよくわかったわね、兄様」
「まぁ、人ひとり隠れる場所だからね、簡単だよ」
四姉妹全員を探して最後の四人目がこれで見つかり、コンプリートされる。
兄らしいシファの顔と久しぶりの再会に喜ぶシファの妹たち。全員、銀色の長い髪。
五人並ぶと、やっぱり彼らは兄妹なのだなぁと思わせられる。
リヴェラには兄弟がいないので、とにかく大勢いると賑やかなものなのだなぁ、と思う。
「みんな、ご苦労様。長時間こんなところに潜んでいるのはなかなか大変だっただろう」
「うん、すっごい大変だったー」
妹たちを労いながら、シファは頭を撫ぜる。
リヴェラはひっそりと思った。
いい演出だったけど。でも、これって。国王である俺を喜ばせるっていうよりも、兄であるシファを喜ばせたいって意味合いの方が強かったんじゃないのかなー。
● ● ●
四姉妹のサプライズの後で、これから贈答品の説明に移る。
「リゼルハイドは優秀な職人がたくさんいるの。サイ地方の伝統的な技法を取り入れたこの絨毯は三人の職人が半年がかりで仕上げた大作で_____________」
四姉妹長女であるアーシャ自身が登場した際に身を隠していた絨毯を見せながら説明する。鮮やかな青い地に、花や植物の複雑な幾何学模様が織り込まれている。
網目がとにかく細かくて、眼がチカチカするほどだ。
想像してみただけで気が遠くなる作業を延々と繰り返して仕上がった芸術品だ。
ここまで緻密で精巧な技巧を凝らされたものは金や宝石よりも高値で取引されている。
「青はお好きかしら、リヴェラ様?」
「ああ、好きな色だ」
「良かった。______________こうやって撫ぜてみると白っぽくなって、別の角度から見ると濃い青色に見えるの」
「本当だ……」
絨毯を毛並みにそって撫ぜる。毛が長く触り心地が良い。
シファの妹が云っている通りに濃いブルーから薄いブルーに変化した。
ひとつの絨毯で一度にふたつの風合いが味わえるというわけか。
「____________というわけで。まぁ、私たちが隠れるのに使ったけれど、モノはいいから。
これはほんの、お近づきの印です。どうぞお納めください」
リヴェラへと恭しく首を垂れ、両手を拡げ、ずいと差し出す。
可憐で品位ある、姫らしい所作を見せる。
「ここにあるすべての物か……?」
リヴェラが問うと、「ええ、そうです」とアーシャが即答する。
中庭に埋め尽くされる家具や調度類、骨董に美術品。改めて見回すと、とんでもない数の品々で言葉を失う。さすが大国リゼルハイドだ、規模が違う。
「これはお近づきの印で、信頼の証です」
「私たちがリヴェラ様に相応しいと思ったものを選びました。使っていただけると嬉しいです」
アーシャ、サーシャ、ターシャ、コーシャはにこやかに微笑みかける。
「それに、これを王様が使ってもらうといい宣伝にもなるわ」
国王の愛用品だと知れ渡り、評判を呼べば貴族には勿論のこと街の市井の間でも流行ることは間違いない。リゼルハイドの職人に注文が殺到することだろう。
そして、リゼルハイドの貿易業はさらに繁盛することになる。
ちゃっかりしているなー。と、リヴェラは四姉妹に父親譲りかもしれない商売根性の片鱗を見て舌を巻いた。
「それに、まだまだあるのよ。とっておきの贈答品が」
「え、これ以上は……もう」
さすがにもう要らないと両手を突き出し、遠慮するリヴェラだが、彼女たちはとりつく島もないというように平然と云い切る。
「え、無理―」
「だって、もう持ってきた、から」
姉妹たちが云った途端、すさまじい勢いで牛や馬や羊の大群が雪崩れ込んでくる。
にわかにリヴェラをはじめ、王城じゅうの者がぎょっとする。
「ロマンス小説でおける貴族の持参金といえば、コレでしよう?」
中庭を覆い尽くす、自分たちが眼にしているのはすさまじい数の家畜だ。
何頭いるんだろう?百頭……、いや二百頭……?
「まぁ、少ないけど三百頭いるわ」
ドタドタドターと土煙を上げながら家畜たちは縦横無尽に走り回っている。
何が起こっているのか、運動会か?お遊戯会か?
危ないから、侍従たちが他の贈答品は素早く避難させていた。
「豚百匹あげるから、もっと兄様に優しくしてあげてくださいっ」
「はああっ!?」
四姉妹に懇願され、リヴェラはすっとんきょうな声を張り上げる。
そうこうしているうちに家畜の大群が押し寄せてくる。
建物にぶつかると破壊されかねない威力がある。
「いや、できればここにいる家畜全部貰ってくださいっ」
「む、無理だ!!」
すっかりお手上げの状態だ。
あれこれと家畜が暴れ出し、王城の者たちが手が負えないと悲痛な叫びが聞こえてきて、結構な騒ぎが巻き起こっている。
「兄様はあまり供もつけず、こちらに来る際、身軽だって聞いたわ。婚礼用具も持ってこなかったんじゃないかしら」
「貴族の中で嫁ぐ際、持参金が足りなくて離縁されるって噂で聞いたことがあるわ」
「マメに文のやり取りをしていて、兄様の手紙で陛下が素っ気ないだとか求めてくれないだとか散々書かれてあったから」
「満足に用意できなかったからだよねー。きっと持参金が足りなかったからなのよねって思っちゃって」
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