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45. 対面
隣国リゼルハイドからアズカヴァルにやってきて、二か月が経った。
いずれアズカヴァルの王妃となるシファだが、まだリヴェラとは婚約状態。
婚儀を先延ばしにされているのだが微妙な距離感を保ちつつ、ほぼ決定事項だ。
銀色の長い髪、月の精のような麗しい容貌。性別を超えた中性的な容姿、白い法衣を纏い、神秘的な雰囲気も加味されて周囲は息を呑むほど見惚れるくらいの美しさを持つ。
ただ、並ぶとリヴェラよりも十センチは背が高い。
王城の庭園を散策しながら季節的に花見をしようと集まったのだが半分程度散ってしまい、二週間程度でもう新緑が眩しい季節に切り替わっていた。
「近衛騎士のサフとライラだ」
リヴェラがシファを伴い、側近のふたりを紹介した。
傍らでムスリと不機嫌そうにしている黒髪の近衛騎士のライラ。
対照的に柔和で友好的なオレンジ色の髪をしたサフ。
「ふたりとは幼馴染で兄弟のように育ったんだ」
ライラとサフのふたりはシファに向かって恭しく膝を折って礼をとる。
シファのことについて両国の同盟のためにいずれ妃になる存在ということは
説明されずとも分かる。
「謁見の間、以来ですね。リヴェラ様からあなた方の話はよく聞いています」
シファは云うなり、すっと眼を細める。
いつもリヴェラを通じてふたりの話は聞いているとはいえ、思えばシファがふたりの近衛騎士とはほぼ面識がない。これが事実上初対面になる。
「他でもありません、あなた方をここに呼び寄せた理由は____________……」
云いながら花見を終えて向こうから彼女たちが歩いてくる。
きゃはははは。と笑い声がこだまする。
華々しい面々だ。銀色の長い髪が揺れ、四人集まるとさらに絵画のように見える。
「妹のアーシャ、サーシャー、コーシャー、ターシャだ。歳が近いから仲良くしてくれると嬉しいよ」
リヴェラの傍らに控えている、シファから直々に紹介される。
同じ年頃の女の子ということで親しくしてほしいと侍女らにも声を掛けていた。
彼らも妹たちと懇意にしてくれると嬉しいのだが。
「うわぁ、なんて可愛らしい。姫様はじめまして」
リゼルハイドでは月のように可憐だと呼ばれている銀色の髪の姫たちにサフはにこやかに握手を求める。実に友好的な対応だ。
「ああ、はじめましてだね」と、一堂に会する彼らに向けてシファの妹たちは一瞬、きょとんとした顔をしてから、ようやく握手に応じる。
ライラは四姉妹を眼にして雷に打たれたように立ち尽くす。
一目惚れだったのだろう。まるで呆けたように姉妹たちを見つめる。
傍目からもものすごく分かりやすい反応だった。
銀色の長い髪、四人一様に同じ顔。白い紗の上衣と下衣を纏い、ウエストを帯で結んでいる。無邪気で天真爛漫な四姉妹。
さっきまで桃の木に似たアーモンドの木で花見をしていたのだった。
きゃっきゃとはしゃぎ回る彼女らが気になって仕方がない。
好みのタイプで可愛いと思ったはずなのに、彼はつっけんどんに
アーシャ達に対して、「うるせえ、このブス!」と云い放った。
シーンと水を打ったように静まり、気まずい空気が流れた。
耳を疑うような発言だった。
(こんな時代に)そんなことを云われたこともないであろう姉妹たちや、居合わせた者たちは茫然とする。
「ライラ、姫様たちに失礼だよ!!」
云うや否や、サフは暴言を吐いた親友の頭をゲンコツでガン、とやっていた。
あの温和で控えめそうなサフがこんな乱暴なことをするなんて……と周囲はポカンとする。
いってぇ……とライラが殴られた頭に手を遣ると、すかさずサフは「ほら、謝って!」と叱咤する。
「ごめん、ライラは女の子に免役がないだけなんだ!悪い奴ではないから、どうか大目に見てやって下さい!」
がばっと不肖の親友の頭を無理矢理下げさせ、サフが謝罪した。
「恥ずかしいこと云いやがって。何か、俺がまったく女っ気ないみたいじゃねーか」
ライラ声を張り上げ抗議すると、それに対しサフが苛立ち激怒していた。
「殆ど女の子と接したことがないのは本当のことだろー!」
図星を突かれカチンときてしまい、頭にきたライラ。
なんだとーと逆切れされ、迎え撃つべきサフと口論になり、やるかー、なにをーと幼馴染ふたりがやりあってしまい、そこで彼女たちの兄であるシファが唐突に会話に割り込んだ。
「_______________アーッ、好きな女の子につっかかる面倒くさいタイプだ」
大袈裟にライラに指摘する。不自然な笑顔で、眼が笑っていない。
彼としては、溺愛している妹たちに暴言を吐かれて殺意が湧かないわけがない。
「好きな子の気を惹きたくて、つっけんどんな云い方をしたくなる気持ちは分からなくもないけど、大概の女の子ってやさしい云い方をする人の方が好きだよ?」
「…………」
それを笑顔で忠告されるのだ。
身内以外の人間がまともに相手をするのはものすごく怖い。
ライラとサフは硬直したまま言葉も出ない。
頭のイタイ兄に畏 れをなして閉口していただけなのだが、彼らの沈黙を否定と取ったのか、「えっ、違っているか?」「合っているよ」と兄妹は確認し合う。
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