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48. 各々の時間の過ごし方と余談

余談になるのだが、ライラからは気付かなかったけれどもリヴェラが茂みで隠れて見えない部分で、まさか同時に下半身も(まさぐ)られていたとは思いも寄らなかっただろう。 見られているかもしれないけれど、見られていないかもしれない。そんな瀬戸際の状態が背徳的だからこそシファは(たの)しめたのだろう。 リヴェラの名誉は守られた……といってもよかったか。 だが、キスシーンだけでも充分にインパクトがあって、いかがわしい場面だったことは確かだった。 と。もう一方で純粋にこの遊戯を楽しんでいる者たちがいた。 森の茂みの中で鬼らしき人物が通り掛かるところを目撃すると、素早く身を隠す。 「あっ、誰か来た」 大きな木の根元にくり抜かれたように大きな空洞があって、四姉妹のふたりコーシャ、ターシャとサフがサッとこの場所に身を潜める。 (率先して鬼になって走り回っているのは四姉妹の内の上のふたりのアーシャー、サーシャの二人なのだ) 体育座りをして狭い場所に三人で固まって、じっと息を詰めて鬼が通り過ぎるのをじっと待つ。 誰か、(リヴェラたち)……とは違って、女子ふたりと男子ひとりの組み合わせなので密接した空間でも当然、妙な雰囲気にはならない。 三人は数秒の間だけ喋るのを我慢して様子を窺う。シーンと静まり返り、三人が隠れていた場所からその人物が遠ざかり行ってしまったのを確認してから、しばらくしてから気がついた。 「……あの人、鬼じゃなかったよ。隠れる必要なかったんじゃないのかなぁ」 「さっきライラが捕まって鬼になっていて、肩にタスキを掛けてうろついていたのを見たんだけど」 だが今、彼らの眼の前を通り過ぎたのはリヴェラだった。 サフがうっかりしていたというように云った。 「あっ違った。同じ黒髪だからかな。間違えちゃったな。そういえば、リヴェラとライラって似ているよね。顔立ちとか、性格とか……」 「……そうかなー。あの子の方がいい子だと思うよ」 あの子とは、リヴェラのことを指している。 リヴェラは四姉妹とは一歳年下だが、彼女たちの間では「あの子」呼びが定着してしまっている。 「そんなにライラって奴と似ていないと思うよ」 「性根が曲がってないし、真面目だし」と、姉妹はいろいろ理由を並べ立てながら続ける。 「あと、可愛げがある。眼が大きくてかわいい顔をしているし、あの子の方が融通もききそうだしね……」 「そうだねー。兄様が選んだ子だから、いい子に決っているよねー」 サフは黙って姉妹たちの会話を微笑ましく聞いている。 ライラを貶してリヴェラを上げる内容だが、事実その通りなので納得している。 「ねぇ、さっきの家畜の大群がさー。暴れ回っていて城のひとたち皆で捕まえたんだけどさー。丸太でぐるっと周りに柵を作って、牧場を作ってくれるみたいだよ」 さっき大暴れしていた家畜とは、四姉妹がリゼルハイドから持ってきた献上品のことである。そもそも自分たちが元凶なのだ。本来ならこんなところで呑気に隠れ鬼ごっこなんてやらずに、逃げた家畜を連れ戻す手伝いをするのが筋だろうに。 「えー見たい」 眼を輝かせながら姉妹のうちのひとりがそう云うと、もうひとりが くるっと振り向いてサフに問い掛ける。 「ねぇ、あとで見に行こっか?」 「はい、喜んで。是非お供させていただきます」 にっこりとサフは快く応じた。すっかりこのグループは仲良くなっていた。 不思議と姉妹たちとも馴染んでいる。 サフは温和で人当たりのいい性格なので、王城の侍女たちともそうだし、女子の間にいても少しも浮かない人物だった。 リヴェラはシファと離れて別の場処に移動して隠れていたのだが、大したアクシデントもなく逃げ切ることができた。あれからもしかしてまたシファが追いかけてくるのではないかと用心していたが、肩透かしで終わった。 実は足の速さには自信があったのだけど、今回は披露する機会がなかった。 侍女や侍従たちも交えて局地的に盛り上がりつつ、各々で時間を過ごした末、二時間ほどで隠れ鬼ごっこはお開きになった。 「はー、走った。走った」 「久々にいい運動になったねー」 「あー、お腹空いたー」 「私もー」 姉妹たちにはまだまだ余力があり、少しも疲れた素振りもなく元気いっぱいの様子だ。 その一方で疲労困憊している者もいる。 ライラは彼女らにしつこく追いかけられてヒドイ目に遭った。 地面に手をつき四つん這いになって、ぜーぜーはーはー息を吐いて、げっそりと疲れた顔をしてぼやいた。 「あいつら、めっちゃ足速かった。俺、集中攻撃されててずっと狙われてたんだけど……」 「仕方ないよ。ライラは姫様たちを敵に回したんだから」 ライラは訴えるのだが、自業自得だよとサフにキツく云われてしまい、返す言葉がない。 結局、最後まで鬼だったのはライラで、バーベキューをした後に後片づけを手伝う羽目になった。これが彼女たちの課した罰ゲームだった。 「くっそー、何でこんな目に……」 悪態をつきながら、ライラはがっくり肩を落とす。 「いいじゃないか。食べた後、手伝うくらい。悪い事じゃないし、本来なら当然のことだろ?」 「えー、やだよ面倒くさい」 「料理を作って片付けることは当然のことだし、日頃から食べているだけだろ、ライラは」 「……う、そうだけどさ」 「たまには手伝ったっていいと思うけどなー」 横目でじっとりと睨まれながらサフに痛いところを突かれた。 騎士団員は全部身の回りのことをこなして当然の世界だし、場合によっては持ち場以外の仕事を手伝うことも請われる。 「これもいい経験だよ」 元からサフはライラには厳しかった。 温和な顔をしてコイツも食えない奴だな、とライラはひそかに溜息をついた。

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