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49. バーベキューとキャンプの思い出

「みんなーすぐにお昼だよー」 四姉妹が全員に呼び掛ける。後でジンギスカンにしようという約束だった。 鬼ごっこをして動き回ったせいですっかりお腹がペコペコだ。 ずっと楽しみにしていたらしく、率先して動く。 天気がいいから、野外でこれからバーベキューにするつもりだ。 王城の厨房にいる人たちが下拵えした食材が運ばれてきて、セッティングに取り掛かる。 そこへリヴェラがやってくる。 「そうだ。シファから聞いたんだけど、神学校の寮での話が楽しかったから聞かせてほしいんだけど」 以前、シファからきいた彼女たちの武勇伝が忘れられずに本人たちに会ったら直接聞いてみようと楽しみにしていたのだ。 リヴェラに訊かれ、姉妹たちは頭を捻ってエピソードを思い出そうとしている。 「えっと、なんだっけ」 「ホラ……」 「う……ん、急には思い出せないかなー」 「とりあえず肉を焼いて、食べながら思い出すよ」 何ともマイペースな彼女たちらしい答えだった。 即席で煉瓦を積み重ねて土台にしてその上に金網を載せ、網の上に肉を置く。 シファの妹たちは率先して肉を焼く。菜箸で鉄板に置いていくと、横にある金網には串に挿したジャガイモ、タマネギ、トウモロコシ、アスパラガスなどの野菜をズラリと並べる。 ジンギスカンは熱々の鉄鍋で焼くのがいい。タレに付け込んだ小間切れの羊肉を押し付けるとジュージューと肉の焼ける音がして、何とも食欲をそそるいい匂いがしてきた。 「ハイ、焼けたよ、食べて」 そう云って彼女たちは、煙がもくもくと上がる中で、いい頃合いに焼けた肉を菜箸で小皿に取り分けて順番に配ってゆく。気の利く娘たちだ。 「うーん、おいしい」 リヴェラは手ずから焼いてもらった肉を黙々と食べる。 羊の肉ははじめて食べる。もっと固いものを想像していたが、子羊のラム肉は柔らかくてあっさりとして食べやすい。濃い味のタレがかかっていて、クセも臭みもあまり感じられない。 「姫様たちは本当に焼くのが上手ですね。なんか、手伝ってもらって申し訳ないです」 「好きでやっていることだから、気にしないでね」 サフが恐縮しながらも取り分けてもらった肉を受け取り、シファとライラにも焼いた肉が置かれ、彼らも同様に手をつけはじめる。 鉄板を取り囲むように椅子が置かれ、それぞれが席についている。 全員に行き届いてから四姉妹も箸をつけ、ぱくぱくと肉を頬張る。 「久しぶりに食べたけど、おいしいわ」 少し食べてから姉妹のひとりが手を延ばして、遠くに置いて焼けている肉も取ろうと奮闘する。 「あ、それ。私が育てていた肉!」 「なによ育てた肉って、育ててないじゃないの。おかしな言葉遣わないでよ」 焼けるまで放置していた肉を、まるで肉を飼育していたかのように云う今どきの言葉に 憤慨されながら狙っていた肉を横取りされてしまい、「そんなの関係ないよ!」と、ちょっとした姉妹喧嘩がはじまってしまう。 「あっ、こっちの肉がもう焼けていて、いい頃合いなんじゃないかな……」 シファが気を利かせて間に割って入る。無事、機嫌が直ったようだった。 四姉妹が鉄板で焼いたラム肉を口にしながら続々と肉を焼いていき、串に挿した野菜も徐々に焼き上がって食べ頃になっていた。 煙が上がる中で彼女らは口いっぱいに頬張りながら、もう一個次に食べるものを手にしている。食いしん坊の習性だ。箸が止まらないーと云ってはパクパク食べ続ける。 「ジンギスカンはよく食べることはあったのか?」 「そうねー、たまに食べることがあるよー」 リヴェラが問うと四姉妹が言葉を継ぐ。 「狩りに出掛けて仕留めてきたこともあったよねー」 「そうそう、猟犬も連れていったんだよねー」 「それって、猪じゃなかったっけ?」 「えー鹿じゃなかった?」 「羊は牧場で飼われているから狩りの必要がないだろ」 苦々しい顔でライラが会話に割って入る。ライラの皿には焼き過ぎてコゲて固くなった肉や野菜カスばかりが入れられていた。 分かりやすい嫌がらせだな。自業自得だ。 四姉妹にちょっかいを出して嫌われるようなことばかり云っていたからだな……と、サフは判断した。それもそのはずだ。さっきライラがやたら「火が通っていない、生焼けだ」とまくし立てて、「お前は肉焼き警察か」と敬遠されたからだ。 望み通りによく火が通った肉が配られたというわけだ。 乗馬で遠くまで狩猟に出掛けることはよくあったらしい。 リゼルハイドの王城の庭園も緑深い森に占められている。姉妹たちを見ていたら野山を駆けずり回り、自由にのびのびと育ったんだろうなと感じさせる。 「さっき、リヴェラ様に訊かれて思い出したわ。神学校の寮のオリエンテーリングでキャンプに行ったんだけど……」 ________________と、これから四姉妹の神学校にいたときのエピソードが語られる。 寮生は班分けされていて、まずシスター長がテントを早く立てた班には褒美を与えると宣言してみんなで張り切ってテントを組み立てる。 次には、火を早く起こした班は商品として食材を提供すると宣言した。 普段は肉魚を食べてはいけなくて寮では精進料理ばかり食べていたが、この日だけは一日解禁された。 例によって教会の支援者から差し入れてもらった食材をたくさん用意していた。 しかも、時期的にお中元をいっぱい貰ったとかでシスター長の機嫌がすこぶる良かった。 一応、キャンプだからメインでカレーを作るのが決まりになっていて、後はバーベキューをして、花火をする予定だった。 キャンプで頑張ったら景品で貰えることになる。 お中元でよくあるハムやベーコン、植物油、缶詰、ゼリー、ジュースの詰め合わせ。 珍しい食材がいっぱいあった。海産物ならホヤ、サザエ、ナマコ、マテ貝。 食感をよくする為のトビコ、トンブリ、オクラ、カズノコ、タクアン。 高級食材ならウニ、イクラ、アワビ、フォアグラ、キャビア、トリュフ、A5ランクの霜降り肉まで。 しかもデザートまで用意している。いつも献立でよく出るリンゴやバナナから始まって、ケーキはなかったけれどゼリーとかプリンもあった。 とにかく大盤振る舞いで、感謝祭のような豪華さだった。

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