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50. キャンプの心得

四姉妹たちは豪華食材の大半をゲットしてそのすべてをカレーの具材にした。 ホヤ、ナマコ、マテ貝、ウニ、イクラ、アワビ、A5ランクの霜降り肉、 食感をよくする為のトビコ、トンブリ、カズノコ、タクアン。 キャンプで定番の食後のデザートの焼きマシュマロとか焼きパイナップルにするつもりでいた、それらのバーベキュー用の食材も全部ぶち込んで寸胴鍋いっぱいにカレーを作った。 「個々では美味しい食材が……全部混ざってヘンな味にならなかっただろうか?」 「あと食感と、匂いもヒドそうだ」 コリコリした食材のものからネバネバ食材まで。磯臭い食材もたくさん入れて、甘い食材も一緒くたにされて食感が渋滞しておかしくなるし、とんでもないゲテモノが出来上がったはずだ。 「こいつらの味覚ってどうなっているんだろう……」 「カレーってアレだよな。そこまで高級食材を入れる必要あるのかなーって思うんだけど」 「香辛料がキツイから食材の味が消されそうだよな」 性格的に話が合いそうなリヴェラとライラがヒソヒソと云い合っている。 いうなれば、高級食材を全部ドブに捨てたようなものだ。 キャンプという特別なシチュエーションに加えて自分たちで作ったということが余計においしく感じられたようだ。四姉妹はカレーの味を思い出しながら云った。 「四、五杯おかわりしたけど、おいしかったからもっと食べたかったなー」 「四姉妹(あいつら)に付き合って喰った人間にしてみれば溜まったものではなかったろうな」 「競争して食材をゲットしていたって、それってちゃんとキャンプを楽しめていたのかなー?」 「楽しめていると思うよ。普通に」 リヴェラが問えば、シファが会話に割り込んで当然のように答える。 このゲーム感覚が日常だったからだ。それは強くなるだろう。 飢餓状態の人間の食に対する執着をナメてはいけない。 「バーベキューはどうしたんだろう、食材をカレーに全部ぶち込んだということはやらなかったんじゃないのか?」 「……多分、やらなかったんだろうな……」 想像してあまりの大惨事すぎる事態に、もうこれ以上は考えたくないというようにリヴェラもライラも口を噤んだ。 鉄板にタレに付け込んだ羊肉を押し付け、煙を上げながら焼き続ける。 リヴェラ、シファ、ライラ、サフはお腹がいっぱいになって箸が止まってきているが、四姉妹はまだまだ焼いたラム肉を頬張っている。 食べながらつらつらと思い出し、彼女らが他にキャンプで苦労した話をいろいろ挙げてみる。 「テントの中に虫がたくさん入ってきて大変だったー」 「虫よけの線香の火でボヤ騒ぎが起きて大変だったー」 これはすべて姉妹たちのテントで起きた出来事だった。 ランタンを下げていて灯りに集まった虫を魔法でどうにかしようとしたらテントを吹き飛ばし、それなら虫の嫌う線香を焚いて追い出そうとしたら、火力が強すぎてテントが燃えてしまった。と、つくづく騒動に事欠かない連中だった。 何かを達成したら加点式でご褒美が貰えるルールがあったのなら、粗相をしたら減点でペナルティーもあって良かったのに……。 ここにいる全員が話を聞いていてつくづくそう思った。 他にも野生の猪や鹿を仕留めようと地面に穴を掘って、尖った丸太を何本も突き刺して本気の落とし穴を作っていたそうだ。 「結構、何箇所にも作っておいたよ」 なぜこんなことをしたのかというと、「食糧は現地調達が当然っしょ」と思っていたらしく、キャンプで夕食の食材が支給されると知ったときにすっかりこのことを忘れていた。 その上、落とし穴をどこに仕掛けたのかは当人たちもすっかり忘れていて、おかげで翌朝この(トリップ)にかかった者たちが後を絶たなかった。 本人たちもうっかりと罠にかかってしまったが、みんなたくましく生還して奇跡的に(!)かすり傷も負わずに無傷で済んだ。 神学校に通う巫女の卵たちということで日頃の行いも善く、神の加護を受けているからみんな無事だったんじゃないのかという話の結論だったが、真相は聞いているだけでおそろしくなってくるものだった。 みんな魔法を使えるから、落とし穴に落ちるときに(神の御名を叫びながら)瞬時に魔法を使って間一髪助かったというのが本当のところだった。 話を聞いていたライラは思った。さぞかし周囲の人間は寿命が縮まる思いだっただろう。 人生、ハード・モードだろうな。この連中の周りにいたら命が幾つあっても足りないだろう。 「そうだ、これからカレーを作ろうか」 「え_________本当?嬉しい_____________!!」 サフが提案すると、姉妹たちは大喜びする。 「えー、これ以上食うつもりか!?」 すでにたくさん肉も焼いて腹も膨れてきたというのに、こいつらはまだ食べるつもりなのかと、ライラはぎょっとする。 「カレーは別腹だよ」と、聞いたこともない理論を出してたくさん具材を用意してもらい、ジンギスカン焼肉の傍らで姉妹たちは寸胴鍋いっぱいにカレーを作るとさっそく皿に盛り食べ始める。 (今回はニンジン、ジャガイモ、タマネギ、牛肉と普通の具材だった) 「やっぱり、お外で食べるとおいしいねー」 「ねー」と、頷き合いながらおかわりを繰り返し、寸胴鍋いっぱいにあったカレーはみるみるうちに減っていき、あっという間に平らげたのだった。

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