51 / 51

51. 食後とその後

「あー、食べた食べた」 「食後に運動でもしようか?」 「食べてすぐに運動したら横っ腹が痛くなるよ!」 「平気、平気、気にしない、そんなこと」 ジンギスカンとカレーを食べ尽くして、食後に身体を動かそうということになって姉妹たちが話し合う。そこでサフが質問する。 「姫様たちはどんな競技が得意でしたか?」 「馬球(ポロ)は得意だったよ」 馬球は四人対四人で行われる競技である。マレットと呼ばれるスティックで、馬に騎乗して相手チームのゴールに球を入れて競うスポーツだ。 四姉妹は四人とも同じチームのメンバーで相手チームと対戦することになるのだが、どのチームもアーシャ、サーシャー、ターシャ、コーシャの四姉妹の見分けがつかず、皆苦戦することになる。 「ちょうど四対四で人数が揃っているし、あとでやろうか?」 姉妹たちが提案する。対戦相手はシファ、リヴェラ、ライラ、サフの四人の男子メンバーが揃っている。だが、安易にやるわけにもいかない。 「絶対、手元が狂ったって云われて、事故に見せかけて顔面に球をぶつけられる……!」 あの姉妹を相手にすれば、スポーツというよりも格闘技になる可能性もある。 身の危険を察知して、そう危惧したライラが辞退した。 「それに、俺はバーベキューの後片付けがあるから無理だわ」 「あー、こんなときばっかり。罰ゲームを口実にして逃げようとしているだろ」 「いいだろー別に。お前らだけで楽しんでこいよ」 サフに咎められながらライラは逃げるように退散した。 あんなに嫌だと云っていた後片付けを率先してやろうとする。 馬球よりは数段マシだと思ったのだろう。 結局、食後のスポーツをする話は流れてしまって、リヴェラは残念に思いながら姉妹たちが活躍する場面を思い描いた。 馬球は躍動感があるスポーツだ。先導しながら各々が率先して躍起になって戦い、四姉妹が元気いっぱいに駆け回っている光景が安易に想像できる。 逞しくて伸びやかに、自由に。 食後はみんなで牧場へと移動して、のんびりと平和的に家畜たちと戯れたのだった。 その頃、ライラだけがバーベキューの片付けに追われて奮闘していた。 ● ● ● その夜、約束通りにシファはリヴェラの私室に訪れた。 日付はすでに変わり、夜も更けて既に王城の者は寝静まっているであろう深夜の時間帯だった。扉をノックする音に気付いて、リヴェラは寝台からそろりと抜け出し、私室の扉を開ける。 シファはワンピースのような白い丈の長いリネンに大きな抱き枕を抱えて、なぜだか扉の前に佇んでいた。 「夜分遅くに失礼いたします」 シファが声を顰めながら会話する。 「妹たちがなかなか放してくれなくて。私の部屋で枕投げをしたり、カードゲームをしたりして楽しんでいたら、あっという間に時間が経って遅くなってしまいました」 楽しい時間の最中に抜けてきたのだろう。 ああ、お前か……。と呟いてリヴェラは溜息をつく。 すでに寝入っていて、ノックの音で眼が醒めて飛び起きてしまったのだ。 「もう今夜は約束を忘れていたか、もう寝てしまって来ないのだろうと思っていた」 「いやだなぁ、約束は守りますよ。リヴェラ様だって楽しみにされていたでしょう。 期待は裏切りませんよ」 ふふ、とシファは、いつもの嫌な予感のする笑みを口の端に載せる。 ぞっとしながら、リヴェラはそう思うのだった。……こんな義理堅さはいらない。 「楽しみになんてしていない。勝手に思い上がるなよ」 ふてくされるリヴェラのことなど聞き流して、シファは重ねて詫びる。 「とにかく遅くなって申し訳ありませんでした。妹たちが滞在する期間はあまりリヴェラ様のお部屋に訪問する機会もなくなるだろうし、構っていられないだろうと思います」 「……ふんっ。じゃあ、来なくていいだろ」 「拗ねてしまいましたか……?」 すっかり機嫌を損ねたリヴェラにシファはくすりと、笑みを漏らす。 幼い子供に対してするような仕方がないな、というように困ったという表情をしてみせて、リヴェラの顔を覗き込む。 「そんなん、じゃ、ないっ」 リヴェラはむくれてそっぽを向く。 どうも強がっているように見えてしまう。まぁ、そこがかわいいんだけど。 思って、シファは背後からぎゅーっとリヴェラを抱き締める。 一方的にされるがままで、シファの抱えている抱き枕の柔らかい感覚もいっしょに伝わってくる。リヴェラは慌てて押し遣る。 「や、やめろ。妹たちがこの王城にいるのによくこんなことできるよ。たまには自重しろよ」 「あなたと私はいずれ伴侶になるのですから、何も不都合はないはずです。妹たちも承知の上ですよ」 公認済みだと胸を張って云うのだが、納得しきれない。 出会った当初、リヴェラの方から婚儀は解消したいと云ったことはシファにも周囲にも完全に無視されてなかったことにされている。 今からだってイヤだって押し通せば何とかなるはずだと、モヤモヤしながら過ごしている。 リヴェラはどうも煮え切らない態度だ。 そんなことを云ったらまたシファを刺激することになりかねないから黙っているのだが、ヤることはしっかりやってしまっている現状だった。

ともだちにシェアしよう!