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第13話 降参のタイミング

その晩俺は、一人反省会を開いた。 ……流された。 や、確かにめっちゃ気持ち良かった。 正直、一人でオナるのがアホらしくなるくらいには、良かった。 でも、國臣の気持ちに応えられないのに、こんな身体だけの関係って良いんだろうか? いや、良くない。 じゃあ、もう國臣とは縁を切る? 高校三年生で、そんな後味悪くなるような事出来ないなら、こっそり進路先を変更して、別々の大学に通って、自然消滅的な……いや、ないな。 そんな不誠実な事、流石に出来ない。 相手はデメリットしかない中、それでも自分に正直に……正直過ぎだけど、男の俺に告ってきたんだから。 じゃあ、國臣と付き合う? それは、流石に将来が不安になってくる。 まず、家庭を築けない。 子供も出来ないし。 男同士とかだと、結婚とかどうすんの? 入籍出来なきゃ、病院とか葬式とか他人扱いだとテレビでやってた気がする。 家族に紹介……とかも、無理だろう。 孫の顔が見たかった、とか言われて責められるんだろうか。 國臣は好きだけど、女の子と比べてどうか? ……うん、今のところ國臣以上に好きな女の子はいない。 そういう意味では、國臣に軍配が上がる。 國臣のフェラと、女の子のまんこなら……どっちでも良い、かな? 絶対馬鹿にされない分、國臣の方が安心安全だけど。 國臣とのセックスは、俺の尻穴が被害に合う。 それは、嫌……だと思っていたのに、今日はマジで気持ち良くて焦った。 逆に、女の子と付き合ったら尻穴を掘ってくれ、とは絶対言えないだろう。 まんまと國臣の策略にかかった気がする。 これから、國臣以上に好きな女の子は出来るかもしれない。 ……けど、國臣だって俺以上に好きな人が出来る可能性はあるんだ。 大学生になれば、尚更。 纏めると……そうか、将来が不安なんだな、俺は。 國臣が、もし女の子だったら付き合ってたかもしれない。 って事は、俺が國臣を拒否る理由は、國臣が言ってた通り、性別なんだ。 一人反省会の中で、自分の考えを浮き彫りにする事で、少しだけ見えてきたものがある。 今日は結局、國臣と二時間セックスした後、夕飯前までは集中して勉強する事が出来た。 どっちみち、いつかは決めなくてはならないんだ。 ──俺は、覚悟を決めた。 *** 翌日。 他の奴らとは話が聞こえない様に距離を取って、國臣と二人で弁当を広げた。 「話がある」って誘ったから、國臣が微妙に緊張しているのがわかる。 「俺、考えたんだけど」 「……うん」 「結構、真剣に考えたんだけど」 「……うん」 「今は、國臣と付き合う事は出来る、かもしれないけど……将来は、わからない」 「将来?」 「國臣を、俺のパートナーですって親に紹介したりすんの、想像するだけでちょっとキツイ。とは言え、國臣の事内緒にしてずっと独身で心配させるのもどうかと思うし」 「……うん」 「だからさ、こんな……将来の約束出来ない男はやめといた方が、良いと思う。國臣の事より、自分の事ばっかり考える奴だしさ」 俺は、俯いたまま咀嚼する國臣の顔を、そろそろと覗き見する。 國臣は、嬉しそうに笑っていた。 ……え?何故笑顔? 「……希翔……」 「ん?」 「……俺、すげー嬉しい」 「……なんで??」 「……俺の事、考えてくれたって言うのもそうだけど、きちんとずっと一緒にいる事を前提として考えてくれた、って言うのが」 「そりゃ、適当には考えられないだろ」 國臣は、今の俺の生活を構成している一人だ。大学も同じところを狙ってるんだし、他の告ってきた女の子とはやはり違う。 「……あのさ、今までの彼女、そんな将来までとか考えた事ある?」 「……」 あれ? 「ない、かも」 告られて、相手が可愛かったら付き合って。 セックスに対する欲求がなかった俺に、彼女が出来たというのは遊びやイベントに困らないな、という程度の認識であって、将来がどうのとか一度も考えた事ないかもしれない。 セックスしてたら、多少は考えたかもしれないけど。 ある意味、刹那的だ。 その時を楽しく過ごして、合わなかったら別れてた。 「……じゃあさ、将来の事まで考えてくれるのは嬉しいんだけど……俺が嫌いじゃないなら、今、付き合って欲しい……ってお願いしたら聞いてくれる?」 「……今?」 今って何時だ? 今日の事? 「……高校卒業まで」 「……」 なら、良いか? 卒業まで彼女作るつもりもなかったし、國臣と勉強する様になって、成績も上がった。 國臣とのセックスは……なんだかんだで、気持ち良いし。 「高校卒業したら、どうすんの? 友達に戻れるのか?」 「高校卒業したら、また大学卒業までどう? って聞く。大学卒業したら、國臣が結婚を考える年になるまでどう? って聞く。多分、一生聞く」 「約束しても、途中で誰か好きな人が出来るかもよ?」 それは、俺だけじゃなく國臣だって。 「……それは、そうだね。でも、お付き合いってそんなもんだよ? 何処にでもいる普通のカップルだってそう」 「……確かに、けど……」 俺にも國臣にももう、わかってた。 俺が今更グダグダ聞くのは、俺が國臣とパートナーになる気があるのに、踏ん切りが付かないだけだって。 「もうそろそろ、降参して欲しいな」 國臣は、端正な顔を綻ばせて微笑んだ。

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