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からかい 4話

フィサの部屋の前で、 ルヴェーグは軽くノックした。 「フィサ、いるかい?」 扉が開き、 フィサの頬にはまだ赤みが残っていた。 「レ、レーベ……?」 「入るよ。」 手首を取られ、部屋に引き込まれる。 カチャ。 鍵が閉まる。 その小さな音が、静寂の中に落ちた。 「れ、レーベ……?」 ルヴェーグはフィサをベッドへ座らせ、 自分はその横に腰を下ろす。 「……フィサ。 シグマのことを、からかっただろう。」 「えっと……すみません……」 「謝らなくていいさ。」 指先がフィサの頬をなぞる。 逃げられない、優しい距離。 「……あいつのあんな顔、初めて見たよ。」 フィサは肩を縮める。 「ぼ、僕……そんなつもりじゃ……」 「分かってる。」 ルヴェーグの指が、フィサの腰に触れる。 「でもね── 人をからかいすぎる悪い子には、お仕置きが必要だろう?」 「お、お仕置き……っ!?」 フィサの瞳が揺れる。 ルヴェーグは微笑んだ。 どこまでも優しく、どこまでも熱く。 「怖いことなんてしない。……ただね。」 距離がまた、近づく。 「僕だって聖人じゃない。 君がシグマにちょっかいを出しているのを見て…… 嫉妬する気持ちくらいはあるんだよ。」 呼吸が触れ合う。 「れ……レーベ……」 「フィサ。」 甘く低い声が、耳の奥を震わせる。 「……今日は、フィサから僕のところに来てくれないか?」 ぎし──。 ベッドが小さく軋む音だけが響いた。

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