寝室に響くのは濃厚なリップ音。お互い何もかも脱ぎ捨てて、ベッドの上で身を寄せ合い目を伏せて何度も何度も口付けを交わす。それだけでふわふわたした心地良い感覚に包まれる。幸福感とはこういうものなのだろうか。 　口付けは徐々に深まり舌を絡め、舐り合い、お互いの唾液が混ざり合う。時折鼻先を擦り合わせて、またリップ音が響き渡る。 　唇が離れるとお互いを見詰めた後に秋がオレの耳朶を舐り、首筋から胸元へと舌先が徐々に下に降りていった。 「秋……」 「此処好きですよね、智也さん」 「ぁっ、うん……でも、触ってるのが秋だから、好き」 　キスだけでツンと主張していた乳首を秋が舐り、そのまましゃぶり付かれて肩が跳ねる。秋の手も肌を散々撫で回した後逆側を愛撫し始めた。 　秋にこんな事を教えたのは紛れもなくオレなのだが、秋以外に触られたからと言って同じ反応をする訳じゃない。今まで遊びでしかなかったセックスに愛情も心も必要だと感じた事は無い。でも秋と出会い、秋を知って行き、心を通わせた事でもう秋でなければ満足出来ない心と身体になってしまった。 　まだ童貞だった秋を揶揄うだけのつもりが絆されて本気になって、そして初めて秋と遊びじゃないセックスをしたのは鮮明に覚えている。 　心で感じる、と言うと大袈裟かもしれないが秋とのこの行為は間違いなく愛の通った心の交わりでもあった。 　ちゅ、ちゅと何度も秋が乳首に吸い付いて愛おしそうに目を細めるだけでただ触れられているより何倍も快感が増して行く錯覚を起こす。 「んっ……はっ、秋、いいこ」 　それを褒められたと素直に受け取る秋の愛撫は更に続いてもう片方も指で押し潰したり優しく摘まみ上げたりとすっかり巧みな手付きになっていて秋本来の物覚えの良さと器用さが伺えた。 　ゾクゾクと背筋を甘い快感が走り抜けて息が上がる。次第に下半身が疼き出すとそれを知ってか知らずか肌を撫で回していた秋の片手がオレの緩く兆しを見せる性器に触れ、扱き始めた。 「ふぁ、ァ……っ！」 「いつもして貰ってばかりなんで智也さんの、舐めても良いですか」 　乳首の愛撫に満足したらしい秋が下腹部に啄む様なキスをしながらそう上目遣いに訪ねて来る。静かに頷いて見せると亀頭を舌で舐られて腰が震えた。 「は、ッん……ぁ、秋、きもちいっ」 　先走りを啜られ、恐る恐ると言った様子で性器を口に含まれる。そのままいつもオレがする様に裏筋を舐め上げて唇で扱き始めると今まで誰にされてきたフェラより気持ちが良くて腰が揺らぐ。見様見真似でテクもまだ殆どないそれなのに身体が快楽とはっきり認識してすっかり勃起し呼吸が浅くなっていく。 「ァ、っ……も、イくから、秋放して……っ！ンン……ッ！！」 　それを聞いた秋が離す所かより執拗に先端の鈴口を舐り吸い付く。せり上がる睾丸を揉み込まれて呆気なく秋の口の中へと吐精してしまった。それを何の躊躇も無く秋が飲み込む。 「はぁっ……バカ、マズイでしょ」 「智也さんの分泌した物が不味い訳ないですし他の誰かも味わったのかと思うと心底ムカ付きます。あわよくば智也さんの髪の先から足の指まで全身隅々まで味わい尽くしたいので」 「ほんっと激重すぎ、っ」 「けど智也さんの一番奥を味わって良いのは俺だけですよね？俺だけの特権ですよね？」 　枕元に散らばっているのはコンドームの袋数枚とローションのボトル。それを拾い上げて秋が中身を手にたっぷりと絞り出し蓋を閉めまた放った。太腿に口付けをされたかと思えば甘く嚙み付き、そのまま強く皮膚に吸い付く。唇を放す頃にはくっきりとキスマークが刻み込まれていた。 「……秋だけだよ、もうぜんぶ秋だけのもの」 「智也さん……」 　頭を撫でてやると秋が太腿に頬を擦り寄せた。するとゆっくり後ろにローションに塗れた指が入って来る、秋に抱かれる事に慣れて来た身体はすぐにそれを気持ち良くしてくれるものだと認識してしまう様になった。秋が前立腺を容赦無く狙って刺激を与えて来ると吐息が漏れる。 「あァ、ん……っ」 「もうすぐ広がっちゃいそうですね」 「ひゃ……アっ！」 　そう言って二本目をつぷりと挿入する。そりゃ頻繁に秋のバカでかいのを突っ込まれてればそうもなるだろうと思いつつ、中を広げながら的確に浅く抜き差しし前立腺を擦られて口から出るのは言葉にならない声だった。その後すぐに三本目も追加されてくぱりと中を広げられる。 「もう欲しいですか？智也さん」 「秋ので、いっぱいにして……めちゃくちゃにしていいからっ」 　指を引き抜かれると奥が疼いて早く欲しいと全身が震える。秋が反り立っている性器にコンドームを被せて穴に押し付け力を籠めると抵抗無くそれを受け入れていった。 「――あ、あッッ！」 　ローションで慣らされた肉の壁を搔い潜り、結腸弁を叩くとそのまま一気にぐぽりと押し込まれて脳髄が焼き切れそうな程の衝撃と快楽が駆け巡る。その衝撃で達したのか自分の腹部に精液が散っていた。 「気持ち良さそうで良かったで、すっ」 「はぁ、っ、おく、いっぱい突いて、秋ぃ……！」 「良過ぎて気絶しないで下さいね」 　煽ればすぐに秋に火が灯り激しいピストンが開始される。そうなればもう後は満たされるまで二人でイき狂うだけだ。 　快楽に悶える度に秋が整えたシーツに皺を描く。秋に求められれば求められる程心地良さに包まれていった。