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第3話 邂逅
数メートル先に、人がいた。
木で作られた縁台に、三人の男が腰をかけている。
左端の男は、遠目にもわかるほどの美貌をしていた。
整った顔立ちに、鋭さを宿した切れ長の瞳。
モデルと見紛うほど完成された姿でありながら、
大人の魅力と色気を纏ったその姿は、息を呑むほどに美しい。
真ん中にいる男は、
知的で穏やかな雰囲気をまとった青年だった。
物腰は柔らかく、落ち着いた空気を纏っている。
どちらも綺麗な顔立ちをしているせいか、
ただ座っているだけなのに、なぜか目を奪われてしまう。
春より数歳上だろうか。
長身で、足の長い――
二十代後半らしき、大人の男性。
(僕も、あと数年したら、あんなふうになれるかな……)
思わず視線を、自分の体へと落とす。
幼いころから
「お人形さんみたい」
と言われ続けてきた、小柄で華奢な色白の体。
幼さの残る顔立ちと、大きな瞳のせいで、
何度、女の子と間違われたかわからない。
(……不公平だ)
心の中で不満を呟き、再び視線を戻すと――
春は、奇妙な違和感に眉をひそめた。
真ん中の青年の瞳が、
尋常ではないほど、深い悲しみに沈んでいる。
春には、昔から人の感情を読む癖があった。
空気や、小さな仕草の変化で、
その人の“ほんの一部”が、わかってしまう。
当たることもあれば、外れることもある。
それでも――
彼は、確かに深く悲しんでいる。
そして、もう一人。
右端に座る、背の低い、儚げな雰囲気の少年。
可愛らしい顔立ちとは裏腹に、
その表情は苦しげに歪み、
真ん中の青年に、必死に何かを訴えている。
今にも泣き出しそうな、
壊れてしまいそうな瞳で。
――いや、
何かがおかしい。
そう思った瞬間、
春の全身に、悪寒が駆け抜けた。
理由はわからない。
ただ、本能が警告している。
今すぐ、この場を立ち去れ――と。
無意識に一歩、後ずさった、その刹那。
目が――
合ってしまった。
その少年と。
見られてはいけないものに、
見返されたような気がした。
少年の姿が、
視覚ではなく
脳に直接飛び込んでくる。
「っ……!」
異常な感覚に、吐きそうになるのを必死でこらえ、
少年を、
脳ではなく、視覚で認識しようと凝視した。
(……透けてる)
少年の身体を通して、
その向こう側の景色が、はっきりと視界に入る。
体に沸き起こる不快な感覚に、
歯を食いしばった、そのとき。
左端の男が、はっと顔を上げた。
その瞳が、春を捉える。
目を、そらしたかった。
一刻も早く、この場から立ち去りたかった。
けれど――
男は、驚愕に目を見開き、
次の瞬間。
その瞳が、憎悪に染まる。
背筋が凍るほどの敵意を向けられ、
全身が、強張った。
(……なんで……?)
なぜ、そんな感情を向けられるのか。
春には、到底、理解できなかった。
「どうしたの?」
真ん中の青年が、友人の異変に気づき、
ゆっくりと顔を上げる。
その視線が、左端の男から、春へと移る――
その瞬間。
春は、踵を返し、
全力で、駆け出していた。
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