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キミなしでは、もう生きられない・第1話-4
「あっ……んっ、や、やめろよ……耳元で喋るな」
「可愛い声出ちゃってますね、このまま喋り続けたらどうなるか試してみますね」
にやりと片方の口角をあげて意地悪く笑う半藤の態度に耳の先まで恥ずかしさが込み上げる。
「そういえば阿方さん、むかしから同性が好きでしたよね」
「ど、どうしてそれを?」
誰にも言っていない秘密を半藤は知っているような口ぶりだ。
蒼真は高校三年の春、同性である野球部の後輩に恋のようなものをした。その内に秘めていた想いをどうして半藤が知っているのだろうか。
「だってボク、阿方さんが大好きな松崎亮之 と高校三年の夏、戦った人間ですよ?」
二年後輩で、蒼真が卒業したのち絶対的エースとして注目された松崎亮之が最後に戦った相手──それが半藤らしい。
「西東京代表のエースで、プロ指名されたのにそれを蹴って大学進学した半藤航希か!」
「あぁ、やっと思い出してくれましたね。よくできました、阿方さん」
GoodBoy とコマンドを使われて褒められた蒼真は顔がぶわりと熱くなる。もっともっと褒められたくて、乞うように半藤の瞳を見つめてしまう。
「そんなに欲しそうな顔して……本当に放っておけない人だ」
半藤はグッと唇を引いてなにかを我慢しているような表情で間を置く。
「ねぇ、阿方さんはSubだって分かってるんですよね? プロなら、ちゃんとパートナー作らないとダメですよ。サウナで倒れたときに、阿方さんの持ち物をここへいっしょに持って来たんですが、これ、目に入っちゃって……。ずいぶん強い抑制剤を飲んでるじゃないですか」
目の前に差し出されたのは定期的に通っている医者から処方された強力すぎる抑制剤だった。
「大きなお世話だよ。仕方ないんだ。いくら薬を飲んでも、体が辛いんだから」
「強がらないで」と半藤は蒼真の髪にキスを落とす。
「えっ、い、いま、キスした?」
「こんな真っ裸でボクの前に無防備な姿で寝そべっているんだから、キスのひとつくらいされても文句言えませんよ?」
ふわふわと半藤から発せられているDomの香りを受け取り、もっと命令が欲しいと体が熱くなる。すこしでもクールダウンさせたくて目を閉じてみたが余計に聴力が研ぎ澄まされて、半藤の息づかいまで聞き取ってしまった。
「んっ……。耳元に口を寄せないでくれ」
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