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キミなしでは、もう生きられない・第2話-2
「先輩ってSubですよね?」
「……誰にも言ってないのに、どうして分かったんだ?」
「すぐに分かりましたよ。実は俺もSubなんで何かあれば先輩に相談できるなって」
「同じ性だと分かるもんなのか? 俺が鈍いだけか……。まぁケアはしてやれないけど、心配ごとがあれば何でも言えよ」
蒼真が高校三年生になったころ野球部へ入部してきた亮之は蒼真だけに第二性について打ち明けてくれたことをいまでも忘れたことはない。
その頃は日常生活に支障がなかったため、担任と監督以外には公表していなかった。だから入って来たばかりの新入部員に見抜かれ、戸惑ったことをよく覚えている。
「ねぇ、蒼真さん、Domに支配されるってどんな感じなんすかねー? もっともっと活躍したら素敵なパートナーに見初められたりしないかな」
亮之は世間にSubだと公表していた。いつか現れる白馬の王子様を待つかのように新人のころはよく夢みたいな話を練習の合間にしていた。
「パートナー、欲しいのか?」
「そりゃそうですよ。いまは抑えられてますが湧いて尽きない欲求に犯されて、いつ体に異変がでるか分からないんですから。それにおれは世界の舞台で投げることを目指してます。そのためにはパートナーが必要なんです。プレイを積み重ねて信頼し合って、その人だけから愛されたらどんなに満たされるんだろうって。そう思いません?」
「そうだなぁ……」と蒼真は亮之の欲望に触れた気がして言葉に詰まった。ずっと高校時代から気にかけてきた後輩で、同じSub性同士、語り合うこともたくさんあった。それでも蒼真はパートナーの必要性を感じていなかったし、亮之が隣にいてくれるだけで満たされているつもりだった。
しかしその話をした夜、蒼真は亮之が誰かとプレイしている夢を見てしまう。亮之が誰かに従っている姿は蒼真の第二の性に対する欲望を開放させた。
恋心なのか、Subの欲に忠実な亮之へ憧れなのか。
亮之が手足を拘束されて、恍惚の表情で達してる姿は自分と同期してしまう。
それからずっと蒼真は亮之がパートナーと抱き合う場面で欲望を放つという背徳感に溺れた。罪悪感しか残らない行為。こんなことをしているくらいなら蒼真自身もはやくパートナーを見つけたほうがいいと思い始めた矢先に、古馬弥登 を片山トレーナーから紹介されたのだ。
ピッチャーとしてのネイルケアが名目だったが、片山トレーナーと大学のゼミが一緒だったという弥登はDomでSubのケアをすることもできるという。
「ふたり一緒に施術できますから」
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