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キミなしでは、もう生きられない・第2話-4
「今日は早いな、蒼真」
着替えて練習場に出ると先に準備をしていた片山トレーナーに声を掛けられた。
「それに顔色がめちゃくちゃいいぞ。あ、もしかして良いパートナーが見つかったのか?」
片山トレーナーは第二の性を切り替えられるSwitchだ。球団に所属するDomやSubのメンタルやフィジカルをケアする役目を請け負っている。
「いや、まさか。パートナーではないけど……」
「けど? でも蒼真のケアができる相手がいるってことだな?」
片山トレーナーにサウナ施設で倒れて、そのスタッフにケアしてもらったことを正直に言ったほうがいいのか迷って首を傾げる程度に留める。
「なんだよ、その反応は。昨日は休暇だったからサウナ行ったんだろ? あそこはケアもできるスタッフが常駐してるから、辛かったら頼ったほうがいいぞ」
「……はい、実は助けてもらっちゃって」
「助けてもらった、ってどういうことだ? もしかして倒れたのか? どこも怪我ないよな……」
隠してもいつかはバレそうな気がして正直に話すと片山トレーナーは心配そうな表情で腕や脚に触れる。
「すみません、怪我はないんで。気が付いたら熱波師の方に助けられていたんで大事には至らず……」
「その人にケアしてもらえたってことか」
蒼真は気まずそうに頷く。プロの選手として自分の体をコントロールできないことを知られてしまい、怒られるのではと内心ヒヤリとする。
しかし予想とは裏腹に片山トレーナーはふわっと息を吐いて「なにごともなくてホッとしたよ」と言った。
「蒼真、口が酸っぱくなるほどいうけど、倒れるほど辛いならパートナーを見つけたほうがパフォーマンスも上がるし、蒼真の野球センスを考えたら、このままの状態はもったいないと思うぞ」
片山トレーナーに肩を叩かれて、まだ自分は期待されていることに胸が温かくなる。
「ありがとうございます。気をつけます」
「すこしでも不調があれば、言ってくれよな。俺も気にかけているつもりだけど目が行き届かないときもあるから」
そう言って片山トレーナーは用具の準備の続きに取り掛かった。
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