19 / 40
キミなしでは、もう生きられない・第3話-1
玄関を入るとホワイトを基調にした壁紙に木目調で統一された家具が並ぶリビングが見えた。単身向けとはいえ、どうやら1LDKの物件らしい。東京を代表する下町のシンボルタワーが目の前に建つ物件だから家賃はそこそこ値が張るだろう。
「おじゃまします……」
おずおずと蒼真は玄関でスニーカーを脱ぎ、半藤に続いて中へ入る。
「そうだ、阿方さん、お腹空いてませんか?」
どうぞ座ってください、とリビングのソファーを案内された蒼真は「すこし……減ってるかも」と告げた。マウンドに上がる前よりも緊張していて、手の震えが止まらない。目の前にぶら下がった欲望に対して、どう振舞うべきなのか分からずにいた。
いつプレイが始まるのだろうか。
そもそもプレイで本能的欲求を満たさなければ身体に不調をきたす、こんな体はほんとうに厄介だ。薬だけで抑えられないのが辛い。それに半藤の部屋にまで来てしまって、これから何をされるのか不安すらある──。
「あれ、どうしました? 浮かない顔をしてますが……」
「あ、いや……、大丈夫」
「もしかして、緊張してます?」
ずばり言い当てられた蒼真は察して欲しいと、じっと目で訴えるように半藤を見つめた。プレイの内容が気になっていることを聞くに聞けないからだ。
「そんな固くならないで。いきなり激しいことしませんから」と半藤は蒼真の隣に腰を下ろして、緊張で震えている手を優しく包み込んでくれた。
「ただ……そうは思っているんですが、ボクの部屋に阿方さんが居るっていう状況だけで、じつは興奮しちゃってて。いちおうボクも抑制剤を飲んでいるんですが……万が一、暴走してしまったらマズいので、そのときは阿方さんがボクにストップをかけてください」
「ストップ? あぁ……セーフワードってやつか」
「正解です。その言葉は阿方さんが決めてくださいね」
ともだちにシェアしよう!

