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キミなしでは、もう生きられない・第3話-3
半藤は片腕を蒼真の腰に回し、抱き寄せる。急に距離が縮まって半藤の透き通るようなクールな瞳がすぐ近くにあった。
亮之への恋みたいな想いはもつれた迷路ようで明確な答えが出なかった。しかし、いま近くにいてくれる半藤とは最短距離でのゴールが見えている。まだ好きかどうかは分からないけれど、蒼真が生きていく上で頼れる存在であることには間違いない。
「ぱ、パートナーになったら……な」と吸い込まれるような半藤の瞳を恐る恐る見つめる。
「ねぇ、阿方さん。さっきパートナーと恋人の違いが分からない、って言ってましたけど、簡単なことですよ。パートナーになるってことはお互いに依存し合って生きてゆくってことなんです。恋人よりも家族よりもとっても深い絆で結ばれた関係ですから」
半藤は蒼真の顎先を掴んで目を逸らせないように固定した。
「い、依存?」
半藤なしでは生きられない自分になるのが怖い気もする。でもそれがDomやSubに生まれた運命なのだ。前向きに捉えれば、ぴったりと性的趣向に合ったパートナーと出会えれば、恋人や夫婦でたびたび問題になる浮気なんていうことと心配無用というわけだ。
「そう、阿方さんはボクに依存して、ボクがいないと生きられないし、逆にボクは阿方さんがいなければ生きてゆけない体になるってことですね。でもボクたちはそれが本能に組み込まれているから逃れることはできない。それにボクなんかは最初から阿方さんを好きになっていたから、パートナーになれたら最高の人生を送れることが確約されるんです」
「俺とパートナーになるだけで、最高の人生なのか?」
「そのとおりです。阿方さんにもそうであって欲しいけれど……それはこれからのボクの腕しだいかな」
にやりと口角を上げた半藤はソファーから立ち上がり、寝室のドアを開けてからそのまま座っている蒼真と目を合わせた。
「Come(おいで)」
ぐらりと目の前が揺れる。ワインを飲み過ぎたかと思ったが、半藤にコマンドを使われたせいだとすぐに気づいた。そのときにはもう蒼真は体が勝手に半藤の寝室へ向かって歩き出していた。
「あぁ、来てくれた。よくできましたね、阿方さん」
ドアの前で待っていた半藤に抱き締められて、頭を撫でられる。褒められたことで蒼真の体はほんわかと温まり、もっと褒められたくて半藤の顔を見上げた。そこにはクールのなかにも優しげな目元の半藤はいなかった。獲物を定めた鋭い眼光で蒼真は見つめられている。
「そんな欲しがる顔をされたら……薬なんて飲んでも効かないよ」と半藤は溜息をつく。
「ボクの言うことをしっかり守れる良い子には、いっぱいご褒美あげますからね」
「うん……分かった」と半藤の胸のなかで溶かされた脳のまま返事をする。
「あぁ、もう。とっても素直な阿方さんにはもっと命令しちゃおうかな」
寝室のドアを閉めて、半藤は蒼真の耳元で「服を脱げます?」と囁いた。
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