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キミなしでは、もう生きられない・第4話-5
スマホを取り出して、柱の陰で電話する半藤を蒼真は見守った。あまりにもスマートな振る舞いにモテる男とはこういうことかと妙に納得してしまう。
半藤がしばらく話し込んでいたので、席が空いてなかったのか不安になったが蒼真のほうを向き直り、指でOKのサインを作ったのを見てホッとした。
「席、確保できました。では行きましょうか」
エレベーターに乗り込み、ホテル棟の上階にある焼き肉店へ向かう。ふたりで食事するのも初めてで新鮮だ。
ちらりと半藤の横顔を盗み見る。そういや甲子園で亮之と決勝で投げ合うときにベビーフェイスな亮之に対して半藤はクールな知的系エースって言われていたことを思い出した。いまもそれは健在で、ふつうに考えたら女性陣が放っておかないくらい整った顔立ちだ。外を見下ろせるガラス窓に映った半藤と自分の姿がカップルみたいで気づかれないように半歩だけ寄り添う。
この人が恋人になって、パートナーにもなってくれる。
カラーを贈ってくれる相手は彼なのだ。
自分のためにサッと行動してくれる姿に蒼真は上昇するエレベーターに比例して、心の高鳴りを抑えることができなかった。
「さあ、つきました」
エレベーターのドアが開き、ホテル内の焼肉店へ向かう。
「予約した半藤です」
「お待ちしておりました。個室へご案内いたします」
通されたテーブルは窓側の完全個室で外には東京湾の眺めの良い風景というおまけつきだ。
「焼肉の個室はよく行くけど、外が見える店は初めてだよ」
「それは良かったです。さっき電話したらちょうど窓際の席が空いてるって言ってたので、すぐに押さえました」
有能なDomだからなのか、行動も早く的確だ。蒼真は感心しながら座り、おしぼりで手を拭きながらメニューを探す。
「これ、どうぞ。タブレットから注文できるみたいです。まずなに飲みます? ボクは車で来てるのでノンアルコールですけど。阿方さんは気にせず飲んでください」
注文用のタブレットを蒼真のほうへ向けて微笑む半藤に完璧な優しさを感じて胸の奥がキュンとしたのが分かる。そんな音は漫画のなかだけではないんだと蒼真は止まらないときめきにそわそわとタブレットを受け取った。
「俺もノンアルコールで。俺だけ飲んでも面白くないしな」
「そういうとこ、好きですよ。じゃあ家に帰ったらゆっくり飲み直しましょうね」
お互いにノンアルコールのシャンパンで雰囲気だけ楽しむことにして、ハラミ、タン、カルビやホルモンの盛り合わせを注文した。シャンパンで乾杯したあと、肉が運ばれてくると半藤は「阿方さん、タンから焼きますね」とさりげなく蒼真の食べたいと思っていた肉を次々と焼いてくれる。
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