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キミなしでは、もう生きられない・第4話-8
「肉、こげちゃいましたね。残りの肉を焼いておくんで、食べごろになったら阿方さんが食べてください。ボクはちょっとお手洗いに」
半藤は握っていた手を離し、席を立つ。キスされて告白までされたのに、なにも言えなかったことに蒼真は焦った。
ひとり残された個室は落ち着かない。早く半藤が帰ってこないか不安になる。ドアの向こうで足音がするたびに半藤が戻ってきたのかと期待している自分がいた。
「戻りました」
たった数分いなかっただけなのに、半藤の姿が戻ると安心して「よかった……」と思わず零してしまう。
「もしかしてボクがいなくて淋しかったんですか?」
俯きながら蒼真は頷く。
「キスしたからかな。お酒飲んでないのに、すこし目がとろんとしてますしね。阿方さんはキスされるとSubが全開になっちゃうなぁ」
たしかにキスされた箇所が甘くて疼く。照れてしまって半藤の顔をまともに見れない蒼真は指で唇を触った。
「失礼します」
ドアの向こうで店員の声がして蒼真はびくりと指を唇から離す。注文した品はすべてそろっているはずだ。
「デザートをお持ちしました」
ドアが開き、店員が微笑みを浮かべながら白い平皿に盛りつけられたティラミスを運んできた。女子会でなら大歓喜の声が上がりそうなSNS映えする見た目だ。
「……半藤が頼んだのか?」
ちらりと半藤の顔を見ると店員と同じように微笑を浮かべて「お皿の文字、読んでください」と告げた。
「……永遠のパートナー記念日」
店員は拍手をしながら去った。ふたたびふたりきりになった空間に蒼真の心臓の音が響き渡るくらいうるさく鳴る。
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