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キミなしでは、もう生きられない・第4話-9
「阿方さん、ボクの恋人兼パートナーになってください」
目の前に差し出されたのは小箱だ。蓋を半藤が開けると中にはさきほどジュエリー店で試着したプラチナリングが光っている。
「えっ、これって、さっきの!」
「左手を出して」
命令のように聞こえた蒼真は静かに半藤へ左手を差し出した。ゆっくりとリングが薬指にはめられてゆく。
窓から差し込む午後の日差しに照らされたリングが眩しい。
蒼真は半藤のものになったことに内側から震え、目頭が熱くなる。
「ありがとう、半藤。こんな俺でよければ、よろしくお願いし……ます」
言葉を言い切る前に込み上げた涙が一筋、頬に伝う。
「泣かないでください……」
半藤の長い指が伸びて、涙を拭ってくれた。
「淋しい思い、ぜったいにさせませんから」
亮之がアメリカに旅立ったときの絶望感からようやく救われる。
ひとりになってしまった。亮之だけSubとしての幸せを掴み取った──。
嫉妬のような感情が体じゅうを支配して、Subの欲求が満たされずに薬漬けの日々だった。きっと今日からはそれからも解放される。
なにより大切なたったひとりのパートナーが見つかったことに蒼真は悦びで溢れた。
「浮気したら許さないからな……!」
泣き声で言うセリフではないけれど、いちどは言ってみたかった。
「それはボクからも言いますよ。ボク以外のDomの言うことをきいたら、どうなるかわかりませんから。覚悟してくださいね?」
「俺にとってのDomは半藤だけだ」と蒼真は口を尖らせて言う。すると半藤はぴくりと肩を震わせる。
「そういうことをサラッというんだから……。食べ終わったら、もう家に帰りましょう。なんだかいますぐ抱きたくなりました」と半藤はテーブルの下で足の指を蒼真の脛に滑らせた。
「や、やめろって」
それだけで蒼真の体は熱くなりそうで足をずらす。半藤は不敵に口角を上げて「さぁ続き、食べましょう」と箸を持った。
焼けた肉をほうばり、ティラミスはふたりで半分ずつ分けて食べた。甘さとビターなコーヒーのような風味がこれから抱き合う前の期待を助長させて、ずっと胸が苦しくて仕方なかった。
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