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キミのすべてを、受け止めたい・第1話-4
「それからは誰とも付き合ってないのか?」
「そうっすね。いまは恋人もパートナーもいらないかなって。それよりレギュラー獲って一軍で活躍したいから集中したいというか。さらに言えば、いまは那須さんの球を誰よりも早くオレのミットで受けたい気持ちが高まってます!」
蒼真も新人のころはそんな気持ちだったかもしれないと「やる気が漲ってるな」と叶野に向かって微笑んだ。
「恋人はさておき、パートナーもいらないって言い切ってるけど、その……Subとしての症状はまったく出ないのか?」
蒼真も亮之も精神的に追い込まれるととつぜんSub特有の不調が体に現われた。医者に通い、薬に頼り、一時的に解消しても、また具合が悪くなる。そのたびに強い薬に変えるしか手立てがなくて、いまに至っている。
「……そりゃ、表立っては言わないですけど、もちろん辛い日もあります。ただ、病院に行くほどではないので。どうにかひとりで耐えてますけどね」
いつも元気な叶野でもやはりSub性が邪魔をするときがあるようだ。トレードマークの笑顔に翳りを見せられた蒼真は小さく溜息をついた。
「たぶんパートナーがいたほうがいいんだと思う。潤みたいに将来有望なヤツは」
「つまり蒼真さんは、その、いいひと、ができたから、オレにもパートナーを勧めてくれるんですよね?」
叶野の眼光は鋭く真剣だった。蒼真はその瞳に圧倒されながらも頷く。
「でも……さっきの蒼真さん、スマホの画面見た途端、どうして不安そうな顔してたんです? パートナーなら蒼真さんを困らせるようなことしないですよね」
核心部分をじわりと責め立てる言葉を投げかけられて、蒼真は喉を鳴らした。半藤の存在が重荷になることなんて考えたくなかった。
「こ、困ってなんかないよ……でも、相手の気持ちが分からないんだ。恥ずかしい話だけど……俺、誰かと付き合ったことなかったから」
「気持ちなんて、完璧に分かる人なんていないんじゃないですか?」
運ばれてきた麻婆豆腐を取り皿に分ける叶野に冷静に返された。
「オレも蒼真さんもSubだから、つい、人の顔色を伺って、言うことをきかないと、っていう思考になりますけど、相手が望んでいることなんて分かるわけないんです。できることはひとつ、相手にしてあげたいことを考えること。小さな変化にも気づけるようにアンテナ張っておくことです」
分かっていても思考がまとまらない蒼真と違って叶野はしっかりと分析済のようだ。
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